Lycorhinus(しばしば「オオカミの鼻先」と訳される名)は、ヘテロドントサウルス科に分類される小型の鳥盤類恐竜の属である。南部アフリカで見つかった断片的な化石から知られ、三畳紀–ジュラ紀境界ごろに生息していた。Lycorhinus の最もよく知られる特徴は異歯性の歯列で、顎の前方には角質のくちばしがあり、その後方に単純なすりつぶし用の頬歯が並び、さらに上顎または下顎の前方には、犬歯のように大きく発達した歯がある。この複数の歯型の組み合わせは、鳥盤類における初期の摂食様式の変化を考えるうえで重要な分類群として Lycorhinus を位置づけている。
特徴
他のヘテロドントサウルス科と同様に、Lycorhinus はくちばし状の吻部と、その後方で分化した歯をあわせ持っていた。頬歯は植物質を切り裂く、あるいはすりつぶすのに適しており、前方の発達した歯は、誇示、種の識別、防御、またはときどき動物質を扱うために用いられた可能性がある。四肢の比率と骨盤の構造からは、小型で機敏な二足歩行の動物で、重い採食よりも素早い移動に適応していたことが示される。全体の形態は、主として草食でありながら、季節的あるいは機会的に雑食へ傾く余地もあったことを示唆する。
発見と命名
Lycorhinus に割り当てられる化石は、南部アフリカの堆積層、特に広義のカラハリ盆地に含まれる堆積物から、20世紀初頭に初めて報告された。初期の記載では、この特異な歯列が強調され、食性や行動についての議論が促された。材料がしばしば断片的であるため、この属は、新しい標本やヘテロドントサウルス科の比較研究が進むにつれて、再検討と再評価を受けてきた。
分類と系統関係
Lycorhinus は通常、ヘテロドントサウルス科に置かれる。このグループは、小型の基盤的鳥盤類からなるクレードで、異歯性の歯と、原始的特徴と派生的特徴が入り混じった構造によって特徴づけられる。ヘテロドントサウルス科は、初期鳥盤類の多様化や、恐竜における草食化の起源を理解するうえで重要な手がかりを与える。一般的な背景については、ヘテロドントサウルス科の概説や、属レベルの要約であるLycorhinusを参照するとよい。三畳紀および前期ジュラ紀の動物相を含む比較研究は、初期鳥盤類の中での位置づけや、中生代生態系における役割を明らかにするのに役立つ(前期ジュラ紀の動物相研究)。
古生物学と意義
すりつぶしに適した頬歯と、目立つ犬歯状の歯の組み合わせは、食性に柔軟性があったことを示している。基本的には草食で、時に昆虫やほかの小さな対象を補助的に食べていた可能性はあるが、直接的な胃内容物の証拠はない。南半球産の初期ヘテロドントサウルス科として比較的よく知られる属の一つである Lycorhinus は、歯の進化、摂食機構、そして三畳紀末の後に初期鳥盤類が変化する環境へどのように適応したかを研究するうえで貢献している。
- くちばし、頬歯、犬歯状の歯を組み合わせた特徴的な異歯性の歯列
- 機敏な動きに適した、小型でおそらく二足歩行の体つき
- 初期鳥盤類の進化と食性変化を研究するうえで重要
その解剖学的特徴の多くはいまだ十分には分かっておらず、分類上の細部には議論も残るが、Lycorhinus は初期恐竜の多様性と、鳥盤類の草食化に伴って生じた歯の形態の実験を示す示唆的な例であり続けている。