米国海軍犯罪捜査局(NCIS)とは|任務・組織・国家安全保障と防諜

米国海軍犯罪捜査局NCIS)は、米国海軍省(DON)の主要な法執行機関である。米国海軍および米国海兵隊員に対する、または同人による犯罪に関する活動を捜査する。また、国家安全保障、防諜、テロ対策事件も担当する。NCISは、旧海軍捜査局NIS)の後継組織である。

任務と管轄

  • 刑事捜査:殺人、性的暴行、児童虐待、重大な暴力事件、詐欺・横領などの重罪レベルの事件を捜査する。軍人・民間人を問わず、海軍・海兵隊に関係する事件が対象となる。
  • 国家安全保障・防諜:スパイ活動や機密情報の不正流出を含む、防諜(カウンターインテリジェンス)業務を行い、基地や艦艇、作戦への脅威を特定・排除する。
  • テロ対策・フォースプロテクション:テロ関連の情報収集、予防対策、要人警護や危機対応を含む部隊防護(force protection)を実施する。
  • サイバー捜査・デジタルフォレンジック:ネットワーク侵入、サイバー攻撃、デジタル証拠の解析などの専門捜査を行う。

組織と人員

NCISは本部(本部はバージニア州Quanticoを中心に機能)を置き、米国内外の主要な海軍・海兵隊基地に多数のフィールドオフィス、駐在事務所を展開している。人員は主に民間人職員で構成され、主な役割には次が含まれる:

  • 特別捜査官(Special Agents):刑事捜査・逮捕権を持ち、武器を携行することができる連邦捜査員。
  • 反諜報(CI)スペシャリスト、アナリスト、サイバー専門家、法科学者(DNA・指紋・火器解析など)、現場支援職(現場管理、翻訳・語学、ロジスティクス)など。
  • 指揮層はディレクターのもと、刑事捜査部門、反諜報・国家安全保障部門、サイバー・デジタルサービス、法科学サービス、支援・管理部門等で構成されることが一般的である。

捜査の進め方と法的枠組み

  • NCISの捜査は、国内の連邦法や軍法(UCMJ=Uniform Code of Military Justice)に関連する事案に関与する。必要に応じて連邦検事(U.S. Attorney)や軍の法律支援部署(JAG)と協調して起訴や軍事裁判を進める。
  • 米国内では地方警察やFBIなどの他の法執行機関と共同捜査を行い、海外では在外米軍施設や同盟国機関と連携して捜査を展開する。
  • 緊急時や重大インシデントでは、NCISが現場でリードをとり、現地の基地安全当局や司令部と密接に協力する。

連携・国際協力

NCISはFBI、CIA、国土安全保障省(DHS)、他軍種の捜査機関(米陸軍CID、空軍OSI 等)、防諜機関、米国大使館や各国の法執行機関と緊密に連携する。国際的な捜査や情報共有が必要な場合、在外公館や同盟国当局と協力して活動する。

歴史的背景と役割の変化

NCISは旧来の海軍捜査機関を起源とし、1990年代に現在の名称と組織形態へと移行した。冷戦後から情報化社会、サイバー脅威やテロの台頭に伴い、反諜報・サイバー能力や国際協力の重要性が増している。これに応じて専門家の採用や法科学・デジタルフォレンジック部隊の強化が進められている。

現実とフィクションの違い

テレビドラマ等で描かれるNCIS像はエンターテインメントとして脚色されている点に注意が必要である。実際の業務は法的手続き、証拠保全、国際調整、専門的分析などを慎重に行うプロセスが中心であり、即断即決の場面ばかりではない。

報告・通報の方法(一般的指針)

  • 海軍・海兵隊に関係する犯罪や安全保障上の懸念がある場合、まずは所属基地のProvost Marshal(基地警務)や危機対応窓口に連絡する。必要に応じてNCISが対応する。
  • 緊急事態では地元の緊急通報番号(米国内は911)を利用する。NCISの各フィールドオフィスには専用の通報経路があるが、公的な連絡先は各基地や公式ウェブサイトで確認すること。

透明性と監視

NCISは海軍省の一機関として活動し、監査や議会の監視、国防総省の監督機構、内部の規律・監察手続き等によって説明責任が求められる。

これらはNCISの代表的な任務と特徴であり、その具体的な編成や手続きをより詳しく知りたい場合は、公式資料や公的発表を参照することを推奨する。

2012年からNCIS公式シールZoom
2012年からNCIS公式シール

組織図

NCISの職員2,500人のうち、約半数は民間の特別捜査官である。彼らは世界中の拠点で多種多様な任務を遂行するために訓練を受けている。NCISの特別捜査官は武装した連邦法執行機関の捜査官である。彼らはしばしば他の米国政府機関と連携する。NCISの特別捜査官は他の職員によってサポートされている。その中には、科学捜査監視、監視対策、コンピューター調査、物理的セキュリティ、ポリグラフ検査などのアナリストや専門家が含まれる。時には、NCISは外部の機関を利用することもある。例えば、スミソニアン博物館を利用して、骨格の特定を支援したことがある。

歴史

NCISのルーツは、1882年に海軍長官ウィリアム・H・ハントが署名した海軍省一般命令292号にある。これは海軍情報局(Office of Naval Intelligence:ONI)を設立するものであった。ONIは当初、外国船の特徴や武器に関する情報の収集、外国の航路や河川などの水路図作成、海外の要塞や工場、造船所の視察などを任務としていた。

アメリカが第一次世界大戦に参戦すると、ONIの任務は、スパイ活動、破壊工作、海軍の潜在的な敵に関する情報収集に拡大した。第二次世界大戦では、海軍にとって脅威となる破壊工作、スパイ活動、破壊活動などの調査を担当するようになった。

1966年、NISはONIの一部門として設立された。この新サービスは、海軍情報長官(Director of Naval Intelligence)の下に置かれた。1970年代初頭、USSイントレピッドに6ヶ月間、特別捜査官が配属された。これが「Special Agent Afloat」プログラムの始まりである。特別捜査官は1年間、空母に配属される。その後、水陸両用戦隊に配属された。1977年、米海兵隊の犯罪捜査官はNCISとの訓練を開始した。

1992年、海軍犯罪捜査局(NCIS)と呼ばれるようになり、海軍長官の直接指揮下に入った。独立した組織となり、長官は民間人である。1995年には、未解決事件の殺人課が設置された。

ミッション

NCISは海軍省の捜査・防諜部門である。NCISは地元連邦、外国の法執行機関と連携している。テロ、殺人、スパイ、放火、児童虐待、レイプなどの犯罪を捜査し、それに対抗する。海軍内では、重罪や統一軍事裁判法の下で処罰される犯罪を捜査している。NCISは海軍の重要な指導者を保護するサービスを提供している。また、米海軍の全隊員がどこに勤務していても保護できるようなサービスを提供している。


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