Prelature of the Holy CrossとOpus Dei(通称:オプス・デイ)は、ローマ・カトリック教会に属する機関で、ラテン語の名称「Opus Dei」は「神の仕事」を意味します(ラテン語由来)。オプス・デイは「すべての人が日常生活の中で聖性を目指すことができる」と説き、信仰と職業生活の結びつきを強調する点が特徴です。つまり、修道生活や司祭任務だけでなく、一般の職業や家庭生活そのものが神への奉仕(聖化)の場となりうる、という教義を中心に据えています。
オプス・デイは1928年にローマ・カトリックの司祭であった聖ジョセマリア・エスクリバ(Josemaría Escrivá)によって創設され、1950年に教皇ピウス12により公的な承認を受けました。その後、1982年に教皇ヨハネ・パウロ2世によって「個人的前座(Personal Prelature)」に定められ、これによりオプス・デイは地理的な教区境界に縛られず、世界中にいる会員に対する霊的・司牧的ケアを行うことが可能になりました。現在は約80か国に広がり、会員数はおよそ85,000人前後と報告されています(報告時期により数字は変動します)。
起源と発展
ジョセマリア・エスクリバはスペイン出身の司祭で、創立当初から「平凡な生活の中で神と出会うこと」を説きました。第二次世界大戦後から欧州・アメリカ・ラテンアメリカへと広がり、教育機関や社会事業を通じて影響力を拡大しました。大学、学校、研究所、病院といった諸機関を設立・支援しており、特にスペインのナバーラ大学(University of Navarra)との関係はよく知られています。
教義と霊性(スピリチュアルティ)
- 職業の聖性:日常の仕事や家庭生活を神の前で行うことで聖性に到達すると教えます。
- 継続的な霊的形成:祈り、聖体拝領、告解、精神的指導(スピリチュアルディレクション)、読書(聖書や教父・教会文献)を通じて会員の霊的成長を促します。
- 個人的献身と奉仕:会員は個々の生活状況に応じて教会と社会への奉仕を行い、他者の救いに寄与することが求められます。
- 苦行(モーティフィケーション):一部の会員は小さな苦行(例:痛みを与える儀具や節制)を実践することがありますが、これはあくまで個人的選択に基づくものであり、医学的に問題がある場合は推奨されません。
組織構造と会員区分
オプス・デイは前座(プレラトゥーラ)として、教皇庁の下に位置し、最高責任者は「プレラテ」(前座長)です。前座は司祭や一般会員に対して霊的指導・司牧を行います。組織内には事務局や形成センター、学校などの機関が置かれています。
会員には主に次のような区分があります:
- 聖職者(Priests):オプス・デイに属する司祭たち。教会内外で司牧活動を行います。
- 数詞会員(Numeraries):独身で献身的に活動する会員。多くはオプス・デイのセンターで共同生活を送り、職業生活を通じて奉仕します。
- 準数詞会員(Associates/Associate Numeraries):独身だが個人的な事情で共同生活をしない会員。職業生活を通してオプス・デイの教えに従って活動します。
- 超数詞会員(Supernumeraries):既婚者が多く、家庭生活を通じて教えを実践する一般会員。オプス・デイの最大の構成層です。
- 協力者(Cooperators):正式な会員ではないものの、経済的・教育的・社会的な支援を行う人々。非カトリックや非洗礼者が含まれることもあります。
日常的な実践と形成
会員は日々の祈り(朝の祈り、ロザリオ、夕の祈りなど)、ミサへの参加、月例の霊的訓話や週間の祈祷会、定期的な告解と精神的指導を重要視します。また、職場における倫理・良心に基づく行動や社会奉仕、教育活動を通じて信仰を具体化します。若年層向けの教育プログラムや社会貢献プロジェクトにも力を入れています。
論争と批判
オプス・デイはその性格上、長年にわたり賛否両論を呼んできました。主な論点は次の通りです:
- 秘密主義や排他性の指摘:組織運営や内情に関する透明性が不十分だとする批判がありますが、オプス・デイ側は教会法に準拠した運営と会員の個人的領域の尊重を主張しています。
- 政治的・社会的影響力:一部で政治や経済への影響力行使について懸念が示されることがあります。ただし、オプス・デイは公式には政党や政治運動に組織として関与しないことを表明しています。
- 入会勧誘や人間関係の在り方:勧誘方法や会員に対する指導が過度に厳しいという批判が過去に出されました。一方で支持者は、霊的指導や共同生活が個々の成長に資すると反論しています。
- 苦行の実践:シリーチェ(小さな鎖の輪)など身体的苦行の実践が注目され、メディアで取り上げられることがあります。オプス・デイはこれを個人的・自発的な実践と位置づけ、強制ではないと説明しています。
また、フィクション作品(例:「The Da Vinci Code」など)による誇張や誤解が広まったこともあり、これに対しては教会側やオプス・デイ関係者が反論し、事実に基づく説明を行ってきました。
評価と現在の状況
支持者はオプス・デイを「職業を通じて平凡な生活の聖化を目指す運動」と評価し、多くの教育・慈善活動や個人の霊的成長に寄与してきた点を強調します。反対・批判の立場からは、組織運営の透明性や会員の自由、社会的影響力のあり方についての検討が続いています。
創設者ジョセマリア・エスクリバは1992年に列福、2002年に列聖され(教皇ヨハネ・パウロ2世による列聖)、これを支持者はオプス・デイの霊的貢献の教会による承認と受け取っています。統計や活動範囲は年々変わるため、最新の会員数や具体的活動についてはオプス・デイの公式発表や公的資料での確認が望まれます。
まとめ:オプス・デイは「日常の労働と生活を通じて聖性を実現する」ことを中心理念とするカトリックの組織であり、教育や福祉分野での貢献と同時に、組織運営や実践方法をめぐる議論も伴ってきました。信仰のあり方、教会内での役割、社会的影響力についての評価は多様であり、事実に基づく理解と相互の対話が重要とされています。

