集合数学の基本的な概念で、ある条件でひとまとめにした「要素(メンバー)」の集まりを指します。集合はその要素できまるため、同じ要素を持つ集合は同一とみなされます(拡張性の原理)。要素の記述には次のような表記を使います:x ∈ A は「x は集合 A の要素である」を意味します。

要素・表記・性質

集合の表し方としてよく使われるもの:

  • {a, b, c} — 要素が a, b, c である集合。
  • {x | 条件} — 条件を満たす全ての x を集めた集合(集合内包表記、集合わく)。

集合の基本的な性質:

  • 順序は無関係:{a, b} = {b, a}。
  • 重複は無意味:{a, a, b} = {a, b}。集合は同じ要素を複数回数えることはしません。
  • 拡張性:2つの集合が同じ要素を全て持つならば、それらは同じ集合(A = B)。

空集合と基数

ある特定の集合として、要素を何も持たない集合を空集合と呼び、記号は ∅ または {} で表します。空集合は一意に定まります。集合の要素の個数を表す概念を基数(cardinality)といい、有限集合なら |A| でその要素数を表します。無限集合については可算無限・非可算無限などの区別があります。

集合の演算と構成

集合にはいくつかの基本的な演算があります:

  • 和集合(合併):A ∪ B は A または B の要素全体。
  • 積集合(共通部分):A ∩ B は A と B 両方に属する要素。
  • 差集合:A \ B は A に属し B には属さない要素。
  • 補集合:全体集合 U を定めれば、A の補集合は U \ A。
  • 対称差:A Δ B = (A \ B) ∪ (B \ A)。
  • べき集合:P(A) は A の部分集合全体の集合(要素は部分集合)。
  • 直積(デカルト積):A × B は順序対 (a, b) 全体。これを使って関数や関係を集合として定義できます。

関数は一般に「ある集合から別の集合への写像」として定義され、集合論的には順序対の集合として表されます(各入力に対してちょうど一つの出力が対応する集合)。

部分集合と等号

集合 A が集合 B の部分集合であるとは、A のすべての要素が B に属することを意味し、記号 A ⊂ B または A ⊆ B を使います。等号 A = B は A ⊆ B かつ B ⊆ A のとき成立します。

注意すべきパラドックスと公理化

任意の条件で集合を作れると考えると、自己言及的な集合による矛盾(パラドックス)が生じます。たとえば、その手続き的な問題を示す代表例がラッセルのパラドックスに注意する必要があります。簡単に言うと「自分自身を要素に含まない集合すべての集合 R」を考えると、R が自分自身の要素であるか否かで矛盾が生じます。

このような問題を避けるために、現代の集合論では公理系による厳密化が行われます。代表的なものに次があります:

  • Zermelo–Fraenkel 集合論(ZF)、選択公理を加えた ZFC:集合の構成や集合がどのように振る舞うかを公理で定め、ラッセル型の矛盾を回避します。
  • タイプ理論や Von Neumann–Bernays–Gödel (NBG) 集合論など、別の形式化手法もあります。

公理化により「すべての条件で自由に集合を作れる」という素朴な原理(包含公理の無制限版)は制限され、集合が自分自身を要素に持てるかどうかや基礎性(well‑foundedness)などの性質も公理によって扱われます。逆に、非基礎的集合論(非 well‑founded set theory)では自分自身を要素に持つ集合を扱うこともあります。

例と応用

簡単な例:

  • {1, 2, 3} は 1,2,3 を要素に持つ集合。
  • P({1,2}) = {∅, {1}, {2}, {1,2}}。
  • 直積 {1,2} × {a,b} = {(1,a), (1,b), (2,a), (2,b)}。

集合の概念は数学のほぼ全領域で基盤となっており、論理学、代数、位相空間、確率論、計算機科学(データ構造や型理論)など多くの分野で利用されます。