イロコイ族(発音:/ˈɪrəkwɔɪ/、ハウデノサウニーとも呼ばれる)は、英語で「People of the Longhouse(ロングハウスの人々)」を意味し、北アメリカの先住民の一群です。イロコイ語系の諸民族が、現在のニューヨーク州中部から北部を中心に居住していた集団としてまとまり、16世紀以前からやがてイロコイ同盟(Haudenosaunee Confederacy)、別名「平和と力の同盟(Great Law of Peace)」と呼ばれる政治的・文化的連合を形成しました。最初の同盟は5つの国で構成されており、そのため「5つの民族(Five Nations)」と呼ばれていましたが、1722年にタスカローラ国(Tuscarora)が加わることで6ネイションズ(Six Nations)として知られるようになりました。今日でも、ニューヨーク州シラキュース近くのオンヨンダガ(Onondaga)を拠点とするグランドカウンシルには、イロコイの様々な氏族を代表する50人のサシェムが集まっています。
歴史の概略
ヨーロッパ人が北米に到着した当初、イロコイ族は現在のアメリカ北東部に広く住んでおり、多くは現在のニューヨーク州北部、ハドソン川の西側や、フィンガーレイクス地域に居住していました。植民地時代を通じてイロコイは交易や軍事面で重要な役割を果たし、イギリスやフランス、後のアメリカ合衆国との同盟や対立を経験しました。特にアメリカ独立戦争では勢力が分かれ、多くのイロコイ諸国がイギリス側についたために敗戦後に土地を失い、居住地の移動やカナダへの移住が進みました。現在、イロコイの人々は主にニューヨークとカナダに暮らしています。
構成と政治制度
イロコイ同盟(イロコイ連合)は、各国(ネイション)と氏族(クラン)から成り、伝統的に母系社会(母系制)です。主な構成国は次のとおりです:
- モホーク族(Mohawk)
- オネイダ族(Oneida)
- オノンダガ族(Onondaga)
- カユガ族(Cayuga)
- セネカ族(Seneca)
- タスカローラ族(Tuscarora) — 1722年に参加し、6ネイションズとなる
各氏族には氏族母(Clan Mother)と呼ばれる女性の長老がおり、サシェム(族長・首長)を選出・罷免する権限を持ちます。グランドカウンシルは同盟全体の意思決定機関であり、サシェムたちが集まって会議(議決・儀礼)を行い、条約や戦争、外交など重要事項を協議します。大評議会で用いられるのは、伝統的な儀式・言説(例:感謝の言葉)や伝承に基づく合意形成の方法です。
文化と社会
「ロングハウス」は文字どおりの住居形態であると同時に、社会構造の比喩でもあります。ロングハウスは複数の家族が一つの屋根の下で暮らす共同住宅で、イロコイの政治・社会観を象徴します。氏族は通常、クマ、オオカミ、カメなどの動物名で表され、氏族を超えた婚姻規則や相互扶助のネットワークを形成します。言語はイロコイ諸語で、各国に独自の方言・言語変種があります。
スポーツや宗教・儀礼も文化の重要な要素です。例えばラクロスはイロコイ発祥の伝統競技とされ、現在も文化的・宗教的意味を持ちながら行われています。
近代〜現代の状況
イロコイ同盟は学者の間で「リーグ(儀式的・文化的側面)」と「コンフェデラシー(政治的・外交的連合)」を区別して論じられることがあります。ヨーロッパによる植民地化以降、同盟は外部との条約や領土紛争、移住を経験しつつも、文化的制度やグランドカウンシルを通じて現在まで存続しています。盟約者団(特定の同盟構成国群)が、アメリカ独立戦争でイギリスと同盟したために敗北し、解散や変化を余儀なくされた国々もありましたが、全体としてのハウデノサウニーの伝統的なガバナンスは生き続けています。
今日では、カナダのオンタリオ州にある「Six Nations of the Grand River(グランドリバー居留地)」など、歴史的に移住したコミュニティが存在し、土地権や主権を巡る交渉や法的な争いが続いています。また文化復興、言語再興、教育・保健の充実、そして国際的な自己決定権の主張(例:ハウデノサウニーのパスポート使用など)といった動きも活発です。
補足(言語と用語)
「イロコイ」は英語の "Iroquois" を日本語表記したもので、近年当事者たちは自らを Haudenosaunee(ハウデノサウニー)と呼ぶことを好む場合が多いです。Haudenosaunee は「ロングハウスの人々」を意味し、同盟の憲章ともいえる「平和と力の盟約(Great Law of Peace)」に基づく政治・社会秩序を強調します。
以上はイロコイ同盟の概要です。より詳しい地域ごとの歴史や各国の伝承、現代の法的問題については、地域史や当事者の発表資料を参照すると理解が深まります。



