HII領域(イオン化水素領域)とは?星形成の仕組み・特徴・代表例

HII領域(イオン化水素領域)の基礎解説:星形成の仕組み・特徴・観測のポイント、代表例(オリオン星雲・30ドーラドゥス・NGC604)をやさしく紹介

著者: Leandro Alegsa

HII領域とは、水素からできた巨大な青い星がある領域のことです。この領域は、イオン化された原子状の水素からできていることにちなんで名付けられました。H IIと呼ばれています。

星は水素ガスの大きな雲の中で形成されています。ここで形成された短命の青い星は、大量の紫外線を放出します。これが周囲のガスをイオン化させます。

HII領域は、数百光年にも及ぶことがあります。最初に知られているHII領域は、1610年に発見されたオリオン星雲です。これらの領域は、非常に多様な形をしています。また、馬頭星雲のような奇妙な形をしていることもあります。

H II領域は、数百万年の間に数千個の星を誕生させます。最終的には、これが星団を形成します。最終的には、超新星爆発と、最も質量のある星からの強い恒星風によって、H II領域のガスが吹き飛ばされます。その結果、プレアデス星団のような星団が生まれます。

銀河系外銀河のHII領域の研究は、他の銀河との距離や化学組成を明らかにするのに役立ちます。

渦巻き銀河不規則銀河には多くのHII領域がありますが、楕円銀河にはほとんどありません。天の川銀河のような渦巻き銀河では、HII領域は渦巻きの腕の中にありますが、不規則銀河ではランダムに分布しています。

銀河の中には、何万個もの星を持つ巨大なHII領域を持つ銀河もあります。例えば、大マゼラン雲の中にある30ドラダス領域や、トライアングルム銀河のNGC604などがその例です。

仕組み(イオン化のプロセス)

HII領域は、質量の大きいO型やB型の若い恒星が放つ高エネルギーの紫外線(エネルギーが13.6 eV以上)によって中性の水素原子が電離してできます。これにより電子と陽子が生成され、再結合する際に特定の波長の光(特にHα線)を放射します。領域の基本的な理論モデルとしては、ストロンベリ半径(Strömgren sphere)と呼ばれる、電離と再結合の平衡で決まる領域の大きさの考え方があります。

特徴(物理量と形態)

  • 温度と密度:電子温度は一般に約7,000〜10,000 K程度、電子密度は種類によって幅があり、希薄なものは数個/cm3、密な「超コンパクトHII領域」では10^4〜10^6個/cm3に達することもあります。
  • 大きさ:コンパクトなものは0.1パーセク未満、拡がったものは数十〜数百パーセク(数十〜数百光年)に及ぶことがあります。
  • 寿命:典型的には数百万年。中心の高質量星が短寿命のため、最終的には超新星や恒星風でガスが吹き飛ばされ消滅します。
  • 形状の多様性:恒星風、超新星、周囲の分子雲の不均一性などにより、泡状、吹き飛ばされた縁をもつもの、フィラメントや暗黒星雲を伴う複雑な形になります(例えば馬頭星雲)。

星形成との関係

HII領域は「最近形成された高質量星の存在」を示すサインであり、その周囲では続く星形成が引き起こされることがあります。恒星の光圧や恒星風が周辺の分子雲を圧迫して新たな密度の高い領域を作り、これが更なる星形成を誘起する—いわゆる「誘起(トリガー)された星形成」が観測されます。一方、強い放射や風がガスを吹き飛ばして星形成を抑える場合もあります。

観測手法と利用

HII領域は様々な波長で観測されます。可視光ではHα(656.3 nm)などの輝線が強く目立ち、[O III]、[N II]、[S II]などの輝線スペクトルも特徴的です。これらの輝線強度比から電子温度や金属量(酸素や窒素の存在量)を推定できます。また、電波では自由放射(free–free)や回転・遷移による輝線が観測され、赤外線では塵による吸収・再輝起が見られます。

天文学では、Hαや赤外の輝度を用いて銀河全体の星形成率(SFR)を推定します。さらに、HII領域のスペクトルから得られる金属量は銀河の化学進化を調べる重要な手がかりとなります。

典型的な現象・用語

  • ストロンベリ球:中心星の紫外線により作られる理想的な電離球。
  • シャンパンフロー:密度勾配のある分子雲の端で、電離ガスが高温・高圧で一方向に流れ出す現象。
  • 恒星風バブル:複数の高質量星の風や超新星が作る空洞構造。

代表例

記事中でも触れた通り、身近な例としてはオリオン星雲(M42)があります。銀河外では、大マゼラン雲の30ドラダス領域(タランチュラ星雲)や、トライアングルム銀河のNGC604のような巨大なHII領域がよく知られています。これらは数万から数十万の若い星や高エネルギー現象を含み、星形成の「巨大な工場」として注目されています。

まとめ(ポイント)

  • HII領域は高質量星の紫外線で電離された水素ガスの領域で、Hαなどの輝線で明るく見える。
  • サイズ・密度・形は多様で、寿命は数百万年程度。恒星風や超新星で最終的にガスは除去される。
  • 観測的には星形成率や金属量を調べる重要な指標となる。
  • 代表例にオリオン星雲、30ドラダス、NGC604などがある。
トライアングルム銀河の巨大なHII領域NGC604Zoom
トライアングルム銀河の巨大なHII領域NGC604

大マゼラン雲の巨大なHⅡ領域であるタランチュラ星雲の一部Zoom
大マゼラン雲の巨大なHⅡ領域であるタランチュラ星雲の一部

質問と回答

Q: HII地域とは何ですか?


A: HII領域とは、水素から巨大な青い星が作られる領域で、水素が電離した原子状であることから、この名前がつきました。

Q: どのように形成されるのですか?


A: 水素ガスの大きな雲の中で星が作られ、そこで作られた短寿命の青い星が大量の紫外線を放ち、周囲のガスを電離させるからです。

Q: HII領域はどのくらいの大きさになるのですか?


A: 数百光年の大きさです。

Q: HII領域が最初に発見されたのはいつですか?


A: 1610年に発見されたオリオン大星雲が最初と言われています。

Q: H II 領域は、時間とともにどうなるのですか?


A: 数百万年かけて、その領域で何千もの星が生まれ、最終的には星団になります。その後、超新星爆発や大質量星からの強い恒星風によって、HII領域のガスが吹き飛ばされ、プレアデス星団のような星団になります。

Q: 銀河系外の H II 領域はどこにあるのですか?


A: 銀河系外 H II 領域は、宇宙の遠方に存在し、他の銀河の距離や化学組成の決定に役立っています。天の川銀河のような渦巻銀河は渦状腕に集中していますが、不規則銀河は空間全体にランダムに分布していることが多く、渦巻銀河や不規則銀河には多くのHII領域があります。

Q: 特に大きな H II 領域はあるのですか?



A はい、大マゼラン雲の「ドラドス座30番星」や、さんかく座銀河の NGC604 など、数万個の星が集まった巨大な H II 領域を持つ銀河があります。


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