"Wild apple"はこちらにリダイレクトします。オーストラリアでは、無関係のPouteria eerwahを指す場合がある。
リンゴ属(Malus)は、バラ科の落葉性の小高木や低木の属で、一般に約30–35種の属とされます。研究や分類の立場によっては、栽培化された果樹園のリンゴ(いわゆる家畜の果樹園のリンゴ、テーブルリンゴ)などを含め最大で約55種と数える場合もあります。野生種やその亜種は一般に「野生のリンゴ」「カニリンゴ(クラブアップル)」「カニップル」などと呼ばれ、果実や樹形、花色に多様性があります。
分布と生息地
属は主に北半球の温帯域に分布し、ヨーロッパ、アジア、北アメリカに自生しています。多くは林縁、草地、山地の斜面や渓流沿いなどの日当たりと湿度が適度にある場所を好み、栽培種は世界中に広がっています。
形態
リンゴの木は一般に小〜中高木で、成木は通常4–12メートル程度になります。葉は長さ約3–10cmの単葉で、縁は鋸歯状、茎に対しては互生(反対ではなく交互)に付くのが特徴です。花は春に咲き、5枚の花弁をもち、白・ピンク・赤などの色を示します。雄しべは多数あり花粉や蜜を提供し、雌しべを含む子房から果実(核果ではなく「ポム」と呼ばれる偽果)が形成されます。
花と受粉
開花は春に行われ、受粉は主に昆虫、特にミツバチなどの花蜂類によって行われます。多くのリンゴ種は異株同士での交配を必要とする自家不和合性(self‑incompatibility)を示すため、果実を確実に得るには異なる遺伝型の個体間での受粉が重要です。
果実と利用
リンゴ属の果実は「リンゴ(pome)」と呼ばれる種で、食用として生食、加熱調理、ジュース、サイダー、酢、加工品など幅広い用途があります。栽培リンゴ(Malus domestica)は野生種を基に長い選抜と交雑の歴史で作られ、品種改良により味・色・貯蔵性が多様化しています。観賞用には花つきや果実が小さい「カニリンゴ」が庭木として人気です。
栽培と育種・根接ぎ
商業的栽培では接ぎ木が一般的で、根部(台木)には耐病性・耐寒性・樹勢制御の性質を持つ系統が用いられます。受粉を確保するために複数品種の混植やミツバチの導入が行われます。染色体数は一般的に2n=34(基本倍数x=17)であり、種間交雑や雑種形成が起こりやすいため、育種ではこれを利用して新しい品種が作られています。
病害虫と保護
主要な病害としては火傷病(Fire blight、Erwinia amylovora)やリンゴ黒星病(Venturia inaequalis)などがあり、害虫ではカイガラムシ、アブラムシ、シンクイムシ(コドリングモス)などが生産に大きな影響を与えます。野生種は生息地の破壊や栽培種との交雑による遺伝的撹乱で危機に瀕しているものがあり、保全対策が重要です。
分類と起源
リンゴ属は形質の多様さと種間交雑の容易さから分類が難しく、種数の扱いは研究者により差があります。栽培リンゴの起源は中央アジア(カザフスタン周辺)の野生種、特にMalus sieversiiなどに遡るとされ、ユーラシアの交易路を通じて広まりながら他種とも交雑して現代の多様な品種群が形成されました。
用途の広さと文化的歴史を持つリンゴ属は、果樹栽培、園芸、自然保護のいずれの面でも重要な植物群です。




