概要
統計的仮説検定では、誤った結論は主に2種類に分けて考えられます。第I種エラーは、帰無仮説が正しいのにそれを棄却してしまう場合で、一般に偽陽性と呼ばれます。第II種エラーは、対立仮説が正しいのに帰無仮説を棄却できない場合で、偽陰性と呼ばれます。第I種エラーが起こる確率は通常α、第II種エラーの確率はβで表されます。
確率、判断、検出力
研究者は、データを見る前に判断の規則を定めます。有意水準(α)は、第I種エラーを制御するためのしきい値です。ある結果のp値がαより小さければ、帰無仮説は棄却されます。統計的検出力は1 − βと定義され、指定した大きさの真の効果を、検定が正しく見つける確率を表します。検出力は、真の効果の大きさ、標本サイズ、ばらつき、そして選ばれたαに依存するため、実験計画の段階で考慮する必要があります。
トレードオフとエラーの抑え方
一方の誤りを減らすと、もう一方が増えることが多いため、研究者は文脈に応じてリスクのバランスを取ります。αを下げる、つまり帰無仮説を棄却しにくくすると、偽陽性は減りますが、標本サイズや測定の精度を改善しない限りβは高くなりやすくなります。βを下げて検出力を高める一般的な方法としては、標本サイズを増やす、測定精度を改善する、必要に応じてαを大きくする、などがあります。0.05のような慣用的なα値は広く使われていますが、選択は各応用分野での誤りの影響を踏まえて行うべきです。
例と比喩
- 医療検査:第I種エラーは、患者が健康なのに病気と診断すること(偽陽性)です。第II種エラーは、実際には病気があるのに見逃すこと(偽陰性)です。
- 法的な比喩:無実の人を有罪にすることは第I種エラーに、犯人を無罪にすることは第II種エラーに似ています。司法制度は、こうしたリスクのバランスを明示的に取っています。
- 品質管理:良品のロットを不合格にするのは第I種エラー、不良品のロットを合格にするのは第II種エラーです。
重要な区別とさらに読む
第I種エラーと第II種エラーは、帰無仮説と選ばれた判断規則に対して定義されます。つまり、個々の観測結果そのものではなく、検定手続きの性質です。多重比較、選択バイアス、あるいはモデルの指定ミスはエラー確率を変えうるため、追加の補正が必要になることがあります。αの選び方や検出力の計算についての形式的な扱いと実践的な指針は、統計学の教科書や入門的な参考文献を参照してください。