アンドリュー・ザカリー・ファイア(1959年4月27日、カリフォルニア州パロアルト生まれ)は、アメリカの生物学者。スタンフォード大学医学部の病理学・遺伝学教授。ファイアーは、RNA干渉の発見により、2006年ノーベル医学・生理学賞を受賞した。カーネギー科学研究所で研究を行い、1998年に発表した。


経歴の概略

ファイアはカリフォルニア州パロアルトで生まれ、分子生物学や遺伝学の分野で長年にわたり研究を続けています。カーネギー科学研究所(Carnegie Institution)などの研究機関で基礎研究を行った後、スタンフォード大学医学部の教員として教育・研究に従事しています。研究キャリアを通じて、遺伝子発現の制御機構とそれを利用した実験手法の開発に大きく貢献してきました。

RNA干渉(RNAi)の発見

1998年に発表されたファイアらの研究は、線虫Caenorhabditis elegansを用いて、外来の二本鎖RNA(dsRNA)が標的遺伝子の発現を高い特異性と効率で抑える現象を示しました。この現象は後にRNA干渉(RNA interference、RNAi)と名づけられ、以下のような基本的な仕組みが明らかになりました:

  • 外来または内生性の二本鎖RNAが細胞内で認識される。
  • 酵素(例:Dicer)によって短い二本鎖小分子RNA(siRNAやmiRNA)に切断される。
  • これらの小分子RNAがRISC(RNA誘導サイレンシング複合体)に取り込まれ、相補的なmRNAを標的として分解あるいは翻訳抑制を引き起こす。

この仕組みの発見は、遺伝子の機能解析や遺伝子発現制御の理解を根本的に変えました。

科学的・実用的意義

RNA干渉の発見は、基礎生物学だけでなく応用面でも非常に大きな影響を与えました。主な意義は次のとおりです:

  • 遺伝子ノックダウンの簡便な手法:特定遺伝子の機能を調べるために、標的mRNAを選択的に抑制できるため、機能解析が迅速かつ効率的になった。
  • 治療応用の可能性:ウイルス感染、がん、遺伝性疾患などに対する新しい治療法の開発につながると期待されている(siRNAを用いた医薬品の研究・臨床試験が進行)。
  • 分子メカニズムの理解:小分子RNAを介した遺伝子発現の制御は、生物の発生や恒常性の維持における普遍的な役割を持つことが明らかになった。

受賞と栄誉

ファイアはRNA干渉の発見により、2006年のノーベル生理学・医学賞を共同研究者とともに受賞しました。ノーベル賞はこの現象の重要性を国際的に示すものであり、その後も彼の業績は生物学界で高く評価されています。

その後の研究と現在

受賞後もファイアはRNA生物学や遺伝子制御の研究を続け、基礎研究と応用研究の橋渡しに取り組んでいます。スタンフォード大学での教育活動を通じて次世代の研究者を育成するとともに、RNAに関する新たな発見や技術開発にも関与しています。

参考(代表的な論文)

  • Fire A. et al., "Potent and specific genetic interference by double-stranded RNA in Caenorhabditis elegans." Nature, 1998. — RNA干渉を最初に示した代表的な論文。

ファイアの業績は分子生物学の研究手法を一変させ、多くの研究分野と臨床応用に影響を与え続けています。