マイコプラズマ・ジェニタリウムとは?特徴・ゲノム・感染・診断の概要
マイコプラズマ・ジェニタリウムの特徴・極小ゲノム、感染経路、症状、診断法を解説。臨床・研究向けに最新知見と検査ポイントをわかりやすく紹介。
マイコプラズマ・ジェニタリウムは、霊長類の生殖器や呼吸器などの繊毛上皮細胞に寄生する小型の細菌である。
既知のゲノムの中で最も小さいバクテリアの一つである。他に非常に小さい細菌としては、内生菌のCandidatus Carsonella ruddiiや、最近発見されたNanoarchaeumがある。既知の自由生活細菌の中で最も小さいのは、1.3 MbのPelagibacter ubiqueである。
特徴(形態・生理)
マイコプラズマ属は非常に小型で、形は可変(多形性)であるため顕微鏡で見ても識別が難しく、サイズは数百ナノメートル程度とされる。重要な特徴として、ペプチドグリカンからなる細胞壁を持たないため、形が不定であり、β-ラクタム系抗生物質(ペニシリン系など)は基本的に無効である。また、細胞膜にはステロール(コレステロール)を取り込む必要があり、一般の培地では増殖しにくく、培養には特殊条件を要する。
ゲノムと生物学的意義
マイコプラズマ・ジェニタリウムは自己複製する生物として非常に小さいゲノムを持ち、報告によって差はあるが、約58万塩基対(約0.58 Mb)で、数百個(おおむね約480〜500個)の遺伝子をコードするとされる。この小さなゲノムは、代謝能力や合成能力が限定されており、多くの必須栄養素や前駆体を宿主から取り込む依存的な生活様式を反映している。ゲノム最小化の研究や合成生物学(最小ゲノムの設計)のモデルとしても重要視されている。
感染経路と臨床像
- 主な感染経路は性的接触で、特に若年成人での性感染症(STI)の原因の一つである。
- 男性では非淋菌性尿道炎(NGU)の主要病原体として知られ、尿道からの分泌物や排尿時痛を引き起こすことがある。
- 女性では頸管炎、骨盤内炎症性疾患(PID)や不妊、早産との関連が指摘されているが、疫学的証拠は状況により強さが異なる。
- 直腸や咽頭にも感染することがあり、とくにMSM(男性間性行為を行う男性)集団での直腸感染が報告されている。
- 潜伏期間は一定せず、症状が無い(無症候性)場合も多く、無症状キャリアを介した伝播が起こる。
診断・検査
マイコプラズマ・ジェニタリウムは培養が困難で時間がかかるため、臨床では主に核酸増幅検査(NAAT; 例:PCR法)が標準的である。検体としては以下が用いられる:
- 男性:初尿(first-void urine)や尿道拭い(スワブ)
- 女性:膣・頸管スワブ、あるいは初尿
- 状況に応じて:直腸スワブ、咽頭スワブなど
また、治療方針を決めるために、マクロライド系耐性を決める23S rRNA遺伝子の変異(例:A2058Gなど)をPCRで検出する検査が行われることが増えている。培養および感受性試験は可能だが、臨床現場での利用は限られる。
治療と薬剤耐性
- 以前はマクロライド(例:アジスロマイシン)が第一選択とされてきたが、世界的にマクロライド耐性株の頻度が上昇している。
- マクロライド耐性が疑われる、あるいは治療不成功の場合はフルオロキノロン系(例:モキシフロキサシン)が用いられることが多い。ただし、フルオロキノロン耐性も報告されている。
- 耐性化に伴い、遺伝子変異の有無を確認した上で薬剤選択を行うことや、治療後のフォロー(症状の持続や検査による治癒確認)が推奨されることがある。
予防と公衆衛生上の注意点
- コンドームの使用は感染リスクを低下させるが、完全な防御ではない。
- 複数の性パートナーや新しいパートナーがいる場合には定期的な検査を検討する。症状がある場合は性パートナーにも検査・治療を行うことが推奨される。
- 無症候性感染のスクリーニングや治療に関しては国や地域のガイドラインに従うことが重要である。
まとめ
マイコプラズマ・ジェニタリウムは非常に小さなゲノムと細胞壁欠損という特徴を持ち、主に生殖器粘膜に寄生して性感染症の原因となることがある。診断は主にNAATで行い、治療にはマクロライドやフルオロキノロンが用いられるが、耐性化の問題が増大しているため、遺伝子変異を確認した上での治療選択とフォローが重要である。
起源と孤立
マイコプラズマ・ジェニタリウムは、1980年に非淋菌性尿道炎の男性2名の尿道から分離されたのが始まりです。M.genitaliumによる感染はかなり一般的で、無防備な性行為の際にパートナー間で感染する。抗生物質で治療することができます。性病におけるこの菌の役割については、まだ多くのことが解明されていません。
ゲノム
M. genitaliumは525の遺伝子を持っている。582,970塩基対の円形染色体に482のタンパク質コード化遺伝子が存在する。ショットガンシーケンスによるM. genitaliumゲノムの最初の研究は、1993年にPetersonによって行われた。その後、Fraserらによって配列決定が行われた。その結果、DNA複製、転写、翻訳、DNA修復、細胞輸送、エネルギー代謝に必要な遺伝子を含む、予測されるコード領域が470個だけ含まれていることがわかった。これは、インフルエンザ菌に次いで、これまでに配列決定された2番目の完全な細菌ゲノムであった。
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