グジャリ語(Gojri、Gujari とも表記)は、伝統的にグジャル(Gujjar)の牧畜・農耕共同体で用いられてきたインド・アーリヤ語の一変種である。北インドとパキスタンの各地に分布し、多くのグジャル集団にとって地域的アイデンティティの重要な要素となっている。名称には表記ゆれがあり、共同体の言語を指す地元の呼び名と互換的に使われることもある。共同体の背景についてはグジャル人を参照。
地理的分布と言語話者
グジャリ語は、南アジア北部に広く弧を描くように分布している。主な集中地はインドとパキスタン両国のパンジャーブ地方で、さらにジャンムー・カシミールや周辺の丘陵地帯にも共同体がある。インドではヒマーチャル・プラデーシュ州、ラージャスターン州、パンジャーブ州の一部で見られ(インド)、パキスタンではパンジャーブ、アーザード・ジャンムー・アンド・カシミール、および隣接地域で聞かれる(パキスタン)。
言語分類と歴史
インド・アーリヤ語として、グジャリ語はラージャスターン語、マールワーリー語、グジャラート語など隣接する言語と多くの文法パターンや語彙を共有している。言語学者の間ではその位置づけに違いがあり、ラージャスターン語群の一方言とみなす研究者もいれば、複数の地域変種をもつ独立した言語として認める研究者もいる。グジャル集団の歴史的移動と、近隣の言語共同体との長期的接触が、語彙と音韻の形成に影響を与えてきた。そのため、保存的な特徴と接触によって生じた特徴の両方が見られる。
特徴
グジャリ語には、北インドのインド・アーリヤ語に共通する構造的特徴があり、主語–目的語–動詞の語順や、性・数・格を標示する体系が含まれる。発音と語彙は地域によってかなり異なることがあり、識別可能な地域変種を生み出している。典型的な特徴としては次のようなものがある。
- 近隣言語からの借用を含みつつ、多くの一般的なインド・アーリヤ語系語根を保持している。
- パンジャーブ語、カシミール語、ラージャスターン語、グジャラート語との接触を反映した方言差がある(グジャラート語)。
- 叙事歌、民話、歌などの口承ジャンルがあり、慣用表現が保存されている。
文字、文学、使用
グジャリ語は主として口承の伝統を持つが、複数の文字でも書かれている。パキスタンでは、ペルシア・アラビア文字(ナスタアリーク体)が識字や印刷に一般的に用いられる。インドではデーヴァナーガリー文字や他の地域文字が共同体出版物に現れることがある。歌、叙事詩、ことわざといった口承文学は今なお文化的に重要であり、近年では書き言葉の資料、コミュニティ新聞、ラジオ番組も増えてきた。
地位と特記事項
グジャリ語の公的な認知は国や地域によって異なる。大きな地域言語に比べると記述が不十分なことが多く、話者の多くは二言語話者で、教育や行政では各国の標準語を用いる。注意すべき重要な点として、名称は似ていても、グジャリ語は西インドのグジャラート語と同一ではない。両者はより広いインド・アーリヤ語族に属する別個の変種であり、それぞれ異なる歴史的・地理的背景の中で発達した。
グジャル共同体や地域間の言語接触についてさらに知りたい場合は、上記の関連資料や、グジャリ語の諸変種、社会言語学的状況、記述化の取り組みを扱う専門的な言語調査を参照するとよい。