アフリカミゾウLoxodonta cyclotis)は、コンゴ盆地の森林に主に生息する、森林性のゾウです。体格は同じアフリカに生息するアフリカブッシュゾウLoxodonta africana)より小型で、密な熱帯林の生活に合わせた形態や習性を示します。2010年の遺伝学的研究では森林性ゾウとブッシュゾウを別種と扱う結果が示されましたが、両者は交配が可能であることから、種の区分や亜種扱いについては議論が残っています。また、コンゴ盆地のピグミーゾウは別種(Loxodonta pumilio)とする説もあります。

形態的には、耳の形や頭骨の構造、牙の向きや細さ、歯(臼歯)の構造などにブッシュゾウとの違いがみられます。一般に森林性ゾウは体高や体重が小さく、牙は比較的まっすぐで下方へ伸びる傾向があり、濃密な林内で枝葉を刈り取るのに適しています。足の趾数や歯の摩耗様式など細かな解剖学的差異も報告されていますが、個体差や地域差も大きいため単純な区分は難しい点があります。

行動面では、小規模な家族群を基礎にした社会構造を持ち、密林内をゆっくり移動しながら果実、葉、樹皮を食べます。森林の植物の種子散布に重要な役割を果たし、生態系の維持に寄与します。繁殖は妊娠期間が長く(約22か月前後)成獣までに年数を要し、成長も遅いため個体群の回復は容易ではありません。

熱帯雨林の環境に適応した生活様式や小型化は、森林内での移動や採食に有利に働きますが、同時に外部からの脅威に対して脆弱でもあります。

保全状況は深刻です。密猟(象牙目的)や森林伐採、農地拡大、鉱山開発、道路建設、紛争地域での乱獲などにより生息数は大幅に減少してきました。国際的にはCITES(ワシントン条約)による取引規制や各国の保護区設定、違法取引への取り締まり、DNA鑑定による象牙の追跡などが進められていますが、違法取引網や需要の根絶が課題です。国際自然保護連合(IUCN)では、森林性ゾウを別種として評価した場合に深刻な絶滅リスクにあるとされています。

保全のためには、効果的な密猟対策(監視・取締り・地域コミュニティの関与)、生息地の保全と回復、保護区間の連結(回廊の確保)、違法な象牙取引の抑止、地域住民の代替生計支援などが必要です。一般の人ができる支援としては、信頼できる保全団体への支援や象牙製品を購入しないこと、情報を広めることなどがあります。

森林性ゾウは熱帯林の健康と多様性を支える重要な種です。学術的な分類や生態の詳細をさらに明らかにしつつ、実効性のある保全措置を継続していくことが求められます。