モダンダンスはバレエに関連していますが、クラシックバレエとは別の目的や表現を持つ舞踊ジャンルです。両者には共通する基礎を持つダンサーも多く、モダンダンスのカンパニーにはバレエ出身者も少なくありません。しかし、動きの質、身体の使い方、表現の重心などは大きく異なります。
定義と用語の注意
「モダンダンス」という言葉は、時に異なる意味で使われます。例えば英語圏では現在の「インターナショナル」スタイルのボールルームダンスにも同じ語が用いられることがありますが、本稿では20世紀に舞台芸術として発展したコンサートダンスの文脈でモダンダンスを扱います。モダンダンスのスタイルには厳密なルールはなく、流派や振付家ごとに技術や表現法が多様です。
歴史と代表的な振付家
モダンダンスは20世紀初頭、伝統的なバレエの形式から離れ、より自然な身体表現や個人の感情を重視する動きとして始まりました。主な先駆者にはイサドラ・ダンカン(自然な動きの追求)、マーサ・グラハム(contraction and release=収縮と解放の技法)、ドリス・ハンフリー(落下と回復の理論)、メルス・カニンガム(偶然性と音楽との独立した構成)、アルビン・エイリー(アフリカ系アメリカ人の経験を表現)などがいます。これらの系譜は現在の現代舞踊やコンテンポラリーダンスにも強い影響を与えています。
特徴と身体技術
- 重力と体重の使用:バレエが軽さや上昇感を強調するのに対し、モダンダンスは地面との接触、重さの移動、床を使った動き(フローワーク)を多く取り入れます。
- 表現の素直さ:個人の感情や内面的経験を動きに直接反映させることが多く、抽象的な動きから物語的な演出まで幅があります。
- 多様な技法:マーサ・グラハムの技法、フォルムの解放を重視するリリース・テクニック、バーテンイェフやラバンの身体観察など、複数のアプローチが存在します。
- 即興と創作:即興を稽古や振付の素材に用いることが多く、感情や状況を契機にルーティンを構築します。
振付と表現
モダンダンサーは自分の内面的な表現を重視することが多く、気分を動きに反映させる場合が多いです。一方で、舞台作品としては構成された振り付けのあるパフォーマンスも一般的で、抽象的なモチーフの展開や明確な物語性を持つものなど多様です。振付家は即興の素材を編集したり、音楽・照明・舞台美術と密接に協働して作品を作り上げます。
衣装と舞台美術
モダンダンスは特定の衣装様式に縛られないのが特徴です。伝統的なチュチュやパントマイム的なコスチュームは必須ではなく、むしろ動きや演出に合わせて自由に選ばれます。多くのダンサーは衣装を簡潔にし、しばしば裸足で踊ることで床との接触感を重視します。舞台では照明、映像、道具と組み合わせたマルチメディア的な呈示も増えています。
練習と訓練
モダンダンサーのトレーニングには、テクニッククラス(各流派の基礎)、即興セッション、振付課題、コンタクトインプロビゼーションやパートナリングの練習が含まれます。身体の機能を高めるためにジャズ、ピラティス、アレクサンダー・テクニークなどの補助的メソッドを取り入れることも一般的です。
観客と上演形態
モダンダンスの上演はコンサートホールやダンス専用劇場、アートスペース、野外など多様な場所で行われます。観客は身体表現や抽象的表現に対して能動的に意味を見出すことが求められる場合があり、演者と観客の関係性が作品の受け取り方を左右します。演出によっては観客参加や近接上演(観客と近い距離で踊る)を試みることもあります。観客との相互作用を重視する作品も少なくありません。
まとめ
モダンダンスは、クラシックバレエとは異なる身体観と表現の自由を特徴とする舞踊ジャンルです。流派や振付家によって技術や美学は多彩で、衣装や舞台構成も柔軟です。初心者から専門家まで、身体の感覚や表現力を深める場として広く受け入れられており、現代の舞台芸術の重要な一分野となっています。


