Linus Carl Pauling, 1901年2月28日 - 1994年8月19日)は、アメリカの科学者、平和活動家、作家、教育者である。歴史上、最も重要な化学者の一人である。

ポーリングは、量子化学、分子生物学、オーソモレキュラー医学の分野で活躍した最初の科学者の一人である。ノーベル賞を複数回受賞している数少ない人物の一人である。異なる分野で受賞した2人のうちの1人であり(もう1人はマリー・キュリー)、そのグループの中で他の受賞者と賞を分け合うことなくそれぞれの賞を受賞した唯一の人物である。

業績と科学的貢献

ポーリングは、化学結合の本質を量子力学的に説明する研究で知られている。1939年の著書 The Nature of the Chemical Bond は分子構造と化学結合の理解を飛躍的に進め、化学教育と研究の基盤を築いた。この中で提唱された概念には、共鳴(レゾナンス)の取り扱いや、原子間の結合の性質を数値化するための電気陰性度の定義などが含まれる。これらは今日の化学理論や教科書で標準的に用いられている。

また、ポーリングはタンパク質構造の研究にも大きく貢献した。1950年代初頭に発表された彼と同僚の研究により、α-ヘリックスβ-シートといった二次構造の存在が示され、タンパク質立体構造の理解が進んだ。さらに結晶学や分子構造解析の手法を駆使して多くの物質の構造解明に寄与した。

平和活動とノーベル平和賞

科学者としての活動と並行して、ポーリングは核兵器実験と核拡散に強く反対する平和運動を展開した。彼は放射性降下物が人体に与える影響を警告し、核実験の停止を求める運動を主導した。こうした活動は国際的な注目を集め、1962年にはその功績が評価されてノーベル平和賞が授与された。彼の運動は部分的核実験禁止条約(Partial Test Ban Treaty)などの動きに影響を与えたと評価されている。

オーソモレキュラー医学とビタミンC論争

晩年のポーリングは、栄養素の最適化を重視するオーソモレキュラー医学の提唱者としても知られる。特に高用量ビタミンCの風邪予防やがん治療への有効性を主張し、多くの一般向け書籍や論文でその考えを広めた。一方で、この分野の主張は医学・臨床のコミュニティからは論争を呼び、臨床試験での有効性や安全性については賛否が分かれている。

晩年と遺産

ポーリングは生涯にわたり研究・教育・社会活動を続け、1994年に没するまで世界的な影響力を保った。彼の業績は化学や分子生物学の基礎理論に深く刻まれており、教科書や研究手法、科学と社会の関わり方に大きな足跡を残した。また、彼の平和運動や公衆衛生に関する警鐘は、科学者の社会的責任を問い直す契機ともなった。

評価:ポーリングは科学的功績と市民活動の双方で顕著な足跡を残した人物であり、その業績と論争は現在でも議論と研究の対象になっている。