英国王室御用達の宝飾品と、1603年の王室連合以降に追加された宝飾品について。
クラウン・ジュエルとは、イギリスの君主が戴冠式やその他の国家行事で着用する礼服や法衣を総称したものである。王冠、笏(十字または鳩の紋章)、オーブ、剣、指輪、拍車、王衣またはペール、その他式典に関連する品々を指します。
これらの多くは宗教改革以前の時代から直接受け継がれており、宗教的、神聖な意味合いを持っている。
主な構成品とその意味
- 王冠(クラウン):戴冠の際に使用される最も象徴的な品。代表的なものに聖エドワードの王冠(St Edward's Crown)や国璽冠(Imperial State Crown)などがあり、戴冠時や国事行為で使い分けられます。
- 笏(セプター):王権と統治の権威を示す杖。十字の笏は世俗的・宗教的権威の結合を表し、鳩(あるいは鳩を象った笏)は聖霊や慈愛を象徴します。
- オーブ(王球):十字を載せた球で、キリスト教世界における君主の地上の支配と神への服従を示します。
- 剣(国家の剣・裁きの剣):正義と国家防衛を象徴します。式典用の剣は、王の権威と国の安全を表す重要な役割を持ちます。
- 指輪:戴冠指輪は国と君主の「婚姻」を象徴し、君主の任務と忠誠を表す儀礼的な意味を持ちます。
- 拍車(スパーズ)や王衣・マント類:騎士道や王権の象徴として用いられます。戴冠式には特別な王衣やマントが使用されます。
- アンプラ(油差し)と匙(スプーン):聖油による按手(アノイティング)に使われる器具。伝統的に王の神聖性を付与する重要な道具です。
歴史的経緯と近世以降の変化(1603年以降)
16世紀〜17世紀の宗教改革や清教徒革命(英国内戦)により、古い宝飾や王室の一部が没収・処分された時期があり、1660年の王政復古以降に多くの品が再制作・補充されました。1603年のスコットランド王との同君連合(ジェームズ1世の即位)以降は、王室の儀礼や宝飾品にも地域的・時代的な変化が生じ、以下のような追加や改装が行われています。
- 新しい王冠や戴冠用具の制作・改装:君主や王妃のために個別の冠(consort crown)や王冠の改作が行われてきました。国璽冠などは時代により宝石の追加・差し替えや台座の修復が繰り返されています。
- 新しい宝石の組み込み:植民地時代以降に持ち込まれた大きな宝石(有名な例としてコー・イ・ノールや、20世紀初頭に発見されたカリナン原石から切り出された大粒のダイヤモンドの破片など)が王室コレクションに加えられ、王笏や国璽冠に組み込まれるなど、見た目や価値が変化しました。
- 王室の持ち物としての制度的整備:18〜19世紀以降、クラウン・ジュエルは個人財産ではなく王権の象徴として国庫や王室の管理下に置かれ、保管や展示の仕組みが整備されました。
- 式典の多様化に対応した追加品:戴冠式以外の国家行事や即位・国事行為のための小型の王冠や徽章、勲章類が増え、用途に応じた様々な宝飾品が整備されました。
スコットランドの「栄誉物(Honours)」との違い
1603年の同君連合でイングランドとスコットランドの王位が同一人物に帰したものの、両国の儀礼用宝飾品は別系統に保たれています。スコットランド王室の「栄誉物(Crown of Scotland、Sceptre、Sword of State)」はエディンバラ城に保管されており、イングランド(後の連合王国)のクラウン・ジュエルとは区別されます。
現在の保管と公開
現在、イングランド側のクラウン・ジュエルは主にロンドン塔に保管され、一般に公開されています。これらは法的にも王室の財産として保持され、代々の君主が個人的に所有するものではなく「王冠(the Crown)」に属する儀礼的・国家的財産とされています。
まとめ
クラウン・ジュエルは単なる宝飾品以上の意味を持ち、宗教的・歴史的・政治的な象徴です。1603年以降も王室の権威を示すため、新規制作や宝石の組み込み、形式の改変などによってコレクションは増え、現在に至るまで王権の象徴として大切に保管・展示されています。




