概要
空集合とは、要素を一つも含まない集合のことです。日常的な記法では、記号 ∅ で表すほか、波かっこを用いて {} と書くこともあります。空集合は現代の集合論において基本的な対象であり、集合という言語の中で「何もない」ことを標準的に表す役割を持ちます。要素を含まない任意の集まりは、空集合と同一視されます。簡単な例としては、2 と 3 のあいだにある整数の集合や、2 より小さい素数の集合が挙げられます。
記法と視覚的な形
空集合を表す記号にはいくつかの種類があります。単一文字の ∅ は広く使われ、{ } や {} は要素が 0 個であることを明示する形として用いられます。その他、∅ のような字形や、空の波かっこに見える活字上の変種も見られます。これらの記法の図示は、次の画像を参照してください: 。なお、「null set(ヌル集合)」という語は口語的には使われますが、測度論のような分野では意味が曖昧になることがあります。
基本的な論理・集合論的性質
空集合には、数学のさまざまな場面で使われる初歩的で重要な性質がいくつもあります。
- 一意性: 空集合はただ一つしかありません。要素を持たない二つの集合は、定義により等しいものとして扱われます。
- 濃度: 濃度は 0 です。
- 部分集合関係: 空集合はあらゆる集合の部分集合です。任意の集合 A に対して、∅ ⊆ A が成り立ちます。
- 和集合と共通部分: 任意の集合 A について、A ∪ ∅ = A、A ∩ ∅ = ∅ です。
- べき集合: べき集合 P(∅) はちょうど 1 つの要素、すなわち空集合自身を含みます。P(∅) = {∅} です。
- 直積: ∅ と任意の集合の直積は空です。∅ × A = ∅ となります。
- 関数: 定義域が空集合である関数はただ 1 つだけ存在します(空関数)。
論理と空虚な真
空集合のすべての要素について述べる文は、自動的に真になります。これは「空虚な真」と呼ばれます。たとえば、「2 と 3 のあいだにある整数はすべて 7 より大きい」という全称文は、その範囲に反例となる整数が存在しないため真です。これに対して、空集合の要素が少なくとも 1 つあることを必要とする存在文は偽になります。
歴史的な注記と記法の由来
空集合を表す独立した記号が標準的に用いられるようになったのは、20 世紀の数学文献においてです。記号 ∅ はフランスの数学者たちの集まりや基礎論の文献を通じて広まり、ギリシャ文字の phi ではなく、スカンディナヴィアの文字 Ø に由来すると一般に説明されます。多くの文脈では、空集合記号と似た字形を混同しないよう注意が払われます。
さまざまな分野での役割と例
空集合は数学の広い範囲に現れ、その形式的な存在は定義や証明を簡潔にします。位相幾何学では空集合は開集合でも閉集合でもあり、代数学では集合演算の下で予測可能にふるまいます。組合せ論や論理学では、明示的に扱うべき境界事例として現れます。具体例としては、実数の範囲で x^2 + 1 = 0 の解集合が空であること、また、矛盾を強制する条件がない区間上の連続関数の集合が(多くの場合)空でないことなどが挙げられます。
関連する区別と注意点
似た語には注意が必要です。測度論でいう「null set(零集合)」は通常、測度 0 の集合を意味し、点を含んでいてもかまいません。これは、何も含まない空集合とは別物です。定義や形式的構成を確認するとき、たとえば自然数をフォン・ノイマン順序数によって構成し 0 = ∅ と置く場合など、空集合は単なる付随物ではなく基礎的な役割を担います。形式的な側面や応用の概説は、集合論の入門書や論理学・位相の資料を参照するとよいでしょう(数学の概説、空集合の記号、整数)。
論理と記法に関する補足として、∅ のすべての要素についての文は 論理命題 の一例であり、空虚な真として真になります。この性質はしばしば 空虚な真 の項目で論じられます。共通の字形 ∅ は、スカンディナヴィアの文字 Ø と関係する言語的な由来を持つとされます。簡単な視覚的参照として、ここに図があります: 。