地質学エポック(世)とは:定義・時代区分とIUGSの役割
地質学エポック(世)の定義と時代区分をわかりやすく解説。古新世〜完新世の特徴や、命名と区分を担うIUGSの役割まで詳述。
定義:地質学における「エポック(世)」とは
地質学におけるエポック(日本語では「世」)は、地質時間の階層で「時代(Period)」の下位にあたる区分を指します。エポックは、地層や化石記録、気候や海面変動、化学的な指標などに基づいて区切られ、さらに細かい単位である年代(age)/ステージ(stage)に分割されます。エポックは地球の環境や生物相の変化を理解するために重要な時間幅を提供します。
地質時代の階層(上位から下位へ)
- 宙(Eon)/代(Supereon)(最上位)
- 代(Era)
- 紀(Period)/時代
- 世(Epoch)/エポック
- 階(Age)/ステージ(Stage)(最下位)
この階層の中で「世(Epoch)」は、日常的な地質学研究や古気候・古生物の議論で頻繁に用いられる単位です。
新生代(Cenozoic)における世の例
ご提示のとおり、新生代はかつての区分である古第三紀と新第三紀、および第四紀といった時代(Period)に分けられてきました。これらの時代はさらに以下のようなエポック(世)に細分されます:
- 古新世(Paleocene、約66–56 Ma)
- 始新世(Eocene、約56–33.9 Ma)
- 漸新世(Oligocene、約33.9–23.03 Ma)
- 中新世(Miocene、約23.03–5.333 Ma)
- 鮮新世(Pliocene、約5.333–2.58 Ma)
- 更新世(Pleistocene、約2.58–0.0117 Ma / 約2.58–11.7 ka)
- 完新世(Holocene、約0.0117 Ma / 約11.7 ka–現在)
(Ma=百万年前、ka=千年前)
用語の変遷:第三紀(Tertiary)と第四紀(Quaternary)
かつて広く使われていた第三紀(Tertiary)は古第三紀と新第三紀を包含する用語でしたが、現在ではあまり正式に用いられません。代わりに新生代の紀(Period)や世(Epoch)といった細分化が標準です。最後の時代は歴史的に第四紀と呼ばれ、第四紀(Quaternary)は特に氷期サイクルや人類進化に関する研究で重要視されてきました。
IUGSと国際層序学委員会(ICS)の役割
こうした地質時代や世の正式な名称、境界の設定は国際的な基準を必要とします。これらの決定は国際地質科学連合(IUGS)の下で活動する国際層序学委員会(International Commission on Stratigraphy:ICS)が主に行っています。ICSは各境界の定義、公式化、GSSP(Global Boundary Stratotype Section and Point)やGSSA(Global Standard Stratigraphic Age)に関する作業を統括し、学術的な提案を審査・勧告してIUGSが最終承認します。
境界の定義方法:GSSP(ゴールデンスパイク)とGSSA
- GSSP(Global Boundary Stratotype Section and Point):堆積岩の連続した露頭や海底コアの特定点を境界として公式に指定する方法。特定の化石第一出現(FAD:First Appearance Datum)や磁気逆転、化学的シグナル(同位体イベント)などを基準に決定され、俗に「ゴールデンスパイク」と呼ばれます。
- GSSA(Global Standard Stratigraphic Age):先カンブリア時代のように明瞭な連続堆積層が得られない場合に、暦年(年齢)で境界を定める方式。
これらの方式により、研究者間で共通の時間枠を使って比較・議論ができるようになります。
現在進行中の議論:人新世(Anthropocene)など
近年では、人類活動が地球環境に大きな影響を及ぼしていることから、人新世(Anthropocene)を正式なエポックとして認めるかどうかが活発に議論されています。いくつかの提案は20世紀中葉(放射性核種やプラスチック、炭素同位体シグナルの変化など)を開始点とするものですが、2024年時点ではIUGS/ICSによる公式採択は行われていません。Anthropoceneの提案は、科学的根拠の厳密さ、境界の具体化(GSSP に相当する指標の設定)などが今後の検討課題です。
まとめ
- エポック(世)は地質時間の「紀」の下位単位で、地球の環境変化や生物史を細かく記述するための重要な区分です。
- 古第三紀・新第三紀といった古い分類に代わり、現在は古新世、始新世、漸新世、中新世、鮮新世、更新世、完新世などのエポックが用いられます。
- エポックやその境界は、IUGSおよびその下部組織である国際層序学委員会(ICS)が、GSSPやGSSAを通じて国際的に定め、承認しています。
- 人新世のような新たなエポックの提案は科学的検証と合意形成が必要で、現在も議論が続いています。
質問と回答
Q:地質学のエポックとは何ですか?
A:地質学におけるエポックとは、ある時代の一部分のことです。
Q: 新生代はどのように分割されているのですか?
A:新生代は、古第三紀、新第三紀、第四紀の3つの時代に分けられる。
Q:新生代の各時代はどのようなものですか?
A:新生代は、暁新世、始新世、漸新世、中新世、鮮新世、更新世、完新世に分かれます。
Q:地質学でいう第三紀とは何ですか?
A:第三紀とは、現在では非推奨ですが、かつては古第三紀と新第三紀を含む言葉でした。
Q:新生代の最後の時期が「第四紀」と呼ばれるのはなぜですか?
A:第三紀という言葉が使われなくなり、古第三紀と新第三紀を一緒にしなければならなくなったので、新生代の最後の時期を第四紀と呼んでいます。
Q:地層やステージの名称は誰が決めているのですか?
A:国際地質科学連合の国際層序委員会が、地層やステージの名称を決定しています。
Q:国際地質科学連合の使命は何ですか?
A: 国際地質科学連合の使命は、国際協力と情報交換を促進することによって、地質科学の研究を育成し、促進することです。
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