超越数は実数または複素数で、代数的ではない数、つまり有理係数をもつ非零多項式方程式の解にならない数である。具体的には、x が超越数であるとき、整数 a_n, ..., a_0 に対して a_n x^n + ... + a_1 x + a_0 = 0 を満たす有限個の整数列は存在しない。この定義により、超越数は代数数(そのような多項式の根)と区別され、無理数の中でも特に厳密な位置づけを与えられる。すべての超越数は無理数だが、無理数の大半は超越数ではない。
特徴づけと基本性質
厳密には、複素数 z が超越数であるとは、整数係数(同値に有理係数)の非零多項式 P に対して P(z)=0 となるものが存在しないことをいう。代数数全体は、整数係数多項式を列挙できるため可算である。したがってその補集合である超越数全体は非可算であり、実数直線上ではルベーグ測度の意味で完全測度をもつ。つまり測度論の立場では、実数の「ほとんどすべて」が超越数である。
歴史的展開
ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツやレオンハルト・オイラーのような研究者は、代数方程式の根ではない数の可能性を認識していたが、その存在を明示的に証明するのは後のことであった。ジョゼフ・リウヴィルは1844年、現在リウヴィル数と呼ばれる数を構成し、それらが有理数で極めてよく近似できることを利用して、超越数の最初の具体例を与えた。これにより、超越数の存在が厳密に確立された。続く重要な成果として、シャルル・エルミートが1873年に自然対数の底 e の超越性を証明し、フェルディナント・フォン・リンデマンが1882年に π の超越性を証明した。これらの結果は古典的な問題に決着を与え、たとえばリンデマンの定理は、定規とコンパスだけでは円積問題を解けないことを意味する。
例と注目すべき事実
- リウヴィル定数は、10進展開の非常に離れた位置に順に 1 を置いて作られた数で、最初に明示された超越数であるとともに、ディオファントス近似の研究を大きく促した。
- オイラー数 e と円周率 π は、よく知られた超越数である。これらの超越性は、幾何学と解析学に深い帰結をもつ。
- ゲルフォント=シュナイダーの定理(20世紀の結果)は、豊富な超越数の供給源を与える。a と b が代数数で、a ≠ 0,1、かつ b が無理な代数数なら、a^b の任意の値は超越数である。この定理は、多くの指数関数やべきが超越的である理由を説明する。
証明の方法と応用
特定の数が超越数であることを証明するのは通常きわめて難しく、解析学と数論の道具を要する。手法には、非常に良い有理近似を構成する方法(リウヴィルの考え方)、対数の線形形式を用いる方法、そして与えられた数を代数数がどれほど近似できるかを定量化する超越度の測度を使う方法などがある。超越性の結果は数論や代数幾何学で重要であり、古典的な作図問題や特殊関数の理論にも具体的な帰結をもつ。
区別と補足
代数数と超越数を対比すると理解しやすい。代数数には有限の代数次数があるが、これは最小多項式の次数に対応する。一方、超越数にはそのような次数は存在しない。代数整数は、代数的整数論で研究される関連する類である。厳密な定義や証明を求める読者は、代数的整数論や超越数論の入門書を参照するとよい。実数と複素数の基礎については 実数 と 複素数 を、有理係数や関連する多項式概念については 整数係数 を参照できる。無理数との関係は 無理数 で述べられている。歴史的背景については ライプニッツとオイラー に触れる解説や、1844年のリウヴィルの証明 のような最初期の厳密な構成を扱う記述がある。