映画音響編集者とは|役割・歴史・MPSE(映画音響編集者協会)の概要

Motion Picture Sound Editors(M.P.S.E.)は1953年に設立された、映画音響編集者の名誉ある専門家協会です。協会の主な目的は、サウンドエディターの教育と社会的認知度の向上、サウンドトラックの芸術的価値の提示、会員同士および業界との職業上の関係改善を図ることです。この組織は労働組合ではなく、I.A.T.S.E.のような業界の組合と混同されるものではありません。

役割と活動内容

MPSE自体は教育・表彰・ネットワーキングを通して音響編集の職能を支援します。具体的には次のような活動があります。

  • 上映作品の音響編集・デザインに関するセミナーやワークショップの開催
  • 優れた音響編集を顕彰する賞(代表的にはゴールデンリール賞〈Golden Reel Awards〉)の運営
  • 若手や新人の育成、メンター制度やポートフォリオ審査などの支援
  • 業界基準や技術動向に関する情報発信と共有
  • 会員同士の交流と専門的ネットワーク構築の場提供

映画音響編集者(サウンドエディター)の仕事内容

映画音響編集者は、映像に合わせて音素材を収集・編集し、物語に沿った音の設計を行います。主な担当業務は次の通りです。

  • ダイアログ編集(ロケ音声の整音、ADRの編集)
  • 効果音編集(ライブラリ音やフィールド録音の選定・編集)
  • フォーリー作業との連携(物理的な効果音の制作と同期)
  • サウンドデザイン(環境音や特殊音響の創作)
  • ミックス工程(リレコーディング・ミキサーとの調整)
  • 他部署(監督、音楽、VFX)とのコミュニケーションおよび技術管理

歴史と代表的な取り組み

MPSEは創設以来、映画音響編集の専門性を高めるための教育活動と表彰活動を続けてきました。毎年のゴールデンリール賞をはじめ、業界の技術進歩や新しい音響表現を後押しするイベントやパネルを主催・共催しています。またアーカイブや口述歴史の保存、公式ガイドラインや技術的リソースの提供など、後進の支援にも力を入れています。

会員とクレジット表示

MPSEには正会員、準会員、学生会員などの区分があり、職務経験や業績、推薦などの基準で入会が認められます。MPSEの正会員の名前は通常、映画のクレジットに「MPSE」の後記文字で表示され、専門職としての資格や所属を示します。会員になることで、業界内での認知度向上や求人情報・ネットワーキングの機会が得られます。

他職種との違い

音響に関わる職種は多岐にわたりますが、代表的な違いは以下の通りです。

  • サウンドエディター(音響編集者):音素材の編集・整備とサウンドデザインの制作を担当。
  • サウンドデザイナー:作品全体の音響世界観を創造し、独自の音を制作することに重きがある。
  • リレコーディング・ミキサー(再レコーディング技師):音楽・効果音・ダイアログをバランスさせ、最終ミックスを仕上げる。
  • フォーリーアーティスト:歩行音や衣擦れなどをスタジオで再現し、同期させる専門職。
  • スーパーバイジング・サウンドエディター:音響チーム全体を監督し、制作の方針や品質管理を担う。

日本における関係性と国際的な位置づけ

MPSEはアメリカを中心とした国際的な組織ですが、ワークショップや受賞作を通じて世界中の音響関係者に影響を与えています。日本国内の音響専門家や団体とも協働することがあり、技術情報や表現手法の交流が行われています。なお、前述のとおりMPSEは労働組合ではないため、労働条件交渉などの役割は担当していません。

参加方法とメリット

  • 参加を希望する場合は、所定の応募書類(経歴・作品一覧・推薦など)を提出し、審査を受ける必要があります。
  • 会員になると、表彰への応募資格、業界イベントへの優先参加、メンター制度の利用、会員限定リソースへのアクセスなどのメリットが得られます。

以上がMPSE(Motion Picture Sound Editors)と映画音響編集者の概要です。音響編集は物語の感情や空間を形づくる重要な職能であり、MPSEはその価値を広く伝え、次世代の育成と業界発展を支える役割を果たしています。

会員資格

入会申し込みには、以下のものが必要です。

  • 以下のいずれか(または複数)としての3年間の単位リスト。

·         サウンドエディター

·         サウンドデザイナー

·         ダイアログエディタ

·         ADRエディター

·         サウンドエフェクトエディター

·         フォーリーアーティスト

·         音楽編集者

  • MPSE正会員スポンサー2社
  • MPSE正会員からの推薦状1通

ゴールデンリール賞

1953年にスタートしたMPSEは、毎年、以下の部門でサウンドエディターを表彰しています。

  • ダイアログ&ADR
  • エフェクト&フォーリー
  • 音楽

このカテゴリーは、特定のジャンル、長編映画とテレビ番組に基づいてさらに細分化されています。

また、「その他」のカテゴリーとして、コンピュータエンターテインメントにおける音響編集、キャリア功労賞新任フィルムメーカー賞があります。また、MPSEは、Verna Fields Award for Sound Editing in a Student FilmとEthel Crutcher Scholarshipのスポンサーでもあります。



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