原子力発電所の炉心溶融(メルトダウン)とは:原因・影響・コリウムと対策

原子力発電所のメルトダウン(炉心溶融)を原因・影響・コリウムの危険性と実践的対策までわかりやすく解説。

著者: Leandro Alegsa

原子力発電所のメルトダウンとは、原子炉の重大な損傷で、炉心(燃料が並んでいる原子炉の中央部)が十分に冷却されずに高温になり、核燃料や周辺構造が融解する現象を指します。一般の人や報道でしばしば誤って使われる「核融合」という言葉と混同されることがありますが、ここで問題になるのは核反応の種類ではなく、あくまで燃料が溶ける「炉心溶融事故」です。冷却不良は、冷却装置の故障、外部電源喪失、配管破断、設計上・運用上のミス、自然災害など複数の原因で起こり得ます。

原因(なぜメルトダウンが起きるのか)

  • 冷却喪失:炉心を冷却するための水や冷却材の供給が途絶えると、燃料の温度は上昇します。
  • 電源喪失:ポンプや制御装置を動かす外部電源や非常用ディーゼル発電機が使えなくなると、冷却系が機能しなくなります。
  • 機器故障・配管破損:配管の破断や弁の不具合で冷却材が抜けることがあります。
  • 設計・運用ミス:安全システムの不備や人的ミスで事故が深刻化する場合があります。
  • 自然災害:地震、津波、洪水などが施設を破壊して冷却系を失わせることがあります。

崩壊熱と「停止後の発熱」

原子炉は運転を停止しても、燃料中に蓄えられた放射性核種の崩壊(崩壊)により熱を出し続けます。これを「崩壊熱」と呼び、停止直後は運転時のごく短時間の停止でも高い熱が残るため、冷却が不十分だと炉心温度は上昇して溶融に至ります。したがって、炉の安全には停止後の継続的な冷却が不可欠です(停止していてもなお危険が残る理由)。

メルトダウンがもたらす影響

  • 放射性物質の放出:燃料の被覆が破れ、核分裂生成物が環境に放出される可能性があります。これらは放射性物質であり、周辺の土壌、水、食物連鎖に蓄積します。
  • 局所的な高温化と構造損傷:融けた燃料や構造材料が容器や基礎を損傷し、格納容器を破って外部に拡散する危険があります。
  • 水素爆発の危険:燃料被覆材から溶け出したジルコニウムなどが高温で冷却水と反応し、可燃性の水素ガスを発生させます。水素が蓄積すると爆発を引き起こし、建屋や格納容器を損傷して放射性物質の放出を促進します。
  • 人への影響:大量被曝は急性放射線症を引き起こし、長期的には発がんリスクの増加など健康被害が問題になります。被曝リスクは距離、時間、遮蔽によって変わります。
  • 長期の汚染と廃棄物問題:汚染された土壌や建材は除染・処理が必要で、処理・保管には長期間と膨大なコストがかかります。コリウムに含まれる放射性核種は、何世紀にもわたって高い放射能を持ち続けることがあります。

コリウム(corium)とは

メルトダウンで生じる融融混合物を一般に「コリウム(corium)」と呼びます。これは融けた核燃料(ウランやプルトニウム)、核分裂生成物、被覆材(例:ジルコニウム)や構造材料が混ざった高温の溶融物です。コリウムは非常に高温で流動性を持ち、炉心や圧力容器、格納容器などに甚大な損傷を与える可能性があります。冷却されると溶岩状に固結しますが、内部には高濃度の放射能と残留熱があり、取り扱いは極めて困難です。

予防と事故対策(施設側の対策)

  • 多重・多様な冷却系と電源:冗長化された冷却系、非常用電源やバッテリー、外部との連携で冷却を維持します。
  • 受動的安全設計:外部電源や機器が使えなくても自然循環や重力で冷却が続く設計(受動安全)を導入する例が増えています。
  • 格納容器とフィルタ付きベント:格納容器は放射性物質の外部放出を抑える主要防御です。必要時にはフィルタ付きで圧力を下げるベントを行い、放射性物質の外部放出を最小化します。
  • 水素対策:水素の発生を抑える材料選択、発生した水素を燃焼させないようにする触媒式再結合器(PAR)などを配置します。
  • 運用・人材教育:詳細な事故管理手順(Severe Accident Management)、定期点検、訓練で人的ミスや緊急対応の遅れを防止します。

事故発生時の対応(初期対応〜長期対策)

  • 炉心冷却の最優先:注水や冷却材供給で温度上昇を食い止め、コリウム生成を抑えることが最重要です。場合によっては海水注入のような非常手段も用いられます(反応性制御の観点からホウ素の注入も行われることがあります)。
  • 放射性物質の封じ込め:格納容器や建屋での封じ込め、フィルタ付きベント、制御された排気が実施されます。
  • 避難・予防措置:周辺住民への避難、屋内退避、飲食物の摂取制限、必要に応じてヨウ化カリウムの配布などが行われます(投与は当局の指示に従うことが重要)。
  • 長期的な復旧作業:コリウムの位置特定、冷却と固化、遠隔操作ロボットによる除去、設備の解体・除染、廃棄物処理と長期保管などが必要です。これらは数年〜数十年単位の作業になります。

代表的な事例と教訓

  • スリーマイル島(米国、1979年):部分的な炉心溶融が起きたが、格納容器は保たれ、深刻な公衆被曝は限定的でした。運用・情報公開の重要性が指摘されました。
  • チェルノブイリ(旧ソ連、1986年):炉心溶融に続く爆発と火災で大量の放射性物質が大気中に放出され、広範な環境被害と健康被害を生みました。設計、運用、緊急対応の致命的な欠陥が露呈しました。
  • 福島第一(日本、2011年):大津波による電源喪失で複数の炉が冷却を失い、炉心溶融とコリウム生成、放射性物質の海洋・大気放出が起きました。自然災害対策と多重防護の重要性が改めて示されました。

一般の人へのポイント

  • 日常的には過度に心配する必要はありませんが、万が一の際は当局の指示(避難、屋内退避、飲食物制限、ヨウ化カリウム摂取の有無など)に従ってください。
  • 被曝は距離・時間・遮蔽で低減できます。できるだけ現場から離れ、短時間で避難することが重要です。
  • 事故後の情報は公式発表を優先し、デマや未確認情報に惑わされないようにしてください。

炉心溶融(メルトダウン)は技術的・社会的に重大なリスクを伴いますが、現代の原子力安全技術や厳格な運用、教訓に基づく対策によりその発生確率と影響を小さくする努力が続けられています。事故が起きた場合の対応は複雑で長期にわたり、専門的な評価と高度な設備を必要とします。

2011年のメルトダウン後の福島第一原子力発電所。Zoom
2011年のメルトダウン後の福島第一原子力発電所。

原子炉で溶けた燃料棒。
原子炉で溶けた燃料棒。

メルトダウン

世界各地では、いくつかの原子力発電所のメルトダウンが起きています。中には軽いものもありますが、深刻なものはほとんどありません。原子力発電所のメルトダウンでは、放射線障害で人が死ぬこともあります。

最後の事故は、2011年3月に発生した福島原発事故です。福島第一原子力発電所では、バックアップ用のディーゼル発電機が津波で破壊されたため、4基の原子炉に冷却上の問題が発生しました。

1986年、チェルノブイリウクライナ)というところで、核メルトダウンが起きました。このとき、欠陥のある原子炉の近くの町や村に住んでいた人たちは全員、遠くに移住しなければなりませんでした。チェルノブイリのメルトダウンでは、「象の足」と呼ばれるコリウムの塊ができ、これは世界で最も放射性の高い物体の1つです。

大型潜水艦の多くは、艦内の原子炉から電力を得ている。これが原子力潜水艦です。ロシアの原子力潜水艦の中には、核メルトダウンを起こしたものもある。

時には、すぐに核のメルトダウンが起こることもある。例えば、チェルノブイリの原子炉のように。時には、核メルトダウンが起こるまでに何時間もかかることがあります。例えば、スリーマイル島米国ペンシルバニア州)での核メルトダウンは、起こるまでに何時間もかかりました。

核のメルトダウンは「チャイナ・シンドローム」と呼ばれることがあります。これは、文字通りの意味ではなく、原子炉の炉心が地球を突き抜けて「中国まで」溶けていくというシナリオを指します。映画「チャイナ・シンドローム」はこのシナリオにちなんでいる。現実の世界では、このようなことは起こり得ません。炉心が地殻を突き破って溶けることはないし、仮に地球の中心まで溶けたとしても、重力に逆らって地表に戻ってくることはないだろう。

質問と回答

Q: 原子炉のメルトダウンとは何ですか?


A: 核融合炉の故障で、燃料棒の入った原子炉の中間部分が適切に冷却されず、内部の物質が高温になり、溶け始めることです。

Q:メルトダウンの別名は何ですか?


A: 原子力技術者は通常、炉心溶融事故と呼んでいます。

Q: 原子炉はどのようにしてメルトダウンを起こすのでしょうか?


A: 原子炉は、冷却システムの故障やその他の欠陥によってメルトダウンを起こすことがあります。

Q:メルトダウンすると、原子炉内の物質はどうなるのですか?


A:原子炉内のウランやプルトニウムなどの物質が高温になり、溶融したり溶解したりします。

Q:コリウムとは何ですか?


A:コリウムとは、原子炉がメルトダウンした際に発生するウランやプルトニウムなどの物質、核分裂生成物、燃料棒被覆管の溶融ジルコニウムなどの混合物が液体化したものです。

Q:コリウムはなぜ危険なのですか?


A: コリウムは高放射能であり、メルトダウン後何世紀にもわたって危険な状態を維持します。

Q: メルトダウン時のジルコニウムの危険性は何ですか?


A: ジルコニウムは高温になると冷却水と反応し、可燃性の水素ガスを作る可能性があるため危険です。


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