リーシュマニア症またはリーシュマニア症とは、リーシュマニア属の原生動物の寄生によって引き起こされる病気である。主にサンドフライ(吸血する小型のハエ、学名ではPhlebotomus属やLutzomyia属など)などの特定の種類のハエに咬まれることで感染する。感染すると、主に皮膚や粘膜、あるいは全身(内臓)に病変を引き起こす。感染後の潜伏期間は数週間から数か月、まれにそれ以上続くことがある。
各型の特徴(わかりやすく)
皮膚型(Cutaneous leishmaniasis):皮膚に赤い丘疹やしこり、やがて中央が潰瘍化する無痛または軽度痛みのある潰瘍ができる。自然治癒することもあるが、治癒後に目立つ瘢痕が残る場合がある。病原種や地域によって症状の出方が異なる。
粘膜皮膚型(Mucocutaneous leishmaniasis):主に鼻腔・口腔・咽頭の粘膜を侵し、組織の破壊を起こす。放置すると鼻や口の構造が著しく損なわれることがあり、しばしば皮膚型から数年後に発症することがある。南米におけるL. braziliensisなどが代表的。
内臓型(Visceral leishmaniasis, kala-azar):発熱、体重減少、倦怠感、脾腫・肝腫、貧血や白血球・血小板の低下(骨髄抑制)を引き起こす。治療しないと致命的となることがある。
原因と危険因子
ヒトにおけるリーシュマニア症は、20種以上のリーシュマニアによって引き起こされる。感染は主にサンドフライの吸血によるが、まれに輸血や母子感染、針刺しなどで広がることが報告されている。危険因子としては、貧困、栄養失調、森林伐採、都市化や人口移動、衛生環境が悪いことなどが挙げられる。免疫抑制状態(HIV感染や免疫抑制薬の使用など)は重症化や再発のリスクを高める。
診断
感染の確定には病変部位からの検体(皮膚の擦過や生検、潰瘍底の擦り傷、内臓型では骨髄や脾臓・肝臓の穿刺吸引液)を用い、顕微鏡で寄生虫を同定する方法が古典的かつ直接的である(原文:顕微鏡下で寄生虫を識別することで診断することができます)。内臓型は血液検査で診断できることがあるが、血清学的検査(抗体検査:rK39など)や分子生物学的検査(PCR)も広く用いられる。培養や遺伝子型同定は治療方針決定や疫学調査に役立つ。
治療
治療は発症地(地域)、リーシュマニアの種類、患者の年齢、妊娠の有無、免疫状態などによって選択される。早期の適切な治療は合併症や伝播の防止にも重要である。原文にあるように、内臓型にはリポソーム・アムホテリシンB、五価アンチモニアル(ソディウム・スチブオグルコンやアンチモン酸グルコシドなど)やパロマイシンの組み合わせ、ミルテフォシンなどが用いられることがある。皮膚型には局所療法や全身療法としてパロマイシン、ミルテフォシン、あるいは場合によっては局所の外用や熱療法が用いられる。フルコナゾールやペンタミジンが有効とされることもあるが、薬剤感受性は種や地域で異なり、副作用(腎障害、心毒性、肝機能障害、膵炎など)に注意して投与・経過観察を行う必要がある。HIV感染者など免疫抑制患者では再発しやすく、長期の維持療法が必要になることがある。
予防と流行対策
リーシュマニア症の予防は主に媒介昆虫への対策と宿主(ヒト・動物)の保護に分かれる。原文の通り、リーシュマニア症は殺虫剤で処理されたネットの下で寝ることで部分的に防ぐことができる。屋内残留噴霧(IRS)や環境整備による繁殖地の除去、個人用防虫スプレーや防虫ネットの使用、夜間の屋外活動を避けるなどが有効である。もう一つの方法は、殺虫剤を使用してサンドバエを殺すこと(ベクトルコントロール)であり、地域保健プログラムで実施される。犬などの動物が重要な保 reservoir となる地域では、動物の検査・治療やワクチン、犬用の防虫剤コートなども対策に含まれる。さらに、感染者の早期診断と治療は流行抑制に寄与する。
疫学(概略)
2014年現在、約1,200万人が約98カ国で感染していると推定されている。毎年約200万人が新たに感染し、毎年2万人から5万人がこの病気で亡くなっていると報告された。アジア、アフリカ、中南米、南ヨーロッパの約2億人がこの病気が流行している地域に住んでいる。世界保健機関(WHO)は、この病気を治療するために、いくつかの薬の割引を受けているなど、公衆衛生対策を進めている。流行の多い国や地域では、保健体制の強化と地域特有の対策が重要である。
動物宿主と媒介昆虫
この病気の原因となる寄生虫は、他の哺乳類にも感染する。原文にもあるように、この病気は、犬、猫、げっ歯類、牛、馬にも記載されている。特に犬はL. infantum(旧L. chagasi)などの主要な動物reservoirであり、犬からヒトへの感染が問題となる地域がある。哺乳類に加えて、寄生虫は刺されて寄生虫を広げる昆虫(主にサンドフライ)を必要とするため、動物・昆虫・人の関係を考えた総合的な対策(One Healthアプローチ)が有効である。
注意点
- HIVとの共感染はリーシュマニア症を重症化・再発しやすくするため、両疾患の同時管理が必要である。
- 診断・治療方針は地域の流行種や薬剤耐性状況に左右されるため、医療機関での専門的評価が重要である。
- 旅行者は流行地域への渡航前に予防措置や現地での行動注意を確認しておくとよい。
リーシュマニア症は放置すると重篤化することがあるため、皮膚の持続する潰瘍や発熱・脾腫などがある場合は早めに医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けることが大切である。

