虚数(i)入門:定義・性質・複素数と工学・物理への応用解説

虚数単位 i は、実数では表せない数を扱うために導入された記号で、次のように定義されます:i 2 = -1 {\displaystyle i^{2}=-1{\displaystyle i^{2}=-1}}。この定義により、例えば √(-1) を「i」と表すことができます。実数の範囲では、どの実数を自分自身で掛けても負の数にはならないため(例えば 3×3 = 9、(-3)×(-3) = 9)、負の数の平方根を扱うには新しい種類の数が必要でした。そのために導入されたのが i です。

虚数の直感的イメージ(平面上の回転)

虚数は「向き(方向)の変化」を表すと考えると分かりやすくなります。実数は数直線上の位置を表しますが、i を導入すると数を2次元平面に配置できます。実軸(x軸)が実数、虚軸(y軸)が虚数を表します。例えば「1 + i」は「実軸に1、虚軸に1」を表す点です。

掛け算の観点では、i を掛けることは平面上で90度回転する操作に相当します。つまり、ある数に i を掛けると、そのベクトルが90度回転します。したがって i × i = i² = -1 は、90度回転を2回行うと180度回転(すなわち符号反転)になることを意味します。

基本的な演算と性質

  • 加法: 実部と虚部ごとに足し合わせます。例: (2 + 3i) + (1 - 2i) = 3 + i。
  • 減法: 同様に実部と虚部を引きます。例: (5 + i) - (2 + 4i) = 3 - 3i。
  • 乗法: 通常の分配法則で計算し、i² を -1 に置き換えます。例: (1 + i)(1 - i) = 1 - i² = 1 - (-1) = 2。
  • べき乗の周期性: i の冪は周期4で、i⁰ = 1、i¹ = i、i² = -1、i³ = -i、i⁴ = 1、… となります。
  • 複素共役: 複素数 z = a + bi に対し共役 z̄ = a − bi。掛け合わせると |z|² = z z̄ = a² + b²(大きさの二乗)になります。これを使うと除算が容易になります。
  • 除算: (a + bi) / (c + di) は分母に共役 (c − di) を掛けて実数にし、計算します。

複素数と極形式(極座標表示)

虚数単体ではなく、実数と虚数の組 (a + bi) を 複素数 と呼びます。複素数は直交座標(a, b)で表すことも、極形式 r e^{iθ}(r は絶対値、θ は偏角)で表すこともできます。オイラーの公式により、

e^{iθ} = cos θ + i sin θ、よって複素数は r (cos θ + i sin θ) = r e^{iθ} と表せます。極形式は掛け算・除算が直感的で、掛け算は大きさの乗算と角度の加算(回転)の組合せになります。

実例:負の数の平方根

例えば √(-9) は 3i です。これは 3i × 3i = 9 i² = 9(−1) = −9 となるためです。長い歴史の中で「負の数の平方根は解がない」と考えられていましたが、虚数の導入によりこれらも扱えるようになりました。

複素数の応用(工学・物理など)

虚数・複素数は純粋な数学だけでなく多くの実用分野で不可欠です。いくつかの代表例:

  • 電気工学: 交流回路の解析ではインピーダンスを複素数で表現します。電気工学では電流の記号 i と混同しないように、虚数単位を j と書くことが一般的です。
  • 信号処理・フーリエ変換: 周波数ドメインでの解析に複素数が使われます。位相と振幅を同時に扱えるため、フィルタ設計やスペクトル解析に必須です。
  • 制御工学: ラプラス変換や安定性解析(極と零点の配置)で複素数が用いられます。
  • 量子力学: 波動関数は複素数で表現され、干渉や確率振幅の計算に必要です(参照:量子物理学)。
  • 電磁気学・高エネルギー物理: 複素数表現は解析や方程式の簡潔化に役立ち、物理学の多くの分野で登場します。

複素数の拡張と表記

実数 a と虚数 bi の和 a + bi のような数を総称して 複素数 と呼びます。虚数は「非現実的」あるいは「奇妙」と感じられることがありますが、実用上は 3 や 145,379 と同じように有効な数です。虚数という名前に惑わされないでください。

まとめとポイント

  • 定義: i は i² = −1 と定義される虚数単位。
  • 複素数: a + bi の形で、実部 a と虚部 b を持つ。
  • 幾何学的解釈: 複素数は平面上のベクトルであり、掛け算は回転と拡大縮小を表す。
  • 応用: 電気工学、信号処理、量子力学など幅広い分野で必須。

より深く学ぶには、複素平面の幾何(偏角・絶対値)、オイラーの公式、ラプラス・フーリエ変換、そして複素解析(正則関数や留数計算)へ進むと良いでしょう。なお本文中の「負の」「実数」等の語は元の説明で参照されていたリンク(単位である負の実数 等)を参照してください。

質問と回答

Q:虚数とは何ですか?


A:虚数とは、実数と虚数単位であるiの組み合わせで、iはi^2=-1として定義されます。

Q:虚数と負の実数とはどう違うのですか?


A:虚数は負の実数とは別に、正の実数の代わりに負の実数の平方根であると定義されている。これは実数ではありえないことで、自分自身を掛けて負の数になる実数は存在しないからです。

Q:「東へ-iマイル」と言うのはどういう意味ですか?


A:「東へ-iマイル」と言うときは、「南へ1マイル」と言ったときと同じ意味である。

Q:2つの虚数はどのように足すのですか?


A:2つの虚数を足すには、「東へ1マイル、北へ1マイル」と言えばよい。2つの虚数の掛け算は、正の数と負の数の掛け算に似ている。

Q:複素数とは何ですか?


A:複素数とは、2+3iのように実数と虚数の両方から構成される混合数のことです。実数成分と虚数成分を足すとできる。

Q:数学者はどのような分野で虚数単位の概念を使っているのでしょうか?


A:数学者は、電気工学、量子物理学、高エネルギー物理学など、科学や工学の多くの分野で虚数単位の概念を使用している。また、虚数単位がないと解けないような方程式でも使われます。

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