ボーイング367-80は、アメリカの試作ジェット機であり、ボーイング社内では通称「ダッシュ80」と呼ばれていた。商用ジェット機の優位性を実証し、航空会社にアピールすることを目的に開発された機体である。
開発の背景と製作
1950年代初頭、ジェット旅客機の時代が到来しつつある中、ボーイングは短期間で汎用的な試作機を作り上げる計画を立てた。その成果が367-80で、設計から完成まで2年足らずで製作
設計と特徴
- 双発のターボジェット機として設計され、後の民間機・軍用機に共通する低翼配置と掃気(後退)翼を採用していた。
- 構造強度や操縦性を示すための設計余裕があり、その堅牢さと性能が後の量産機設計に活かされた。
- 外観や基本レイアウトは、のちに発展するボーイング707やKC-135の基礎となったが、量産機では旅客用・空中給油用に合わせた変更が施された。
実証と有名な出来事
ダッシュ80は単なる試作機にとどまらず、ボーイングの営業活動の核として実演飛行に頻繁に用いられた。とくに有名なのが、ボーイングの試験操縦士テックス・ジョンストンが実演の際に行ったバレルロール(空中で機体を一回転させる操縦)で、機体の強度と操縦余裕を印象づけ、当時の観衆や航空会社関係者に強いインパクトを与えた。
量産化と派生機
ダッシュ80の実績をもとに、ボーイングは旅客輸送向けに改良を加えてボーイング707を開発し、また同じ基本設計要素から空中給油機としてのボーイングKC-135ストラトタンカーを完成させた。707は民間旅客機市場で大成功を収め、KC-135は長年にわたり米空軍の主力空中給油機として運用された。ダッシュ80はこの2系統の系譜の出発点となった。
現存と保存
ダッシュ80は試作機としてたった1機だけ製作され、その後も保存のために残された。現在はバージニア州のワシントン・ダレス国際空港にあるスティーブン・F・ウドバー・ヘイジー・センター(スミソニアン国立航空宇宙博物館ウドバー=ヘイジー・センター)に収蔵・展示されている(展示場所)。航空史上重要な試作機として、訪れる人々に冷戦期の技術革新とジェット旅客機の黎明を伝えている。
意義
ボーイング367-80は、単一の試作機でありながらアメリカの民間航空と軍用機設計の流れを大きく変えた存在である。新しい推進方式と空力設計の有効性を実証し、商用ジェット時代の幕開けに決定的な役割を果たした点で、航空史上に残る重要な機体といえる。



