急性心筋梗塞(一般に心臓発作とも呼ばれます)は、心臓を栄養する血管が突然閉塞して血流が途絶えることで起こります。血管は血液と酸素を心筋に運びますが、血管が詰まると心臓の一部へ血液が行き渡らなくなり、その部分の心筋が十分な酸素を得られなくなります(虚血)。虚血が短時間で回復すれば症状は改善しますが、虚血が長く続くと心筋は不可逆的に壊死し、これを「心筋梗塞」と呼びます。心筋梗塞は医療上の緊急事態であり、発症直後の対応が予後を大きく左右します。
主な症状
- 胸の強い圧迫感や締めつけられるような痛み(数分以上続く)。
- 痛みが左肩、左腕、顎、背中、または腹部に放散することがある。
- 呼吸苦(息切れ)、冷や汗、吐き気・嘔吐、めまい。
- 動悸、不安感、疲労感や意識障害。高齢者や糖尿病患者、女性では典型的な胸痛がないことがあり、吐き気や腹部不調、だるさだけで現れることがある。
原因と危険因子
多くは冠動脈の動脈硬化プラークが破綻して血栓ができ、血管を閉塞することで発生します。主な危険因子:
- 喫煙
- 高血圧、脂質異常症(高コレステロール)
- 糖尿病
- 肥満、運動不足、不健康な食生活
- 加齢、家族歴(心血管疾患の家族歴)
- 慢性的なストレスや過度の飲酒
現場での応急処置(救急対応)— すぐにできること
- 救急車を呼ぶ(日本では119):疑わしい症状がある場合、ためらわず救急要請を。到着前の処置が命を救うことがあります。
- 患者を座らせて安静にし、衣服の締め付けをゆるめる。
- 可能ならば舌下ニトログリセリン(患者が普段処方されている場合)を指示に従って使用する。
- アスピリンの咀嚼:アレルギーや出血性疾患がない場合、救急隊到着前に医師や救急指示があれば、規定量のアスピリン(一般的には162–325mgの速効性咀嚼)を噛んで摂取することで血栓の進行を抑えられることがあります。ただし、出血のリスクやアレルギーの有無を確認すること。
- 心停止が疑われる場合は、ただちに心肺蘇生(CPR)を開始し、可能なら自動体外式除細動器(AED)を使用する。周囲の人は救急隊の到着まで継続する。
- 救急隊や医療機関の指示に従って行動する。
病院での診断
- 心電図(ECG/心電図):発作の有無や場所の推定に最も早く役立つ検査。
- 心筋酵素(トロポニンなど)の血液検査:心筋壊死の有無を示す重要な指標。
- 胸部X線、心エコー(超音波)で心機能や合併症を評価。
- 冠動脈造影(カテーテル検査):血管の閉塞部位を直接確認し、同時に治療(経皮的冠動脈インターベンション:PCI)を行うことができる。
治療法
治療の目的は、閉塞した血管を早く再開通させて心筋のダメージを最小限にすることです。代表的な治療:
- 経皮的冠動脈インターベンション(PCI):カテーテルを用いて狭窄部を広げ(ステント留置など)血流を回復させる。発症後できるだけ早く行うことが望ましい(「ゴールデンアワー」)。
- 血栓溶解療法(血栓溶解剤):PCIがすぐに行えない環境では、薬で血栓を溶かすことがある。
- 抗血小板薬(アスピリン、P2Y12阻害薬)、抗凝固療法、β遮断薬、ACE阻害薬/ARB、スタチンなどの薬物療法。
- 重症例では人工呼吸、補助循環(IABP、経皮的補助装置等)、心臓外科手術(冠動脈バイパス術)を行うことがある。
- 発症後は集中治療室や心血管病床での管理、心機能評価と合併症の監視が必要。
合併症
- 不整脈(致死的不整脈を含む)
- 心不全や心原性ショック
- 心室瘤、心破裂(まれだが致命的)
- 心膜炎や再梗塞
回復と予後、予防
心筋梗塞後はリハビリ(心臓リハビリテーション)で運動療法、栄養指導、リスク因子管理を行い再発予防を図ります。予後は梗塞の大きさや治療開始までの時間、合併症の有無で左右されます。
予防には以下が重要です:
- 禁煙、適切な体重管理、定期的な運動
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症の適切な管理
- バランスの良い食事(塩分・飽和脂肪の制限)
- 定期的な健康診断と必要な薬物治療の継続
まとめ:急性心筋梗塞は一刻を争う病気です。胸の痛みや息苦しさなどの症状が現れたら迷わず救急を要請し、到着までの間に可能な応急処置(安全確認、安静、アスピリンの咀嚼など)を行ってください。早期の診断と再灌流療法が、心筋のダメージを減らし生命を救う鍵となります。



