偽典とは、よく知られた人物による著作であると称しながら、実際には別人が著した文書を指す。語は「偽りの書」を意味するギリシア語の語根に由来し、一般には、ヘレニズム期後期から西暦紀元初期の数世紀にかけて書かれた、多様なユダヤ教および初期キリスト教文献に用いられる。これらの書物は、族長、預言者、使徒、あるいは他の権威ある人物の作品として自らを提示し、その教えに威信と影響力を与えようとする。研究者は、その言語、神学、歴史的背景を検討して、おおよその成立事情を推定する。帰属著者については 帰属著者 を、正典としての旧約聖書との関係については 旧約聖書文献 を参照。

特徴とジャンル

偽典には、黙示的幻視、聖書物語の補足・拡張、遺訓文学(別れの説教)、天上への旅、知恵の言葉、シビュラの託宣など、さまざまなジャンルが含まれる。しばしば聖書の物語を敷衍したり再解釈したりし、倫理的または終末論的な教えを与え、尊敬される祖先の語り口を借りて新しい内容を伝える。共通する特徴には、偽名的な著者帰属、神学上の革新や強調、象徴的なイメージ、そして時に同時代の宗教的論争に応答しようとする姿勢がある。読者は、こうした文書が語調や目的の点で正典集とどのように異なるかを、聖書アポクリファ に関する解説を通して比較できる。

歴史的背景と展開

偽典の多くは、紀元前3世紀から紀元後3世紀にかけて活動したユダヤ人共同体や、これに連なる分派的集団と結びつけられるが、第二世紀後半以降のキリスト教偽典も存在する。そこには、神学的論争、終末に関する希望、そして近東における政治・宗教状況の変化への反応が反映されている。多くはギリシア語、アラム語、ヘブライ語で広く流通し、七十人訳聖書 や、のちの ウルガタ のような翻訳集の中に保存された。背景については 七十人訳聖書 と ウルガタ を参照。こうした伝承史は、ある文書が特定の写本伝承には現れ、ヘブライ語聖書 には現れない理由を説明する手がかりにもなる。

正典上の位置づけと区別

これらの文書の扱いは宗教伝統によって異なる。プロテスタント諸伝統では一般に、偽典はカトリック教会や正教会が保持する第二正典の諸書と区別され、多くを正典の外に置く。第二正典 をめぐる議論や、カトリックと正教会 の立場と比較するとよい。偽典の一部は典礼用または教育用の文集に組み込まれ、正式な正典認定を欠きながらも、後代の神学に影響を与えた。

代表例と意義

よく知られた偽典には、1エノク書(エチオピア・エノク書)、ヨベル書、十二族長の遺訓、そして聖書物語をさまざまに補った外典的作品が含まれる。これらの文書は、天使、宇宙論、メシア的期待、法解釈に関する古代の信仰を復元するうえで重要である。また、共同体が伝統の権威を用いて、自らのアイデンティティと教義を形成していった過程も示している。入門的な資料や本文校訂版を探す際は、著者研究、旧約聖書時代 の概説、さらに 聖書アポクリファ に関する比較研究を参照するとよい。

  • 典型的な内容: 黙示録、遺訓、創世記・出エジプト記の諸場面の拡張。
  • 学術的な用途: 宗教史、本文批評、受容史の研究。
  • 参照先: ギリシア語・アラム語・ヘブライ語、ならびに後代の翻訳における写本伝承。七十人訳聖書、ウルガタ、およびヘブライ語資料(ヘブライ語聖書)を参照。

偽典は、正典形成、共同体の自己定義、文学的創造性が交差する地点にあるため、今なお活発に研究されている。ユダヤ教や大半のキリスト教正典には含まれないが、神学、芸術、そして大衆的想像力への影響は大きく、後期古代の宗教世界を理解するうえで欠かせない。より専門的な文献目録や翻訳については、編集者や図書館によって示される学術的入門書や参考コレクション(第二正典研究教会の諸立場、および アポクリファ資料 における電子版・印刷版の校訂版)を参照されたい。