中央値は、確率論や統計学で用いられる代表値の一つで、データ集合や分布の中心的な値を示します。一般には、順序づけられた観測値の集まりを分けて、少なくとも半分がその値以下、少なくとも半分がその値以上になるような値を指します。確率分布では、中央値 m は P(X ≤ m) ≥ 1/2 かつ P(X ≥ m) ≥ 1/2 を満たします。有限標本では、順位づけされた観測値から決まります。

中央値の求め方

有限のリストの中央値を求めるには、まず値を小さい順に並べます。要素数 n が奇数なら、中央値は整列後の並びの (n+1)/2 番目にある中央の値です。n が偶数の場合には、二つの中央値の算術平均を取る方法と、その二つのどちらか一方(たとえば小さい方または大きい方)を採用する方法の二つがよく使われます。中央の二値の平均を用いると、データが整数だけで構成されていても中央値は一意の実数になります。一方、整数値を保つ流儀では、中央値は実際に観測されたデータ値のままになります。

連続分布では、累積分布関数が 0.5 となる値が中央値です。実務では、階級分けされたデータやビン分けされたデータについて、階級境界の間を補間して中央値を推定できます。重み付き標本では、重み付き中央値によってこの考え方を一般化し、左右の総重みが釣り合う切断点を求めます。

性質と頑健性

中央値は頑健であり、極端な値や裾の重い観測値の影響を、算術平均よりはるかに受けにくいという特徴があります。そのため、所得や不動産価格のように、少数の大きな値が平均を大きくゆがめうる歪んだ分布では、中央値が代表値として好まれます。統計学的には、標本中央値は母中央値の推定量であり、穏やかな正則条件の下で一致性をもち、漸近的に正規分布に従います。

変種・応用・例

  • 簡単な例: {2, 5, 7} の中央値は 5、{2, 5, 7, 9} の中央値は (5+7)/2 = 6。
  • 重み付き中央値: 各観測値に異なる重要度や頻度がある場合に有用。
  • 幾何学的中央値・空間中央値: 多変量データで、全点への総距離を最小にするために用いられる拡張。
  • 中央値フィルタ: 信号処理や画像処理でよく使われる非線形平滑化手法で、線形平均ほど輪郭をぼかさずに、スパイク状の雑音を除去できる。

中央値は、記述統計の報告(世帯所得の中央値、住宅価格の中央値など)、頑健な統計手法、そして外れ値の影響を平均より受けにくい代表的な結果を求める意思決定規則で広く使われています。ばらつきを示すためには、中央値との差とともに分散の指標(四分位範囲、中央値絶対偏差)も併せて示すのが望まれます。

歴史、記法、主な違い

中心値や分割値という考え方は、古くから記述的分析の一部でしたが、「中央値」という語の現代的な形式的使用と体系的研究は、統計学が学問分野として発展した19世紀から20世紀初頭に確立しました。記法には揺れがあり、変数 X の中央値は med(X) や ~X と書かれることがあります。平均との差が二乗和を最小化するのに対し、中央値は絶対偏差の総和を最小化するため、異なる最適性の基準を表します。

関連項目と参考: 確率論, 統計学, , 有限, 奇数, 偶数, 平均, 順序値, 標本, 偏った, 統計推定量.