ミリ・ベン・アリはヒップホップ・ヴァイオリニストとして国際的に知られる演奏家・作曲家です。1978年にイスラエルで生まれ、テルアビブ近郊の小さな町で育ちました。幼少期からクラシック・ヴァイオリンの厳しい訓練を受け、いわゆる神童であったとされ、ユーディ・メニューインやアイザック・スターンら著名なヴァイオリニストからも高く評価されました。

16歳で単身でアメリカに渡り、当時は英語は全く話せませんでした。ニューヨークでは、トランペッターのウィントン・マルサリスをはじめとする多くのミュージシャンと出会い(彼らに支えられ)、それまでのクラシック一辺倒の世界から一歩踏み出して現代のR&B(リズム・アンド・ブルース)やヒップホップに興味を持つようになりました

キャリアの中での転機の一つが、カーネギーホールでの公演やテレビ出演でした。2001年1月にはラッパーのWyclef Jeanと共演し、その年の後半にはアポロでのショータイムでのテレビ出演が評価を高めました。彼女のセカンド・ジャズ・アルバムであるSong of The Promised Landには、ダンス・シングルのPeace in the Middle Eastや、ウィントン・マルサリスとの共演曲などが収録されています。

ポップ/ヒップホップ界との協働も多数あり、2004年にはラッパーのカニエ・ウェストと世界ツアーを行うなどして注目を集めました。また、2005年にユニバーサルからリリースされたアルバム『The Hip-Hop Violinist』や、スカーフェイスとアンソニー・ハミルトンをフィーチャーしたシングル「サンシャイン・トゥ・ザ・レイン」などの作品で幅広いリスナーに届き、現在では何百万枚ものレコードを販売し、「ヒップホップ・バイオリニスト」として知られるようになりました(同アルバムは2005年のリリース)。

彼女の音楽はクラシック、ジャズ、ヒップホップ、R&B、ワールドミュージックをミックスした独自のサウンドが特徴で、ヴァイオリンを用いてリード・メロディを奏でると同時に、編曲やプロダクションにも深く関わります。ヒップホップやR&Bのトラックにクラシカルなフレーズやジャズ的な即興を組み合わせることで、ジャンルの垣根を越えた表現を確立しました。

受賞歴としては、カニエ・ウェストの楽曲「Jesus Walks」に関わった功績により、2005年にグラミー賞(ベスト・ラップ・ソング部門)への寄与が認められ、トロフィーを得ています。このほかにも多数のアーティストとのコラボレーションや国際的なフェス出演を通じて高い評価を受けています。

現在も世界各地で公演を続けるとともに、ジャンルを横断する若手音楽家との共演や教育的な活動にも力を入れており、クラシックの技術とポップ/ストリート・カルチャーを結びつける先駆的な存在として多くのミュージシャンに影響を与えています。