ノーザン・ンデベレ語(Northern Ndebele、英語: /ɛndəˈbiːliː//)は、アフリカ南部で話されるバントゥ系の言語の一つです。一般にはシンデベレ語(Sindebele)、ジンバブエのンデベレ語(Zimbabwean Ndebele)、北ンデベレ語(North Ndebele)、また以前の呼称であるマタベレ語などと呼ばれます。アフリカの言語に属し、バントゥ語族のヌグニ語グループに位置づけられます。主にジンバブエのアマムンデベレ(amatabele / Ndebele / Matabele)の人々によって話され、現地ではsiNdebele、または単にNdebeleと称されます。
ンデベレ語は南アフリカで話されているズールー語に系統的に近く、語彙や文法上の類似が多く見られます。歴史的にはジンバブエのンデベレ族はズールー族の指導者ムジリカッツィ(Mzilikazi)の子孫です。ムジリカッツィとその一族は19世紀初頭のムフェケイン(Mfecane)と呼ばれる動乱の時期にクワズールーを出発し、北へ移動して現在の南アフリカ北部からジンバブエ、ボツワナに至る地域へと定住しました。この歴史的経緯により、ズールー語と強い関連を持ちつつ、移住先の言語や文化の影響も受けています。
話者数は資料により異なりますが、ジンバブエ国内でおよそ数十万〜数百万人規模と推定されます。ンデベレ語は地域社会で日常的に使われるほか、教育、宗教(聖書や礼拝)、放送(ラジオ)や印刷物にも用いられています。ジンバブエでは近年の憲法改正により多言語主義が強調され、ンデベレ語も公的場面での使用が認められる言語となっています。
音韻的には、ンデベレ語は典型的なングニ語群の特徴を示します。子音や母音の体系、名詞クラス(名詞接頭辞による分類)、豊かな接辞体系(動詞の接頭辞・接尾辞による屈折)を持つほか、ズールー語同様にクリック音(顎裂音)を語彙に取り入れています。また、声調(トーン)の要素があり、アクセントや意味区別に重要な役割を果たす場合があります。表記はラテン文字に基づく正書法が用いられ、クリック音は c, q, x などで表されることが多い点もズールー語に似ています。
北部のンデベレ語と南部のンデベレ語(主に南アフリカで話されるもの)は、互いに近縁ではありますが同じ言語の単なる方言的バリエーションではありません。両者はどちらもバントゥ語ですが、北部ンデベレ語はズールー語に非常によく似ており、語彙や文法の共通性が高いのに対し、南部ンデベレ語は南アフリカ高原のソト語やツワナ語などの影響を受けている点で相違があります。そのため、話者同士の相互理解度は地域や個々の言語接触の程度によって異なります。
今日、ンデベレ語は地域文化の重要な担い手であり、民謡、口承文学、宗教音楽、地域メディアなどを通じて継承されています。一方で都市化や英語・ショナ語など他言語との接触により言語習得環境が変化しているため、言語教育や記録保存、標準化された教材の整備などが課題となっています。
- 分類: バントゥ語族、ングニ(ヌグニ)グループ。
- 主な分布: ジンバブエ北西部・中西部を中心に、南アフリカ北部やボツワナにも話者が存在。
- 特徴: 名詞クラス体系、クリック音の使用、声調の存在、ズールー語との近縁性。
- 文字・教育: ラテン文字を基にした正書法が用いられ、宗教文献や教育教材、放送でも使用される。

