ダッタトレーヤは、ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァの三位一体の神の化身とされる聖者である。名前の「ダッタ(Datta)」は「与えられた」を意味し、伝承では三位一体の神々が賢者パーリの一族に生まれる息子として「与えた」存在と説明されることが多い。伝統的な物語では、賢者アトリ(Atri)とその妻アナスヤ(Anasuya)のもとに生まれたため、アトリの子を意味する「アトリヤ(Atriya)」とも呼ばれる。
出生譚と名前の由来
もっとも知られた説話の一つでは、ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァがアナスヤの篤実さと徳を試すために賢者の姿で訪れ、彼女の徳の力によって三神は幼児の姿に変えられた。アナスヤの願いによりその三神はアトリ夫妻に息子として与えられ、これがダッタトレーヤ誕生の起源とされる。このため「ダッタ(与えられた)」という名が説明される。
ナート伝統における位置づけ
ナートの伝統では、ダッタトレーヤはシヴァ神のアヴァターまたは化身と見なされ、ナート派の系譜(アディ・ナート・サンプラダーヤ)におけるアディ・グル(最初の教師)と位置づけられることが多い。特にヨーギー的・アヴァドゥータ的(常識や社会的規範を超越した放逸の聖者)な側面が強調され、後のマツィェンドラーナートやゴラクシャナートといったナート派の大師たちに精神的影響を与えたとされる。
教えと文献
- ダッタトレーヤは、ヨーガと無執着の実践を説く師として知られ、彼に帰される文献としてはAvadhuta Gita(アヴァドゥータ・ギータ)などがある。これらの文献は自己の本性(アートマン)の不二性と解脱(ジーヴァンムクタ)の境地を強調する。
- 伝承には、自然や周囲のあらゆる存在を師(グル)とみなして学ぶことを説いた「二十四人の師(24人のグル)」の話があり、彼は動物や自然現象、日常の出来事から人生の教訓を学ぶことを説いた。
- ダッタトレーヤの教えは、元来タントラやヨーガ的な文脈で語られていたが、やがて帰依的(バクティ)的な信仰と結びつき、広く民衆に受け入れられていった。
象徴・像容(アイコノグラフィー)
典型的なダッタトレーヤ像は三つの顔を持ち、これはブラフマー(創造)、ヴィシュヌ(維持)、シヴァ(破壊)の三位一体を象徴する。しばしば彼のそばには四匹の犬(四つのヴェーダを象徴するとされる)と乳を与える雌牛(カーマデーヌの亜種としての母性や富の象徴)が描かれる。手にはカマンドゥル(握り水瓶)、数珠、時には三叉戟や杖を持つ像が見られる。
崇拝・祭礼・聖地
ダッタトレーヤは現在でも多くの信徒に崇敬され、特にインドのマハーラーシュトラ州、カルナータカ州、グジャラート州などに重要な寺院や巡礼地がある。例として有名なのはカルナータカのガナガプール(Ganagapur)やマハーラーシュトラのオードゥンバル(Audumbar)などである。彼の生誕を祝う祭りはダッタ・ジャヤンティ(Dattatreya Jayanti)として祝われ、一般にはマルガシルシャ月(グレゴリオ暦の11–12月頃)の満月に当たる日とされる。
社会的・宗教的影響
ダッタトレーヤはヒンドゥー教のさまざまな学派に跨る複合的な人物であり、ヨーガとタントラの実践者、無執着を体現するアヴァドゥータ、そして民衆に親しまれるバクティ的な守護者という多面性を持つ。彼は多くの地域で師(グル)として仰がれ、精神的実践やシークラインの源泉と見なされてきた。
注:ダッタトレーヤに関する伝承や文献は地域や宗派によって異なるため、具体的な説話や細部は流布するバージョンにより変わることがある。とはいえ、彼が「三位一体の化身」であり、ナート伝統における重要なアディ・グルとされる点は広く認められている。

