分配は代数学の概念であり、二項演算をどのように扱うかを示すものである。最も単純なケースは、数の足し算と掛け算である。例えば、算数では
2・(1+3)=(2・1)+(2・3)であるが、2/(1+3)≠(2/1)+(2/3)である。
最初の式の左辺では、2は1と3の和を掛け、右辺では、1と3をそれぞれ掛け、その後に積を足しています。これらは最終的に同じ答え(8)を与えるので、2の掛け算は1と3の足し算に分配されると言われている。上の2、1、3の代わりに任意の実数を入れても真の方程式が得られるので、実数の掛け算は足し算に分配されると言う.
分配法則の定義(一般形)
一般に、二つの二項演算「+」と「・」があるとき、演算「・」が「+」に対して分配的(分配される)であるとは、任意の元 a, b, c に対して次の等式が成り立つことを言います。
- 左分配則:a・(b+c) = (a・b)+(a・c)
- 右分配則:(b+c)・a = (b・a)+(c・a)
片側だけ成り立つ場合もあり、そのときは「左分配的」「右分配的」と言います。通常の数の乗法は左右両方の分配則を満たします(乗法は可換なので左分配=右分配となります)。分配性は環(ring)や体(field)の公理の一部として重要な役割を果たします。
具体例と反例
- 正しい例(実数):a(b+c) = ab + ac。たとえば 3(4+5) = 3·4 + 3·5 = 12 + 15 = 27。
- 減法への分配:a(b−c) = ab − ac。たとえば 2(7−3) = 2·7 − 2·3 = 14 − 6 = 8。
- 誤った想像(除算は分配しない):2/(1+3) ≠ 2/1 + 2/3。左辺は 2/4 = 0.5、右辺は 2 + 0.666… = 2.666… で異なります。除算は一般に足し算に対して分配的ではありません。
- べき乗も分配しない: (a+b)^2 ≠ a^2 + b^2(交差項 2ab が現れる)。
- 行列の例:行列の掛け算は行列の和に対して分配的です。つまり A(B+C)=AB+AC および (B+C)A=BA+CA が成り立ちます。ただし行列の掛け算は可換ではないことに注意してください(AB ≠ BA が一般的)。
- 論理演算の分配則:ブール代数では AND が OR に分配し、また OR が AND に分配します(A∧(B∨C) = (A∧B)∨(A∧C)、A∨(B∧C) = (A∨B)∧(A∨C))。
分配法則の使いどころ
- 式の展開と因数分解:分配法則は多項式の展開((x+2)(x+3) を展開して x^2+5x+6 にするなど)や因数分解(共通因数をくくり出す)に用いられます。
- 計算の簡略化:例えば 25×16 = 25×(10+6) = 250 + 150 = 400 のように、心算や計算プログラムで効率よく計算できます。
- 抽象代数での構造定義:環や体では分配律が基本公理の一つで、加法と乗法の関係を定義します。
注意点と補足
- 「分配する」「分配される」という表現は直感的で便利ですが、形式的には上に示した等式(左分配・右分配)を満たすかどうかで判断します。
- ある演算が別の演算に対して分配的であるかは、その代数系や演算の定義に依存します。たとえば実数の除算やべき乗は加法に対して分配的ではありません。
- 分配法則は計算規則の一つであり、応用範囲は算術から線形代数、抽象代数、論理学にまで及びます。
分配法則を理解すると、式の変形や証明、計算の工夫がずっと楽になります。上の基本例や行列・論理の例を試して、どの演算がどの演算に対して分配的かを確認してみてください。