Sir John Cowdery Kendrew CBE FRS(1917年3月24日~1997年8月23日)は、イギリスの生化学者であり、結晶学者である。
1962年のノーベル化学賞をマックス・ペルッツと共同で受賞した。キャベンディッシュ研究所の彼らのグループは、X線結晶学を用いてタンパク質の構造を世界で初めて解明した。また、ケンブリッジのピーターハウス・カレッジのフェロー(教師)でもある。
MRC分子生物学研究所となったケンドリューは、筋肉細胞の中で酸素を貯蔵するミオグロビンというタンパク質の構造を解明した。
第二次世界大戦の初期には、レーダーの研究を行っていた。1940年には英国空軍司令部で作戦研究に従事し、R.A.F.のウィングコマンダーという名誉ある地位を得た。
ケンドリューの代表的な業績は、タンパク質を原子レベルで「立体的」に描き出した点にあります。彼は特にマッコウクジラ(セイウチや他の海洋哺乳類ではなくマッコウクジラ由来が有名)のミオグロビン結晶を用い、X線結晶学による回折データから電子密度図を作成し、そこに原子モデルを当てはめる手法を完成させました。この成果により、タンパク質がどのように折りたたまれ、ヘム基といった機能部位がどのように配置されているかが初めて明確になりました。
研究には、多くの技術的課題の克服が伴いました。たとえば、結晶から得られる回折パターンだけでは位相情報が欠ける「位相問題」があり、これを解決するために実験的位相法や模型構築、さらに初期の計算機を用いた解析が組み合わされました。ケンドリューと共同研究者たちはこれらの方法を発展させ、タンパク質結晶学の手法を確立しました。その結果、タンパク質構造の解析は生物学・医学の基盤となり、酵素の働きや薬物設計の理解を飛躍的に進めました。
教育・指導と栄誉
ケンドリューは研究業績だけでなく、後進の指導や研究体制の構築でも重要な役割を果たしました。ピーターハウス・カレッジでのフェローとして若手研究者を育て、組織的な研究環境の整備に貢献しました。1962年のノーベル化学賞はマックス・ペルッツとの共同受賞であり、これにより構造生物学分野の重要性が国際的に認知されました。また、CBEやFRSの称号に加え、晩年まで学術界で高く評価され続けました。
影響と遺産
ケンドリューの業績は現代の分子生物学や医薬研究に深い影響を与えています。タンパク質立体構造の解明は、酵素の触媒機構やタンパク質間相互作用、薬物の標的設計など多くの応用分野を生み出しました。彼の手法と考え方は、その後のX線結晶学だけでなく、電子顕微鏡法や核磁気共鳴(NMR)など他の構造解析法の発展にもつながっています。
ケンドリューは1997年8月23日に亡くなりましたが、その研究と教育の足跡は現在も構造生物学の基礎を支えています。彼の仕事は「分子の形が機能を決める」という理解を深め、生命現象を原子レベルで解釈する道を開きました。

