ドゥンガン語とは|回族(ホイ族)の北京語系言語 — キリル文字・借用語・特徴
ドゥンガン語の起源・北京語系との関係、キリル文字表記、アラビア・ペルシャ由来の借用語など特徴をわかりやすく解説。
ドゥンガン語は、旧ソ連や新疆ウイグル自治区に住む、ホイ族の子孫であるドゥンガン族の母語です。ドゥンガン族自身はこの言語をホイ語と呼びます。言語学的には、甘粛省と陝西省の方言を基盤とした北京語系のいわゆる「娘言語(派生方言)」にあたり、両方言の話者とはほぼ相互に理解できます(相互理解)。中国語と同様に声調(調性)を持ち、文法は主として分析的(分析性)です。しかし大きな違いとして、ドゥンガン語は漢字ではなくキリル文字で表記される点、そして語彙に独特の借用語や古い語形が残っている点が挙げられます。特に宗教や文化に関わる語彙には、アラビア語やペルシャ語の借用語が多く含まれ、標準中国語(普通話)では使われなくなった保存語や中央アジア諸語・ロシア語からの借用も見られます。
歴史と分布
ドゥンガン語の話者は19世紀後半の内乱や移住を契機に中国北西部から中央アジアへ移ったホイ族の子孫です。現在はカザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、ロシア(主に中央アジア周辺地域)など旧ソ連圏にコミュニティがあり、また新疆ウイグル自治区内にも話者が存在します。各地で周辺言語(カザフ語・キルギス語・ロシア語など)と接触し、語彙や発音に地域差が生じています。
書記体系(キリル文字)
ソ連時代の言語政策の影響で、ドゥンガン語は漢字ではなくキリル文字に基づく正書法を採用しました。これにより中国語系言語としては特殊な文字表記体系となっています。キリル表記は話し言葉の音を表すために設計されていますが、声調は必ずしも明示的に表記されない場合が多く、読み方や意味の判別は文脈や慣用によるところが大きいです。
音声・文法の特徴
- 声調を持つが、北京官話(標準語)とは声調の体系や実現がやや異なることがある。
- 語順は基本的にSVO(主語‐動詞‐目的語)で、中国語の文法構造とよく似ている。
- 助詞やアスペクト系の表現など、形式的には漢語的な要素を保持する一方で、語形変化は少なく分析的である。
- 発音面では移住・接触歴による影響で、周辺のトルコ系言語やロシア語の音韻を取り入れた変化が見られる。
語彙と借用語
ドゥンガン語の語彙は大部分が北方漢語(北京語系)に由来しますが、次のような特徴があります。
- イスラム関係の語:宗教用語や文化語にはアラビア語・ペルシャ語の借用語が多く残る。
- 中央アジアとロシア語の影響:居住地周辺のカザフ語・ウズベク語・ロシア語からの借用語が日常語にも混入している。
- 古語の保存:標準中国語で消えてしまった語や古い発音形が保存されている例があり、これが相互理解に影響することもある。
方言差と相互理解
ドゥンガン語内部にも地域差があり、中央アジア各地や中国内の話者間で発音や語彙に違いが見られます。それでも基本的には北京語系の系譜を共有するため、標準中国語話者との間で語彙や発音の違いはあってもある程度の相互理解が可能です。ただし、借用語や固有の慣用表現、発音上の差異はコミュニケーションの障壁になることがあります。
現状と保存の課題
ドゥンガン語は話者数が限られるため、言語維持・継承の面で課題があります。都市化やロシア語・現地国の公用語、さらには標準中国語の影響により若年世代でドゥンガン語使用が減少する傾向が報告されています。一方でコミュニティ内では学校や宗教活動、家庭内での伝承が続き、言語と文化の保存に努める動きもあります。
参考・学習のポイント
- ドゥンガン語を理解するには、北京語系の基礎知識が役立ちますが、キリル表記と借用語の習得も必要です。
- 地域ごとに語彙・発音が異なるため、学ぶ際は学習対象となるコミュニティの特色を確認するとよいでしょう。
- 言語学や民族学の文献、現地でのフィールドワーク記録、コミュニティが発行する教科書や資料が有用です。
質問と回答
Q:ダンガン語とは何ですか?
A:ダンガン語は、ダンガン族の母国語です。
Q: ダンガン族とは誰ですか?
A:ドゥンガン族は旧ソ連と新疆の地域に住む民族で、回族の末裔である。
Q:屯田兵は自分たちの言語を何と呼んでいるのですか?
A:屯田兵は自分たちの言語を「回族語」と呼んでいます。
Q:敦煌語は何をベースにしているのですか?
A:敦煌語は、甘粛省と陝西省の方言に基づく標準中国語の娘語である。
Q:甘粛方言と陝西方言の話者は、敦煌語でお互いを理解することができますか?
A:はい、甘粛方言と陝西方言の話者は、敦煌語ではほぼ理解しあえます。これを「相互理解性」といいます。
Q:中国語と似ているところはありますか?
A:はい、中国語と同じように、敦煌語は調性・分析性ともにあります。
Q:中国語の文字とどう違うのですか?
A:漢字ではなく、キリル文字で表記されます。また、語彙にも違いがあり、アラビア語やペルシャ語の借用語が多く、標準中国語ではもう使われていない用語もあります。
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