シラミ(単数形:louse)は、毛の中に生息する翅のない昆虫である。多くの種が特定の宿主にのみ寄生し、鳥類の全種と哺乳類目のほとんどに外部寄生する。ただし、単孔類と少数の真獣類、すなわちコウモリ(Chiroptera)、クジラ、イルカ、ネズミイルカ(Cetacea)、およびパンゴリン(Pholidota)には寄生しない。世界で約3,000以上が知られており、そのうちヒトに寄生するものは主に3種類に分類される。

分類と主な種類(ヒトに寄生するもの)

  • 頭ジラミ(Pediculus humanus capitis)— 頭部の毛に寄生し、特に子どもで多い。
  • 体ジラミ(衣類ジラミ)(Pediculus humanus corporis)— 衣服の縫い目や布地に産卵し、皮膚に移動して吸血する。衛生状態が悪い状況で流行する。
  • 陰毛ジラミ(性器ジラミ)(Pthirus pubis)— 主に陰毛に寄生し、性的接触で伝播する。

形態と生活史

  • シラミは翅がなく、体は扁平で、脚は毛や羽をつかむのに適応している。成虫の大きさは種類により異なるが、一般に1–4 mm程度である(頭ジラミは約2–3 mm、陰毛ジラミはやや短め)。
  • 生活史は卵(ニット/nit)、複数の若齢(幼虫)期を経て成虫になる不完全変態で、温度や種類により異なるが、通常2〜4週間で1世代が完了する。
  • メスは毛や繊維に卵を強固に接着して産むため、洗っただけでは完全に除去できないことがある。
  • シラミには主に「血を吸う」吸血性のもの(主に哺乳類に寄生)と、「かみ砕いて食べる」咀嚼性のもの(主に鳥類に寄生)という違いがある。

ヒトへの影響と公衆衛生上の重要性

  • かゆみや掻破による皮膚炎が最も一般的な症状で、強い掻痒は睡眠障害や日常生活の支障をきたすことがある。
  • 体ジラミは衛生状態の悪い環境で増殖しやすく、歴史的に発生した流行では発疹チフス(リケッチア)、回帰熱(ボレリア)やトレンチ熱(バルトネラ)などの病原体を媒介した例がある。頭ジラミや陰毛ジラミは一般に病原体の媒介とは無関係とされるが、二次感染のリスクはある。
  • シラミは宿主特異性が高く、ヒトに寄生する種は主にヒト間で伝播する。動物由来のシラミがヒトに長期定着することは稀である。

感染経路と診断

  • 感染経路:頭ジラミは頭と頭の直接接触が主な伝播経路で、学童の集団内でよく広がる。帽子や櫛、枕などの共有でも起こり得るが頻度は低い。陰毛ジラミは主に性的接触で伝わる。体ジラミは衣類や寝具を介して広がりやすい。
  • 診断:生きた成虫またはふ化可能な卵(ニット)を実際に確認することが確実な診断法である。ニットは毛軸に近い位置に固着しているのが特徴で、抜けた髪に付着している空の殻(孵化済みのニット)と区別する必要がある。

治療と駆除

  • 治療法には薬剤的療法と物理的除去がある。市販または処方の殺虫剤(例:ペルメトリン、マラチオン、または医師の指導による経口イベルメクチンなど)が用いられるが、薬剤抵抗性の問題があるため、使用法・用量・再塗布の間隔は製品や医師の指示に従うこと。
  • くし(細目のコーム)で生きたシラミと卵を機械的に除去する方法は有効で、薬剤と併用すると再発を防ぎやすい。
  • 体ジラミの場合は衣類や寝具の高温洗濯(60°C以上)・高温乾燥、または密閉して数日間保管することで駆除できる。陰毛ジラミや頭ジラミでも寝具や衣類の洗濯や掃除が推奨される。
  • 家庭内の対策として、共有の帽子や櫛を避け、枕やソファーを掃除機で清掃すること、濃厚接触者の検査・治療を行うことが重要である。

予防と注意点

  • 頭ジラミ:頭と頭が接触するような状況(学校、遊び場など)での直接接触を避ける、個人用の櫛や帽子を共有しない。
  • 陰毛ジラミ:性的接触により伝播するため、感染が疑われる場合は性的パートナーにも検査・治療を促す。
  • 体ジラミ:衛生管理と定期的な洗濯・着替えを行うことで予防できる。集団生活や避難所などでは特に注意が必要。
  • 薬剤の自己判断による過剰使用や誤用は避け、疑問があれば医療機関に相談すること。

シラミは日常的に見られる寄生昆虫であるが、適切な診断と対策を取れば駆除・予防は可能である。特に集団環境や衛生状態が不十分な場面では早めの対応が重要である。