トランスフォビアとは、トランスジェンダーやニューハーフに対する悪感情に基づく偏見や差別のことです。これは、トランスジェンダーに対するヘイトスピーチヘイトクライムだけでなく、彼らが社会に出る機会や仕事を持つことを拒否したり、売春を強要したりすることも意味します。2009年には、トランスジェンダーに対するヘイトクライムを禁止するために、米国ではバラク・オバマ大統領の認知により、マシュー・シェパード法が可決され、施行されました。

トランスフォビアの具体例

  • 暴力や脅迫:物理的な暴行、性的暴行、脅迫。被害者は通報をためらうことが多いです。
  • ヘイトスピーチ・差別的言動:職場や学校、ネット上での侮辱や中傷、排除的な発言。
  • 雇用・住居での差別:採用や昇進の拒否、住居の入居拒否などで生活の基盤を奪われる場合があります。
  • 医療や行政サービスでの障壁:正しい名前や性別で扱われない、必要な医療が受けられないなど。
  • 法的認識の欠如:名前や性別の公式な変更が難しかったり、性自認を理由に保護が得られない場合。

国際機関と亡命の観点

国連難民高等弁務官事務所は、ジョグジャカルタ原則とともにジェンダー・アイデンティティを理由に亡命者を指摘しています。しかし、現実には保護が十分でないこともあります。たとえば、グアテマラからデンマークに逃れてきたトランスジェンダーの女性は、男性センターに入れられ、そこでレイプされてしまいました。こうした事例は、亡命や保護制度の課題を浮き彫りにしています。

社会運動と用語

トランスフォビアは世界中で見られ、フェミニズムなどの社会正義運動の内部でも議論の対象になっています。特にラディカルフェミニズムと関連して対立が生じることがあります。

また、以下のような専門用語も使われます。「transmisogyny(トランスミソジニー)」は特にトランス女性に向けられる差別のことを指し、ジュリア・セラーノは、彼女の本『Whipping Girl』でこの概念を広めました。Cissexism(シスセクシズム)はトランスフォビアと重なる概念として使われることがあり、cisphobiaはその反意語として使われることもあります。

法的対策と各国の取り組み

  • 国際基準:前述のような国連機関やジョグジャカルタ原則は、性自認に基づく差別や迫害を人権問題として扱うことを求めています。
  • 国内法:国・地域によって差があります。米国のようにヘイトクライムに性自認を含める法律を整備した国もあれば、性自認を明確に保護する法制度がない国もあります。
  • 行政と自治体:全国法が未整備でも、自治体の条例や行政のガイドライン、教育現場での対応が進められている場合があります。
  • 職場や学校での対策:差別禁止ポリシーの導入、トイレや更衣室の配慮、当事者を支える相談窓口の設置などが有効です。

トランスフォビアが個人と社会に与える影響

  • 心身の健康:差別や排除はうつや不安、自傷行為、睡眠障害などにつながることがあります。
  • 経済的影響:雇用差別や学業中断により生活基盤が不安定になります。
  • 社会的孤立:家族やコミュニティからの拒絶により孤立しやすくなります。
  • 公共の安全:暴力や犯罪の標的になりやすく、安全に暮らせない状況が生まれます。

当事者や支援者ができること(実践的な対策)

  • 記録を残す:差別や暴力を受けた場合は日時・場所・加害者の情報・証拠(メッセージ、写真など)を保存しましょう。
  • 相談窓口や支援団体へ連絡:地域のLGBTQ+団体、法律相談、精神保健の窓口などを利用します。
  • 法的手段の検討:警察への通報、行政機関への苦情、弁護士を通じた対応などを検討します。国や自治体の制度を確認しましょう。
  • 職場・学校での対応:差別禁止の社内規定や校内ガイドラインの整備、研修の実施を求めることが重要です。
  • 社会的啓発:正しい知識を広めること、当事者の声を可視化することが偏見を減らす有効な手段です。

日本での注意点

日本では、性自認を明確に保護する全国的な差別禁止法はまだ整備途上ですが、自治体レベルでの取り組みや企業のポリシー導入、学校の対応などが進みつつあります。具体的な支援や手続きはお住まいの自治体や地域のNPOに相談するとよいでしょう。

まとめ

トランスフォビアは個人の尊厳や安全を脅かす深刻な問題です。被害を受けた場合は記録を残し、信頼できる支援機関や専門家に相談してください。社会全体としては、法的保護の整備、職場・学校での包摂的な環境づくり、啓発活動が重要です。差別をなくすためには一人一人の理解と行動が不可欠です。