概要
接合菌門は、一般に「接合菌」と呼ばれてきた、厚い壁をもつ有性構造である接合胞子嚢を作ることによって識別される、伝統的な菌類のまとまりである。歴史的には、このまとまりには、古い解説でしばしば約1,600種とされる記載種が含まれていたが、推定値は新種の発見や分類の見直しによって変動していた。名称は単一のまとまった系統ではなく、特徴的な有性構造に由来する。現在の分子研究によって、この名の下にまとめられていた生物は一つの自然な群を作らないことが示されている。古典的な説明への入口としては接合菌門を参照。
主な特徴
接合菌類に似た菌類は、遺伝学的解析が広く用いられる以前から識別しやすい、一連の解剖学的・生活環的特徴を共有していた。典型的な特徴には次のものがある。
- 多核性で隔壁をほとんどもたない長い管状の菌糸。横断隔壁(セプタ)が頻繁にはなく、多核の細胞質塊をつくる。この状態は合胞体(syncytium)と説明されることもある。
- 直立した菌糸上の胞子嚢で無性胞子を作ること。これは急速な分散や食品の腐敗の原因になることが多い。
- 相性の合う菌糸が融合して抵抗性の接合胞子嚢を形成し、その内部で核融合が起こり、のちに減数分裂によって遺伝的多様性が生じる有性生殖。群名はこの構造に由来する(接合胞子嚢を参照)。
- セプタは通常は見られないが、生殖構造を隔離したり、損傷した菌糸や死んだ菌糸を区画したりするために形成されることがある。発達中の配偶子や他の特殊構造の周囲に隔壁ができることもある。
生殖と生活環
これらの菌類は無性生殖と有性生殖の両方を行う。無性生殖では、一般に胞子嚢から放出される有糸分裂由来の胞子が用いられ、この経路は土壌や分解中の有機物上で効率が高く広く見られる。有性生殖は栄養不足やストレスなどの環境要因によって引き起こされる。相性の合う交配型が原形質融合によって結びつき、厚い壁をもつ接合胞子嚢が形成され、続いて核融合と休眠が起こる。条件が再び整うと減数分裂によって新たな胞子が生じる。生殖に関する用語や過程の背景は菌類の生殖を参照。
生態、関係性、重要性
接合菌類は生態的に多様である。多くは腐生菌で、植物や動物の残骸を分解し、栄養循環で重要な役割を果たす。生きた生物の上または内部で生活する種もあり、植物、昆虫、小動物の寄生者であるものが少なくない(昆虫病原菌の例を含む)。一方で、植物と相利共生関係をつくるものもある。歴史的には、植物の根と菌根状の関係をつくるものが知られていたが、そうした菌類は現在では別の系統として扱われている。共生関係は多くの生態系で不可欠である(共生)。
分類と歴史的背景
分類学的には、Zygomycotaという名は、胞子嚢や接合胞子嚢のような目に見える構造を中心に菌類分類が行われていた時代を反映している。分子系統学の発達により、この群は多系統であることが明らかになり、旧来の構成種は、新たに定義された複数の門や亜門にまたがる、より自然なクレードへ再配置された。古い検索表や野外図鑑では今でも伝統的な名称と説明が使われているが、最新の分類と歴史的背景については、記載種数とその集計を含む現代の菌類学資料を確認するとよい。
利用例、代表例、注目点
文化的・経済的には、旧来の接合菌に含められていた菌類のいくつかは身近な存在である。一般的な黒パンカビ(しばしばRhizopus属として挙げられる)は食品を傷める一方、他の種はテンペの製造のような伝統的発酵や、酵素・有機酸を生産する工業工程に利用される。条件によっては人や動物に日和見感染を起こすものもあり、生態学的な重要性に加えて医学的な重要性も示している。さらに読むための一般的な参考資料や専門ページとして、接合胞子嚢の情報、寄生生物の例、共生の資料、配偶子形成の概説がある。補足的な背景や分類の詳細は、構造の説明、古典的な概説、種一覧と改訂からも確認できる。