エコゾーン(= 生物地理学的領域)は、地球表面を大規模に区分する生物地理学上の単位で、動植物の歴史的・進化的分布に基づいて設定されます。エコゾーンは、長い時間をかけて相対的に隔離された結果として独自の生物群集や高い固有種比率を持つ広域を指し、海洋、広大な砂漠、高い山脈などの地質学的障壁が境界となって各エコゾーンを分けています。

エコゾーンの意義と特徴

エコゾーンは、その内部に含まれる動植物の進化史(系統的なつながりや固有性)によって特徴づけられます。したがって、気候や植生の見た目が似ていても、進化史が異なれば別のエコゾーンに属することがあります。たとえば中央アメリカの熱帯林とニューギニアの熱帯林は植生タイプが似ていても、そこに生きる動植物の系統や進化史は大きく異なります。

この点で、エコゾーンはしばしば気候や植生に基づいて地表を区分するバイオーム(生物群系)とは区別されます。原文中のリンクはその違いを示すために バイオマスとは区別 とありますが、本稿では生物群系(バイオーム)と区別される概念であることを念頭に置いてください。バイオームは気候や土壌条件により類似したクライマックス植生で特徴づけられる分類です。一つのエコゾーンには複数のバイオームが含まれます。

形成要因

世界のエコゾーンの分布パターンは、主に以下の要因で形成されました:

  • プレートテクトニクス(大陸移動)による隔離と衝突(プレートテクトニクスが世界の陸地を再配分してきた過程)
  • 海面変動や陸橋(例:ベーリン陸橋、パナマ地峡の形成)による生物の交流と隔離
  • 氷期・間氷期サイクルによる分布の北上・南下と断片化
  • 大規模な地形障壁(山脈、砂漠、深海など)による移動制限

代表的なエコゾーンと特徴(国際的に多く用いられる分類例)

分類や名称には研究者や機関による差異がありますが、一般に次のような区分が広く参照されます。

  • ネオトロピカル(新熱帯):南アメリカ・中央アメリカ。高い種多様性と独自の哺乳類・鳥類群が豊富。
  • ネアークティック(北アメリカ):北アメリカ大陸。氷河期の影響を強く受けた成因。
  • パラエアークティック(旧北区):ユーラシア北部・北アフリカ。広大な温帯・寒帯を含む。
  • アフロトロピカル(アフリカ熱帯・サブサハラ):アフリカ熱帯域。独特の大型哺乳類群やサバンナ生態系。
  • インドマレー(オリエント):南アジア・東南アジア(スンダランド等)。アジア的な系統と島嶼による複雑な分布。
  • オーストララシアン(オーストラリア・ニューギニア):有袋類や単孔類が優占する独自の動物相。
  • オセアニア(太平洋島嶼):ハワイ諸島やポリネシアなどの遠隔島嶼。高い固有性と脆弱性。
  • 南極:南極大陸と周辺海域。極限環境に適応した生態系。

分類の揺らぎと用語

「エコゾーン」という用語は比較的新しく、歴史的には「王国(realm)」「州(region)」「地域」など異なる用語が同義的に用いられてきました。研究者や機関(例:Udvardy、WWFなど)によってエコゾーンの数や境界の引き方が異なるため、用いる分類体系を明示することが重要です。J. Schultzは彼のバイオームの分類システムの文脈で「エコゾーン」という語を用いています。

保全との関わり

エコゾーンの概念は生物多様性保全を考える際に重要です。大陸規模での進化史や生物群集の違いを理解することで、保全優先地域の選定や外来種管理、気候変動への対応策の策定に役立ちます。多くの保全活動では、エコゾーンを基盤にしてより詳細な「生態系区(エコリージョン)」や「生物群系(バイオーム)」を重ね合わせ、階層的に保全計画を作成します。

要点まとめ

  • エコゾーンは、進化史と地理的隔離に基づく地球規模の生物地理学的区分である。
  • バイオーム(生物群系)とは異なり、系統的なつながりや固有性に重点を置く。
  • プレートテクトニクスや地形、気候変動がエコゾーンの形成に大きく寄与した。
  • 分類には諸説あり、用途に応じて適切な体系を選ぶ必要がある。