キネトプラスト類(キネトプラストイド)とは|特徴・分類と代表的寄生種
キネトプラスト類の特徴・分類と代表的寄生種(トリパノソーマ、リーシュマニア等)を図解でわかりやすく解説。感染症研究の入門ガイド
キネトプラストイドは、単細胞の鞭毛虫真核生物に属するグループで、ヒトや他の動物に対して重要な寄生性種を多く含む一方で、土壌や水生環境に生息する自由生活性種も存在します。これらは一般にユウグウノツカイ動物門に所属すると説明されることが多く、細胞構造や遺伝子構成に特徴があります。
特徴
キネトプラストイドの最も顕著な特徴は、細胞内に存在する単一の大型ミトコンドリアの中に位置する、DNAを含む特殊な顆粒である「キネトプラスト」です。キネトプラスト(kDNA)は多数の環状DNA(マキシサークルとミニサークル)からなる網目構造を取り、遺伝情報の編集(RNA編集)やミトコンドリア機能に重要な役割を果たします。キネトプラストは通常、鞭毛(基底体)の基部近くに位置します。
その他の形態学的特徴としては、鞭毛の存在(単鞭毛または二鞭毛)、鞭毛が細胞表面に沿って走る「波状膜(undulating membrane)」を持つものがあること、単一の核を有することが挙げられます。運動や宿主への付着、栄養摂取の仕方は種や生活環によって多様です。
分類と生活環
伝統的には、キネトプラスト類は二鞭毛を持つボドニッド類(Bodonidae)と、一鞭毛で主に寄生性を示すトリパノソーマ科(Trypanosomatidae)に大別されます。記録によれば、キネトプラスト類は1961年にHonigbergによってまとまって定義されました。
- ボドニッド類(自由生活性):例えばBodo属は細菌を捕食して生活する種群で、水環境や土壌中で重要な微生物捕食者です。これらは通常宿主を必要としない自由生活型です。
- トリパノソーマ科(寄生性):多くの人獣共通・人獣共通性の病原体を含み、昆虫などの節足動物を媒介者として動物や人に感染します。寄生形態は単生(昆虫のみ)から複雑な多段階の生活環(昆虫→脊椎動物)まで様々です。
トリパノソーマ科の中には、単一宿主(昆虫内で完結する)種と、二宿主(昆虫と脊椎動物を交互に行き来する)種があります(それぞれ単生(monoxenous)と複生(dixenous))。形態的には、プロマスティゴート、エピマスティゴート、トリパノモスティゴート、アマスティゴートなど、生活環に応じた形態の変化を示す種が多いです。
代表的な寄生種と疾病
トリパノソーマ科にはヒトや動物に重篤な疾患を引き起こす属が含まれます。主なものは次の通りです:
- Trypanosoma brucei:アフリカ睡眠病(アフリカ人トリパノソーマ症)の原因。ツェツェバエ(Glossina属)によって媒介され、血液・中枢神経系に侵入する。抗原変異を通じた免疫逃避で知られます。
- Trypanosoma cruzi:シャーガス病(Chagas病)の原因。主に南米で、トリアトミン(吸血性)イエダニ等の刺咬により感染し、慢性期に心筋や消化管障害を引き起こすことがあります。
- Leishmania:リーシュマニア症(皮膚型や粘膜型、内臓型)を引き起こし、サンドフライ(ヒメダニやハエの一種)により媒介されます。寄生部位や病態は種ごとに多様です。
- Crithidia:昆虫に寄生することが多い属で、養蜂や昆虫学の分野で注目されます。
- Cryptobia:魚類の鰓や血液に寄生する種があり、養殖業において問題となることがあります(例:エラ寄生)。
診断・治療・防除
診断には顕微鏡による血液・組織塗抹の観察、血清学的検査、分子生物学的手法(PCR)などが用いられます。治療薬は疾患や病期によって異なり、例えばアフリカ睡眠病にはスルファミン類やエフロルニシン、ベンジダゾールやボルファミンなどが場面によって使用されます。シャーガス病にはベンジダゾールやニフルチモックス、リーシュマニア症にはアンホテリシンB、ミルテホシンなどが用いられますが、副作用や耐性の問題もあるため、専門の医療機関での診断・治療が必要です。
予防は主に媒介昆虫の制御、居住環境の改善、血液製剤や臓器移植における検査、衛生管理などが中心です。
生態学的・研究上の重要性
キネトプラスト類は、人獣共通感染症としての公衆衛生上の重要性だけでなく、細胞生物学や分子生物学の研究対象としても重要です。特にkDNAの独特な構造とRNA編集機構、抗原変異による免疫逃避機構(例:T. bruceiの可変表面糖タンパク)などは、基礎研究および創薬研究における注目点です。
また、自由生活性のボドニッド類は微生物群集の制御や物質循環において役割を果たしており、淡水生態系や土壌生態系の機能理解にも寄与します。
総じて、キネトプラスト類は形態・生活史・分子機構の多様性に富み、医学・獣医学・生態学・基礎生物学の各分野で広く研究されているグループです。
質問と回答
Q: キネトプラストイドとは何ですか?
A:単細胞の鞭毛真核生物の一種で、人間や動物の重大な病気の原因となる寄生虫や、土壌や水圏に存在する形態が含まれます。
Q: キネトプラストの主な特徴は何ですか?
A:キネトプラストは、細胞の鞭毛(基底体)の根元にある1つのミトコンドリア内にDNAを含む顆粒が存在することが主な特徴です。
Q: 誰が鞭毛虫目キネトプラスト科を定義したのですか?
A: 1961年にHonigbergが鞭毛虫目Kinetoplastidaと定義しました。
Q: 伝統的にキネトプラスト目はどのように分類されていますか?
A: 伝統的に、キネトプラスト目は二鞭毛虫のボドン科と単鞭毛虫のトリパノソマト科に分けられます。
Q: トリパノソーマ科にはどの属が含まれますか?
A: トリパノソーマ科には、Trypanosoma brucei、Trypanosoma cruzi、Leishmania、Crithidia、Cryptobiaなど、寄生のみを目的とする属が含まれています。
Q: キネトプラスト寄生虫が引き起こす病気にはどのようなものがありますか?
A:眠り病はTrypanosoma brucei、シャーガス病はTrypanosoma cruzi、リーシュマニア症はLeishmaniaによって引き起こされます。
Q:ボドとは何ですか?
A:ボドは自由生活する代表的なボドン類で、細菌を餌とする様々な種があります。
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