使徒行伝(使徒言行録)とは|新約聖書の概要とパウロの働き
使徒行伝(新約聖書)の概要とパウロの宣教活動を分かりやすく解説。初代教会の成立や回心からローマ到着までを時系列で学べる入門ガイド。
使徒言行録(ギリシャ語:Πράξεις τῶν Ἀποστόλων、Praxeis ton Apostolon)は、聖書の一冊で、現在は新約聖書に属する書物の一つです。日本語では「使徒言行録」や「使徒行伝」と呼ばれ、伝統的に福音書と合わせてルカ・使徒言行録(Luke–Acts)として扱われます。
本書は、初代キリスト教会の成立と拡大を描く物語で、特に十二使徒の働きと、タルソのパウロの宣教活動(働き)に焦点を当てています。序盤(主にエルサレムを舞台とする章)では、イエスの復活、復活と昇天、ペンテコステの日における聖霊の降臨、使徒たちの宣教開始、ステパノ(スティーブン)の殉教などが描かれます。後半ではパウロの回心と改名、数回にわたる宣教旅行、宣教地での説教と論争、そして最終的に逮捕・裁判を経てローマに送られるまでの経緯が記録されています。
著者と成立
ほとんどの伝統的立場では、使徒言行録の著者は福音書を記した人物と同一であるとされ、その人物がルカであると伝えられてきました。福音書(ルカの福音)の冒頭と使徒言行録1:1に見られる「テオフィルスに宛てた『第1の書』」という表現から、両書が一連の著作であると考えられます。使徒言行録1:1には、作者が福音書について「テオフィルス、私はかつて、イエスが行い、教え始めたすべてのことを論じた」と述べていることが記されています。
成立年代については意見が分かれます。伝統的には、パウロの同伴者であったとされるルカが60年代前半(西暦約60年頃)に著したとする説が根強いですが、現代の学術的議論では80〜90年頃、あるいはそれ以降(2世紀初頭まで含む)とする説もあります。成立年代の差は、書中に見られる歴史的・神学的特徴や、他資料との照合によって議論されます。
構成と主な内容
- 序章(1章): イエスの昇天と使徒職の継承準備。
- エルサレム期(2〜7章): ペンテコステ、ペトロの説教、共同体の成長、ステパノの殉教。
- ユダヤ地方から異邦世界へ(8〜12章): フィリポの布教、コルネリオの改宗(異邦人受容の重要な契機)、ペトロの活動。
- パウロの第一回宣教旅行以降(13〜28章): アンティオキアを拠点とした宣教、使徒会議(15章)を経て、パウロの各地宣教、アジア・マケドニア・ギリシアでの活動、エルサレムでの逮捕、ローマへの移送(船旅と難破を含む)。
書中には説教(説法)の長い記録が多数含まれ、初代教会の信条的な告白(kerygma)が反復されます。また、いくつかの箇所で「われわれ(we)」という一人称複数が用いられることから、著者が特定の旅程で同行者として記録を残した可能性も議論されています。
主要テーマと神学的特徴
- 聖霊の働き: 聖霊は教会の誕生と宣教の原動力として繰り返し強調されます。
- 福音の普遍性: イエスのメッセージがユダヤ人だけでなく異邦人にも及ぶことを示すため、コルネリオ事件や使徒会議などが重要な役割を果たします。
- 使徒的証言(Witness): 使徒たちの宣教活動は「証し(マルティュリア)」として描かれ、復活と救いの宣言が中心です。
- 共同体と教会秩序: 初代教会の生活、財産の共有、指導者の選出など、共同体形成の過程が示されます。
- 神の摂理と歴史観: 異邦の支配者やローマの法制度も、神の計画の器として描かれる場面があり、宣教の展開が国際的舞台で進む様子が示されます。
史的信頼性と学術的論点
使徒言行録は地理的・行政的な細部に関して注意深い描写があり、考古学や古代史学と整合する部分も多くあります。一方で、説教文の神学的整序や物語の目的性から、史実のそのままの記録というよりは、神学的弁証(ディフェンス)や宣教史の編纂とみなすべきだとする見方もあります。主な学術的議論には以下が含まれます。
- 著者の視点と資料:口伝、文書資料、同行者の証言の使用の有無と性質。
- 「われわれ」挿入の解釈:著者の同行の証拠か、文体上の工夫か。
- 年代問題:成立年代により史料評価や当時の歴史解釈が変わる。
- パウロ像の提示:パウロをどのような使徒として描いているか(律法との関係、ユダヤ・異邦間の仲介者としての性格など)。
受容と影響
使徒言行録は、教会史の基礎史料として、教父たちの著作や初期教会の実践、後の宣教学に大きな影響を与えました。宣教命令の実践例として、また教会組織のあり方を理解するうえでも重要な書物です。今日でも歴史学、神学、宣教学の主要テキストとして幅広く研究・講義・説教に用いられています。
結論として、使徒言行録は初代教会の誕生と拡大を描いた重要な書であり、史的記述と神学的主張が交錯する複層的な文書です。伝統的にはルカによる著作とされますが、成立年代や記述の性格については現在も研究が続いています。

使徒たちに囲まれるイエス
質問と回答
Q:「使徒言行録」とは何ですか?
A: 「使徒言行録」は、聖書の中の一冊で、特に十二使徒とタルソのパウロの働きを中心に、初期キリスト教の教会を描いたものである。
Q: 使徒言行録の初期にはどのような出来事が書かれているのでしょうか?
A: 使徒言行録の初期には、イエスの復活、昇天、ペンテコステの日、十二使徒の宣教開始が報告されています。
Q: 使徒言行録の後期には、どのような出来事が書かれていますか?
A: 使徒言行録の後の章では、パウロの回心、宣教、そして最後に逮捕、投獄、ローマへの旅が報告されています。
Q: 「使徒言行録」の作者は誰だと考えられているのか?
A: 多くの人は、使徒言行録の著者がルカ福音書も書いたと考えています。使徒言行録1章1節に「テオフィロス、私はイエスが行い、教え始めたすべてのことについて、以前論じた」とあります。伝統的な見解では、両書はパウロの仲間であったルカによって60年頃に書かれたとされています。
Q: 「使徒言行録」の著者について、ある神学者はどのように考えているのでしょうか?
A: ある神学者は、使徒言行録は後年、80年から150年の間に著者不明で書かれたと考えています。
Q: 使徒言行録はタルソのパウロに焦点をあてているのか?
A: 使徒言行録は、タルソのパウロの回心、宣教、逮捕、投獄、ローマへの旅に焦点をあてています。
Q: 「使徒言行録」の主な目的は何ですか?
A: 『使徒言行録』の主な目的は、初期キリスト教会の歴史的記述を提供し、十二使徒とタルソのパウロの働きを詳述することです。
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