インダクタ(コイル)は、磁気を帯びているため、電気回路に使われる受動素子です。一般に「コイル」と呼ばれることが多く、電流の変化に対して自己誘導により起電力(起電力は電流の変化を妨げる向きに働く)を発生させます。単位はヘンリー(H)で、実際の回路ではマイクロヘンリー(μH)やミリヘンリー(mH)がよく使われます。

構造と材料

インダクタは通常、銅線などの電材料で作られたコイルを、空気または磁性体のコアに巻いて作ります。コアの種類によって特性が大きく変わります。

  • エアコア:コアに空気(または非磁性の素材)を使う。高周波で損失が少なく、磁気飽和の心配がない。
  • フェライトコア:磁気透過率が高く、小型で高インダクタンスが得られる。高周波向けに多いが、材質により周波数帯や損失特性が異なる。
  • ラミネート鉄心・粉末鉄心:電源用や低周波で大きな磁束を扱う場合に使われ、飽和特性や損失を考慮して選ぶ。

コアに磁性の強い材料を使うと、インダクタの周囲の磁界をインダクタ本体に集中させられるためインダクタンスが向上します。また、小型インダクタは、トランジスタと同じ方法で集積回路に搭載することが可能で、この場合は導電材料としてアルミニウムが使われることが一般的です。

動作原理(簡単な理屈)

インダクタの基本原理はファラデーの法則とレンツの法則に基づきます。電流 i(t) が時間的に変化すると、その変化に応じた磁束の変化が生じ、コイルには逆向きの起電力 v(t) = L (di/dt) が生じます。ここで L はインダクタンス(H)です。

  • 交流に対するインピーダンスは Z = jωL(ω = 2πf)で、周波数 f が上がるとリアクタンスが増大します。
  • 直流では一定電流に対しては直流抵抗(巻線抵抗)以外の電圧降下は無く、電流の変化に対してのみ作用します。
  • エネルギーは磁界に蓄えられ、蓄えられるエネルギーは W = 1/2 L I^2 です。
  • 抵抗と合わせた回路では時定数 τ = L/R により応答の速さが決まります。

代表的な形状と特徴

  • ソレノイド(円筒状コイル):構造が単純で一般的。
  • トロイダルコイル(ドーナツ状):磁束がコア内に閉じるため漏れ磁束が少なく、外部に与える影響が小さい。
  • チョークコイル:主にノイズ除去や平滑用に使われる。電源ライン用の大容量チョークなどがある。
  • SMDインダクタ:表面実装用で小型、携帯機器などに多用される。

設計上の注意点・特性

  • インダクタには巻線抵抗(直流抵抗)、寄生容量(自己共振周波数を決める)、コア損失(ヒステリシス・渦電流損失)などの実在素子特性がある。
  • 自己共振周波数(SRF)を超えるとキャパシタンス支配になり、期待するインダクタンス特性を得られない。
  • Q値(品質係数)は損失の少なさを示す指標で、高周波用途ではQが重要。
  • 大電流を扱う場合は磁気飽和と発熱に注意し、適切なコア材と断面積を選ぶ必要がある。

用途(代表例)

  • 電源回路:スイッチング電源のエネルギー貯蔵(昇降圧型DC-DCコンバータ)、入力/出力の平滑
  • フィルタ回路:ローパス・バンドパス・高周波の整合回路や雑音除去(EMIフィルタ)
  • RF回路:共振回路の一部として同調・インピーダンス整合に使用
  • 信号ラインのチョーク:高周波ノイズを抑制して信号品質を維持
  • トランス(相互インダクタ):複数の巻線を使って電力や信号を結合・絶縁伝送

選び方のポイント

  • 必要なインダクタンス値(L)と扱う周波数帯を明確にする。
  • 許容電流(飽和電流)とコアの温度上昇を確認する。
  • 自己共振周波数(SRF)が使用周波数より十分高いこと。
  • 実装形態(スルーホール/SMD)や実装面積、コストを考慮する。

測定と記号

インダクタンスはLCRメータで測定できます。回路図上では一般にコイルの記号(複数の巻線を示す線)で表されます。

まとめると、インダクタは「電流の変化に対して磁界を用いて反応する素子」であり、周波数選択、エネルギー貯蔵、ノイズ抑制など幅広い用途に使われます。用途に応じてコア材・形状・巻き数・導体材質を選ぶことが大切です。