
赤血球(RBC, red blood corpuscles, erythrocytesとも呼ばれる)は、血液中の細胞で、酸素を運搬する役割を担っています。女性の場合、1マイクロリットルの血液中に約480万個の赤血球が存在します。男性では、1マイクロリットルの血液中に540万個の赤血球が存在します。赤血球が赤いのは、ヘモグロビンを含んでいるからです。
役割(機能)
赤血球の主な役割は全身への酸素供給と二酸化炭素の運搬です。ヘモグロビン(鉄を含むタンパク質)が肺で酸素を受け取り、組織へ届けます。二酸化炭素は一部がヘモグロビンに結合して運ばれ、多くは炭酸水素イオン(HCO3−)として血漿中に変換されます。これらにより、体内のガス交換と酸塩基平衡の維持に寄与します。
構造と特徴
- 形状:中央が薄く凹んだ二重凹型(ビコンケーブ)。この形により表面積が大きくなり、ガス交換が効率化されます。
- 大きさ:直径は約7〜8μm(マイクロメートル)。
- 細胞内構成:成熟赤血球は核やミトコンドリアを失っており、主にヘモグロビンを大量に含みます。エネルギーは主に解糖系で得ています。
- 柔軟性:毛細血管を通過するために柔軟性が必要で、細胞膜と細胞骨格が重要です。
生成(造血)と寿命
赤血球は骨髄で分化・成熟し、主に腎臓で作られるホルモンエリスロポエチン(EPO)によって産生が促進されます。寿命は通常約120日で、古くなった赤血球は脾臓や肝臓の網内系細胞によって破壊されます。破壊されたヘモグロビン中の鉄は再利用されます。
検査と正常値(目安)
赤血球に関する代表的な検査は全血算(CBC)です。主な指標と目安は以下の通り(成人):
- 赤血球数(RBC):男性 約4.5–5.9 ×10^6/μL、女性 約4.1–5.1 ×10^6/μL(施設により若干差があります)
- ヘモグロビン(Hb):男性 約13.8–17.2 g/dL、女性 約12.1–15.1 g/dL
- ヘマトクリット(Ht):男性 約40–52%、女性 約36–48%
- MCV(平均赤血球容積):約80–100 fL(フロントリットル) — 小球性/正球性/大球性の分類に使用
- MCH(平均赤血球ヘモグロビン量):約27–33 pg
- MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度):約32–36 g/dL
- 網赤血球数(reticulocyte):骨髄の造血反応を反映
新生児では赤血球数やヘモグロビンは成人より高くなるのが一般的です。
赤血球の異常と主な原因
赤血球の量や形、機能に異常があると様々な症状や疾患が現れます。
- 少ない(貧血) — 主な原因:
- 鉄欠乏性貧血(出血や摂取不足)
- 慢性疾患による貧血(炎症や腎不全によるEPO不足)
- 巨赤芽球性貧血(ビタミンB12欠乏、葉酸欠乏)
- 溶血性貧血(免疫性、遺伝性溶血、薬剤性)
- 骨髄の造血低下(再生不良性貧血、骨髄異形成症候群など)
- 多い(赤血球増加・多血症) — 主な原因:
- 脱水(血漿量減少で相対的に増加)
- 真性多血症(polycythemia vera)などの造血系疾患
- 高地適応、エリスロポエチン産生亢進(腫瘍など)
- 形態異常 — 形の異常(球状赤血球、鎌形赤血球、破片赤血球など)は、溶血や遺伝性疾患、機械的損傷を示唆します。
症状(代表)
- 貧血の主な症状:疲労感、動悸、息切れ、めまい、顔面蒼白など
- 多血症の症状:頭痛、めまい、充血、かゆみ(温熱後)や血栓リスクの増加
検査で見られる追加情報
- 末梢血塗抹(血液塗沫標本)で赤血球の形態を観察します。
- 網赤血球数は骨髄の反応性を評価するため、出血や溶血では増加、造血障害では低下します。
- 鉄代謝検査(フェリチン、血清鉄、総鉄結合能)やビタミンB12、葉酸測定で原因を特定します。
治療と日常でのケア
- 原因に応じた治療:鉄補充(経口または静脈)、ビタミンB12補充、葉酸補充、造血刺激因子(EPO製剤)、免疫抑制療法、骨髄移植など。
- 多血症では瀉血(採血)や薬物療法(ヒドロキシウレアなど)で赤血球量を調整します。
- 重度の貧血や急性出血では赤血球輸血が行われることがあります。輸血は適切な血液型適合と感染対策が必要です。
- 日常生活ではバランスの良い食事(鉄・ビタミンB12・葉酸を含む食材)や、慢性疾患の管理が重要です。
まとめ
赤血球は酸素供給と二酸化炭素排出を担う重要な血液成分で、形態や数、機能の変化は全身の健康状態を反映します。定期的な血液検査(CBC)や症状に応じた精査で早期発見・治療を行うことが大切です。