ラグランジュ点とは:L1〜L5の定義・安定性と宇宙での利用例
ラグランジュ点のL1〜L5の定義・安定性と宇宙利用例をわかりやすく解説、観測衛星やトロイ群の役割まで紹介。
ラグランジュ点は、軌道上で、二つの大きな天体の重力と回転に伴う遠心力が釣り合うために、比較的安定して小さな物体が留まれる点です。典型的な二体系の例としては、地球と太陽、あるいは月と地球の系が挙げられます。
ラグランジュ点は、小さな質量を持つ物体(例えば、人工衛星など)が相対的に安定して存在できる5つの場所を指します。そこでは、二つの大きな天体の引力と遠心力(運動に伴う見かけの力)がバランスし、小さな物体は多かれ少なかれ定位置を保ちます。そのため塵雲や小惑星、人工衛星などが集まりやすくなります。
この概念は、三体問題の特殊解を研究した数学者のジョセフ・ルイ・ラグランジュにちなみ名付けられました(ラグランジュは1772年に関連する解を示しました)。歴史的にはオイラーが直線状の解(後のL1–L3に相当)を扱い、ラグランジュは三角形配置(L4・L5)を導入しました。
L1〜L5 の位置と安定性
- L1:二つの天体を結ぶ直線上で、小さい方の天体(例:地球)と大きい方(例:太陽)の間に位置します。太陽光や粒子流の観測に適した場所です。
- L2:同じ直線上で、小さい方の天体の外側(大きい方と反対側)にあります。宇宙望遠鏡など、地球からの遮蔽が少なく安定した視野が得られるため観測用途に人気です。
- L3:二つの天体を結ぶ直線上で、大きい方の天体の反対側に位置します(例:地球-太陽系では太陽の向こう側)。系全体の中心から見て反対側にあるため、観測や通信には向きませんが理論上の解として重要です。
- L4・L5:二つの天体と頂点をなす正三角形の位置にあり、前方(L4)と後方(L5)に配置されます。これらは小さな摂動に対して安定であり、物質を捕捉してトロイ群(トロヤ群)を形成します。
L1〜L3(いわゆる「コリニア点」)は一般に「準安定(不安定)」で、微小なずれがあればそのまま離れていく性質があります。そのためこれらの点に置かれた人工衛星は定位置を保つために定期的な軌道修正(ステーショニング)用の推進を必要とします。一方、L4とL5は系の質量比条件を満たす場合に安定となり、ずれが生じても重力と遠心力の組合せで元の近傍に戻される傾向があります。厳密には、制限三体問題においてL4・L5が線形安定となる条件は質量比がある閾値(μ < 約0.03852)を満たすことです。太陽-地球系や地球-月系はこの条件を満たしているため、L4・L5は安定化されやすい点です。
利用例と実際のミッション
NASAは、太陽-地球系のラグランジュ点を観測・ミッションに積極的に利用しています。
- 太陽観測(L1):L1は地球と太陽の間に位置し、太陽を常に向いた観測ができます。太陽フレアや太陽風の早期観測に適しており、代表例としてSOHOやDSCOVR、ACEなどの衛星がL1付近に配備されています(太陽の活動監視や宇宙天気予報に利用)。フレアを観測する用途に最適です。
- 宇宙望遠鏡(L2):L2は地球の影にならず、かつ地球からの視角が安定しているため、冷却や遮蔽を効率的に行える観測所になります。宇宙望遠鏡に適しており、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は発射後に太陽-地球L2近傍に配置されました。地球からの距離はおよそ150万km(約93万マイル)程度です。また、Gaia、WMAP、プランクなどもL2を利用しています。
- 地球-月系のLagrange点:人間の月探査構想(例:ゲートウェイ計画)では、地球-月系のL1やL2付近を宇宙ステーションや中継拠点、補給基地として利用する計画があります。これらは月面往復の中継や軌道上組み立ての利点をもたらします。
- 将来の利用:ラグランジュ点は燃料補給ステーション、観測所、深宇宙探査の補助拠点、さらには小惑星資源の集積場としても期待されています。
トロイ小惑星と自然の占有例
L4とL5は物質を長期間捕捉しやすく、太陽系では多くの「トロイ小惑星(トロイ群)」が見られます。特に木星のL4・L5には数万個規模のトロイ群が存在します。地球にも少数のトロイ小惑星(例:2010 TK7)が確認されており、火星やその他の惑星にもトロイが見つかっています。これらの小惑星群は、長期にわたって安定な軌道を保つため、天文学的にも興味深い研究対象です。トロイの木馬小惑星として知られています。
補足:実務上の注意点
- L1〜L3は理想的な点そのものは不安定なため、実際の衛星は「ハロー軌道」や「リサージェント軌道」といった周回軌道で運用され、そこからの微調整(ステーショニング)が必要です。
- L2のような点は地球から遠いため、通信遅延や救援・修理の困難さなど運用上の制約がありますが、天文観測の利点がそれを上回る場合が多いです。
- ラグランジュ点は二体問題の近似に基づく概念であり、実際の太陽系では惑星間の摂動や太陽系の多体効果を考慮して詳細な軌道設計が行われます。
ラグランジュ点は、力学的な魅力と実用的な利点を兼ね備えた場所であり、観測・探査・将来の宇宙インフラ構築の重要な候補地になっています。

重力井戸を持つラグランジュ点

ラグランジュ点、2つのオブジェクトの場合
質問と回答
Q:ラグランジュポイントとは何ですか?
A:ラグランジュポイントとは、軌道上の大きな天体の近くにある安定点のことです。2つの大きな天体が互いに公転するとき、第3の天体が沈む場所があり、2つの大きな天体の重力と運動力が釣り合って、小さな天体は多かれ少なかれ安定した状態を保つことができるのです。
Q:ラグランジュポイントを発見したのは誰ですか?
A:この現象は、数学者ジョセフ・ルイ・ラグランジュが1772年(人工衛星が軌道に乗るよりずっと前)に書いた論文にちなんで命名されました。
Q:ラグランジュポイントはいくつあるのでしょうか?
A:L1、L2、L3、L4、L5と呼ばれる5つのポイントがあります。
Q:ラグランジュポイントはすべて安定しているのでしょうか?
A:最初の3つ(L1、L2、L3)は、衛星の位置が少しずれると、そこから落ちてしまい、燃料を使わないと戻ってこられないので、準安定と呼ばれています。一方、L4とL5は、衛星の位置が多少ずれても、重力と遠心力で元の位置に戻ってくるという安定性があるとされています。
Q:これらの位置で、衛星はどのような軌道をとっているのでしょうか?
A:これらの場所では、人工衛星がハロー軌道を利用して太陽フレアを探すために太陽を観測したり、2021年12月25日に打ち上げられるジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のように、地球から約100万マイル(約150万km)離れた場所にある宇宙望遠鏡に利用することができるのです。
Q. このような場所には、どのようなものが自然に存在しているのでしょうか?
A: L4とL5は安定しているため、トロヤ群小惑星と呼ばれるチリ雲や小惑星を引き寄せています。トロヤ群小惑星は、小惑星をほとんど引き寄せない地球・太陽系のような小さな惑星よりも、大きな惑星に多く生息しています。
百科事典を検索する