
ベクトルとは、大きさ(マグニチュード)と方向を持つ数学的な物体のことです。
例えば、何かが動いたときの距離や方向を示すのがベクトルです。道を尋ねたときに、人が「北に向かって1キロ歩いてください」と言えば、それはベクトルです。方向を示さずに「Walk one kilometer」と言われたら、それはスカラーになります。
ベクトルは通常、矢印で描きます。矢印の長さは、ベクトルの大きさに比例します。また、矢印が指す方向がベクトルの方向です。
基本的な表記と成分表示
ベクトルは太字の文字や上に矢印を付けて表すことが多いです(例:a、vや矢印付きで v→)。座標平面では成分で表します。2次元なら v = (vx, vy)、3次元なら v = (vx, vy, vz) のように書きます。
大きさ(長さ)と単位ベクトル
ベクトル v = (vx, vy) の大きさ(長さ、ノルム)は次の式で求められます。
|v| = √(vx2 + vy2)
例:v = (3, 4) のとき |v| = √(3² + 4²) = 5 です。大きさが1のベクトルを単位ベクトルと呼び、方向だけを示したいときに使います。
ベクトルの演算(初心者向け)
ベクトルは次のような基本演算ができます。
- 加法:同じ次元のベクトルどうしは成分ごとに足せます。例えば a = (ax, ay)、b = (bx, by) のとき a + b = (ax + bx, ay + by)。図では平行四辺形の法則や端点をつなぐ方法で表現できます。
- 減法:a − b = a + (−b)。負のベクトル (−b) は向きが逆のベクトルです。
- スカラー倍(実数倍):実数 k とベクトル v に対し k·v = (k vx, k vy)。k が負なら向きが反転します。
内積(ドット積)と角度
2つのベクトル a = (ax, ay)、b = (bx, by) の内積は
a · b = axbx + ayby
また内積は大きさと角度を使って次のようにも表せます。
a · b = |a| |b| cosθ(θ は a と b のなす角)
この式から、内積が0なら2つのベクトルは直交(垂直)していることがわかります。
外積(クロス積:3次元)
3次元ベクトルに対しては外積(クロス積)を定義できます。a × b は a と b に垂直なベクトルで、その大きさは
|a × b| = |a| |b| sinθ
方向は右ねじの法則(右手の法則)で決まります。外積は面積やトルクの計算に使われます。
重要な性質(まとめ)
- ベクトルの和は可換:a + b = b + a。
- 分配法則:k(a + b) = ka + kb。
- 内積はスカラーを返し、外積はベクトルを返す(3次元)。
- 零ベクトル(0)は大きさ0で向きが定義されない特殊なベクトルです。
- ベクトルが平行(または反平行)であれば一方はもう一方のスカラー倍で表せます(共線/共平面性)。
図でのイメージ
矢印の始点→終点をイメージしてください。加法は「矢印をつなげる」ことで合成され、スカラー倍は矢印の長さを伸縮させます。内積は矢印の向きが近いほど大きく、外積は二つの矢印で作られる平行四辺形の面積に相当します。
具体例と応用
- 物理学:速度、加速度、力などはベクトルで表されます(方向と大きさが重要)。
- 地図・ナビゲーション:方向と距離の指示はベクトル的な情報です。
- コンピュータグラフィックス:位置や法線、光の方向などをベクトルで計算します。
- データ解析・機械学習:特徴量をベクトルとして扱い、内積やノルムで類似度や大きさを測ります。
学ぶときのポイント
まずは2次元の成分表示と図による直感(矢印の長さと向き)を理解し、その後に内積・外積や応用例に進むと学びやすいです。簡単な計算(例:(3,4) の長さを求める、(1,2) と (3,4) の和を求める)を手でやってみると理解が深まります。
以上がベクトルの基本的な定義、性質、図での考え方と主な応用です。さらに詳しく学びたい場合は、座標変換、基底と次元、線形独立といった線形代数学の概念に進むと理解が広がります。

