社会的スティグマとは、社会がある個人や集団の特徴を「負の評価」や「恥」のように捉え、その結果として差別・排除・不利益を与える考え方や態度を指します。外見や行動、出自などが理由で社会的に不当に扱われることがあり、被害を受ける側の健康や生活、自己肯定感に深刻な悪影響を及ぼします。
社会学者であるアーヴィング・ゴフマンは、社会的スティグマを分類し、その構造を明らかにしました(主著は『Stigma: Notes on the Management of Spoiled Identity』1963年)。ゴフマンが挙げた代表的な3つのタイプは次のとおりです。
ゴフマンの3分類
- 身体的スティグマ(身体的特徴によるもの) — たとえば、肥満や傷跡、ハンセン病などの伝染や外見上の違いが理由で、否定的に扱われる場合。
- 個人の特性に関するスティグマ(性格・行動・状態) — 例として、精神疾患、薬物中毒やアルコール依存症など、本人の行動や状態に基づく偏見が挙げられます。
- 部族的(集団的)スティグマ — 出自や所属集団に関わるもので、民族、国籍、宗教の特徴が多数派と異なることを理由に差別される場合(例:宗教とは異なるために排除されるケース)。
スティグマが生まれる原因
- 無知や誤情報:正確な知識が不足すると恐怖や誤解が広がりやすい。
- 社会的・歴史的背景:歴史的な偏見や権力構造がスティグマを維持する。
- メディア表現:偏った描き方やセンセーショナルな報道が印象を強める。
- 制度的要因:法律・制度・職場文化などが差別を助長することがある。
- 自己保存のための「他者化」:集団が自分たちの正当性を保つために「異質」を排除する心理。
スティグマの影響(個人・社会への弊害)
- 差別や就労・住宅・医療などでの不利益。
- 当事者の自己スティグマ(自分を恥じる気持ち)の形成、自己評価の低下。
- 医療や支援サービスの利用回避(病気の早期発見・治療が遅れる)。
- 精神的ストレスの増加による健康悪化(うつ、不安、孤立)。
- 社会的分断の拡大と機会損失(多様性の阻害)。
スティグマを減らすための実践的方法
- 教育と情報提供:正確で科学的な知識を広め、誤解を解く。
- 接触(コンタクト)機会の創出:当事者と直接触れ合うことで偏見を和らげる(共感を生む)。
- 言葉遣いの配慮:差別的な表現を避け、当事者を尊重する言い方を促進する。
- メディアと表現の改善:多様な当事者の視点や成功例を発信する。
- 制度的な支援:差別を禁止する法律や、医療・福祉へのアクセスを保障する政策の整備。
- 当事者支援とピアサポート:当事者による支援グループや相談窓口の充実で孤立を防ぐ。
社会的スティグマは個人の問題にとどまらず、社会全体の健康や公正さに関わる課題です。誤解や偏見を減らすためには、情報提供・接触・制度改正など多角的なアプローチが必要であり、誰もが尊厳を持って暮らせる社会を目指す取り組みが重要です。