ウィリアム・オートレッド (1574–1660) — 計算尺発明者、乗算記号×とsin/cosを導入した英数学者
ウィリアム・オートレッド—計算尺を発明し、乗算記号「×」と「sin/cos」を導入した英数学者の生涯と業績をわかりやすく解説。
ウィリアム・オートレッド(1574年3月5日 - 1660年6月30日)は、イギリスの数学者、英国国教会聖職者である。17世紀の数学教育と計算技術に重要な影響を与えた人物で、記法の整理や計算器具の考案を通じて後世に大きな遺産を残した。
生涯と経歴
オートレッドは16世紀末から17世紀中葉にかけて活動した。生来数学教育に熱心で、学問と教会の職務を兼ねながら、後進の指導や執筆を通じて知識を広めた。社交的に多くの同時代の学者と交流し、その教えや著作はイギリス国内外で読まれた。
主要な業績
ジョン・ネイピアは対数を発明し、エドモンド・ガンターは対数目盛りを作成した。このようなスケールを2つ使ったのはオルトレッドが最初である。彼は、掛け算と割り算を直接行うために、1つを隣にスライドさせた。彼は1622年頃、計算尺を発明したとされている。
この方式は、個々の対数目盛り(ガンターの目盛り)を組み合わせることで、乗算・除算を機械的に簡便化するもので、後に直線型や円形の計算尺の発展につながった。計算尺はその後数世紀にわたり技術者や科学者の間で幅広く使われ、20世紀中ごろまで実用的な計算道具として重宝された。
また、乗算記号の「×」や、サイン・コサイン関数の略語「sin」「cos」も紹介された。特に1631年の著作『Clavis Mathematicae(数学の鍵)』などで、記号や表記法を整理し、計算や教示を効率化する試みがなされている。これらの表記はその後広く受け入れられ、現在でも基本的な数学記号として定着している。
教育と影響
オートレッドは著作と私塾・講義を通じて多くの弟子を育て、17世紀の数学教育に大きな影響を与えた。彼の考案した計算具や記法は実務的な計算の簡便化に貢献し、天文学や航海術、工学といった分野での応用を促した。著作は複数回版を重ね、ヨーロッパの数学コミュニティにも影響を与えた。
遺産
- 計算尺の原理:ガンターの対数目盛りを二つ組み合わせる発想により、後の計算尺群の基礎を築いた。
- 記法の普及:「×」や「sin」「cos」など、今日まで残る数学記号の普及に寄与した。
- 教育的影響:著作と弟子を通じて、17世紀以降の数学教育に持続的な影響を与えた。
総じて、ウィリアム・オートレッドは実用的な計算技術と記法の発展に貢献した人物であり、彼の業績は近代数学の記述法と計算手段の整備に重要な役割を果たした。
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