概要
産褥熱(産後感染症とも呼ばれる)は、出産、妊娠の中断、または流産の後に起こる女性生殖器の感染性炎症である。多くは分娩中または分娩後に子宮へ細菌が持ち込まれることで発症する。治療しないまま放置すると、この状態は全身性の敗血症へ進行し、生命を脅かすことがある。
原因と危険因子
この状態は通常、膣から子宮へ上行する細菌感染によって起こる。危険因子には、分娩の長期化、胎盤組織の遺残、複数回の腟内診察、器械分娩、不十分な無菌操作、既存の母体感染症などがある。帝王切開は感染の機会を高めるため、よく知られた危険因子である。周術期抗菌薬や厳格な無菌管理のような広範な予防策の有効性は確立している。
徴候と診断
症状は多くの場合、出産後数日以内に始まり、発熱、下腹部痛または骨盤痛、子宮圧痛、異常な、または悪臭のある悪露、全身倦怠感などがみられる。診断は主に臨床的に行い、炎症マーカーを示す血液検査や、可能であれば血液または子宮内容物の微生物培養で補う。画像検査は、遺残物の有無を確認したり、膿瘍を見つけたりするために用いられることがある。
治療と予防
治療の中心は、原因となりやすい微生物を想定した速やかな経験的広域抗菌薬治療であり、培養結果が得られればそれに応じて調整する。管理には、遺残組織の除去、必要に応じた子宮ドレナージ、敗血症に対する支持療法も含まれる。予防策としては、厳格な手指衛生、分娩時の無菌操作、帝王切開時の定期的な予防抗菌薬投与、母体感染症の早期発見と治療がある。
歴史的背景
19世紀には、産褥熱は病院で高い母体死亡率の原因となっていた。ハンガリーの医師イグナーツ・ゼンメルヴァイスは、塩素溶液による手洗いを提唱して死亡率を劇的に下げた。この発見は当初は受け入れられにくかったが、のちに現代の感染管理と母体安全の基盤となった。
合併症と区別
合併症には、骨盤膿瘍、敗血症、慢性骨盤痛、まれに不妊や死亡が含まれる。産褥熱は特に子宮または産褥期の感染を指し、乳腺炎や尿路感染症など他の産後疾患と区別する必要がある。早期認識、衛生的ケア、適切な抗菌薬治療により、現代の産科医療にアクセスできる環境では生命を脅かす転帰ははるかに少なくなっている。