偽遺伝子(擬似遺伝子)とは|定義・機能・起源・進化的意義とジャンクDNAの関係

偽遺伝子とは何か?定義・機能・起源・進化的意義とジャンクDNAとの関係を図解で分かりやすく解説。最新研究で読み解くゲノムの謎。

著者: Leandro Alegsa

偽遺伝子(擬似遺伝子)とは、機能を失った遺伝子の配列を指します。具体的には、細胞内での遺伝子発現タンパク質をコードする能力を失っている配列をさします。用語は1977年に提唱され、生物学やゲノム科学の分野で「機能を失ったが遺伝的痕跡を残す配列」という意味で使われています。

起源と形成メカニズム

偽遺伝子は主に以下のような経路で生じます。

  • 突然変異による不活性化:塩基置換による終止コドン(ナンセンス変異)、フレームシフト変異、スプライス部位の破壊、プロモーター領域の欠損などによって、元の遺伝子が働かなくなる場合。これらを一般化して突然変異の結果と考えられます。
  • 重複と非機能化(非加工型偽遺伝子):遺伝子重複の直後に一方のコピーが中立進化に入り、徐々に欠損変異を蓄積して機能を失う。
  • レトロトランスポジションによる形成(加工型偽遺伝子):mRNAが逆転写されゲノムに再挿入されることで、イントロンを欠きポリA配列の痕跡を持つ偽遺伝子ができます。これらは通常プロモーターを持たないため転写されにくいことが多い。
  • ユニタリー偽遺伝子:ある系統で唯一の機能遺伝子が突然変異で不活性化され、そのまま残る場合(他に代替コピーがない)。

機能と潜在的役割

名前から「完全に機能がない」と思われがちですが、偽遺伝子の配列は必ずしも生物学的に無意味とは限りません。たとえば、偽遺伝子のDNAは転写されて非コードRNAを生じることがあり、それが親遺伝子の発現を抑制したり、転写調節に関わったりする例が報告されています。偽遺伝子からの転写産物は、アンチセンスRNA、siRNA、あるいは競合的エンドジェノスRNA(ceRNA)として働き、遺伝子発現ネットワークに影響を与えることがあります。

このため、一部の偽遺伝子は単なるノンコーディングDNAジャンクDNAとは異なり、調節的な(調節的な)機能を持つ可能性があり、機能を持つかどうかの判断には転写や翻訳の証拠、保存度、実験的検証が必要です。

分類と特徴

  • 加工型(processed)偽遺伝子:イントロンを失い、しばしばポリA痕や直接反復配列を伴う。レトロトランスポゾン活動に起因。
  • 非加工型(duplicated / unprocessed)偽遺伝子:元の遺伝子構造(イントロン・エクソン配列)を保持するが、欠失や終止コドンなどで不活性化。
  • ユニタリー偽遺伝子:系統内で唯一のコピーが失われたタイプ。

進化的意義

偽遺伝子はしばしば「分子的化石(molecular fossils)」と呼ばれ、祖先の遺伝子配列や遺伝子重複の歴史、系統間の差異を示す手がかりになります。偽遺伝子が蓄積する変異はしばしば中立的であるため、進化の過程や分岐の時期を推定するのに利用できます。偽遺伝子と機能遺伝子がともに進化的歴史を共有していることから、ダーウィンが示したように種や遺伝子の分化過程を理解する上で重要です。すなわち、偽遺伝子とそれに関連する機能遺伝子もまた共通の祖先を持ち、何百万年にもわたって遺伝的に分岐・発散してきた痕跡を残しています(種分化を理解するための一要素)。

ヒトゲノムと「ジャンクDNA」の関係

ヒトゲノムには数千〜数万規模の偽遺伝子が存在すると推定され、多くは配列上の痕跡として残っています。そのため偽遺伝子はしばしば「ジャンクDNA」とラベリングされますが、近年の研究はその一部が制御領域として機能したり、転写産物を介して生理学的役割を果たしたりすることを示しています。したがって「ジャンクかどうか」は一概には判定できず、個々の偽遺伝子ごとに機能評価が必要です。

検出・解析方法と注意点

  • 比較ゲノム解析:機能性遺伝子との類似性や保存度、イントロン構造の有無などから偽遺伝子を同定。
  • トランスクリプトーム解析(RNA-seq):転写の有無を調べ、転写される偽遺伝子の存在を評価。
  • プロテオミクス:偽遺伝子由来の翻訳産物が検出されるかを確認することで、真の非功能性かどうかを判断。
  • 注記:配列の類似性だけで偽遺伝子と断定すると、実際は機能を持つものを見落とすリスクがあるため、複数の証拠を組み合わせることが重要です。

まとめると、偽遺伝子は「機能を失った遺伝的痕跡」でありながら、ゲノムの進化史を解明する手がかりであり、場合によっては調節的な役割を持つこともある重要なゲノム要素です。個々の偽遺伝子の機能性を評価するには、比較ゲノム学的証拠と実験的検証の両方が必要です。

偽遺伝子の原因となる突然変異の説明図。ヒトの配列は嗅覚遺伝子ファミリーの偽遺伝子のもの。チンパンジーの配列は機能的なオルソログ。主な違いが強調されています。Zoom
偽遺伝子の原因となる突然変異の説明図。ヒトの配列は嗅覚遺伝子ファミリーの偽遺伝子のもの。チンパンジーの配列は機能的なオルソログ。主な違いが強調されています。

質問と回答

Q: 偽遺伝子とは何ですか?


A:偽遺伝子とは、細胞内での遺伝子発現やタンパク質をコードする能力を失った非機能的な遺伝子のことです。

Q: 「偽遺伝子」という用語はいつ作られたのですか?


A: 「Pseudogenes」という用語は1977年に作られました。

Q: 疑似遺伝子はどのように発生するのですか?


A: 生物の生存に必要のない遺伝子に変異がある場合に生じます。

Q:偽遺伝子のDNAは機能するのですか?


A: タンパク質をコードするものではありませんが、偽遺伝子のDNAは機能的であり、制御的な役割を持つ他の種類のノンコーディングDNAと同様である可能性があります。

Q: なぜ偽遺伝子はジャンクDNAと呼ばれることが多いのですか?


A: 偽遺伝子は一般的に、ゲノムから取り除かれるはずのゲノム物質の最終地点と考えられているため、ジャンクDNAと呼ばれることが多いのです。

Q: 擬似遺伝子には遺伝子のような特徴があるのでしょうか?


A: はい、ほとんどの擬似遺伝子は、遺伝子に似た特徴をもっています。

Q: 偽遺伝子にはどのような生物学的、進化的歴史があるのですか?


A:偽遺伝子は、機能性遺伝子と祖先を共有しているため、その配列には興味深い生物学的・進化的な歴史が含まれています。ダーウィンが2つの種が共通の祖先を持ち、その後数百万年にわたる進化の分岐があったと考えたのと同じように、偽遺伝子とそれに関連する機能遺伝子も共通の祖先を持ち、数百万年の間に別々の遺伝的実体として分岐してきたと考えられます。


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