バーナードの星は、バーナードの暴走星とも呼ばれ、地球から約6光年離れたおひつじ座にある、非常に質量の小さい赤色矮星です。スペクトル型は一般にM4クラスに分類され、質量は太陽の約0.14倍程度、表面温度はおよそ3,100 K前後と推定されます。光度は極めて小さく(太陽の約0.003〜0.004倍程度)、古い恒星で金属量が低いと考えられているため、年齢は太陽よりかなり古く、数十億年から一兆年スケール(研究によっては約7–12十億年程度)と見積もられています。活動レベルは一般的な赤色矮星と同様に低いことが多いものの、ときどきフレアを起こすことが観測されています。

1916年、アメリカの天文学者E.E.バーナードは、この星の固有運動を1年で約10.3秒(約10.3″/年)と測定しました。これは太陽に対する固有運動としては最大級で、地球からの距離は約1.8パーセク(6光年弱)に相当します。バーナード星はおひつじ座の恒星としては最も近く、個々の恒星としてはアルファ・ケンタウリ三重系に次ぐ、ケンタウルス座の3つの恒星群を除けば4番目に太陽に近い星としてよく知られています。

その大きな固有運動と既知の距離から計算される横速度(視運動による速度成分)はおよそ90 km/sと速く、視線方向の速度(視線速度)も大きいため、太陽系に対する空間速度は比較的高い値を示します。視覚的には暗く、見かけの等級は約9等級(およそ9.5等)と暗いため肉眼では見えませんが、赤外線では可視より相対的に明るく観測されます。

バーナード星は近傍恒星として天文学的に重要な観測対象であり、長年にわたって視差・固有運動・放射速度精密観測や系外惑星探査の対象とされてきました。2018年にはラディアル速度法による候補惑星(通称「バーナード星b」)の検出が発表され、質量は地球の数倍程度、公転周期は約233日と報告されましたが、その後の解析で信号の解釈に異論もあり、確定はされていません。今後も精密な観測でその系の解明が進むと期待されています。

観測のポイント:バーナード星は位置が既知で明確な高固有運動星なので、小型望遠鏡や望遠レンズでも追跡しやすい天体です。肉眼では見えませんが、近赤外での観測や高精度ドップラー測定、長期的な位置測定(アストロメトリ)により、その内部構造や周囲環境、惑星存在の有無についてさらに詳しい情報が得られる可能性があります。