コッペリア ou La fille aux yeux d'email(英語:コッペリア、またはエナメルの瞳の少女)は、世界で最も知られ、上演回数の多いコメディ系のバレエの一つです。原作は1816年のE.T.A.ホフマンの短編「サンドマン」に着想を得ています。振付はアーサー・サン=レオンが中心となり、台本はシャルル・ヌイターが担当、音楽はレオ・デリベスが担当しました。初演は1870年5月25日、パリのオペラ座で初演されました。

あらすじ

舞台は昔のポーランドの村。主要人物はスワニルダ(Swanhilda)、彼女の恋人フランツ(Franz)、そして人形職人の博士コッペリウス(Coppélius)と、博士の作った人形コッペリア(Coppélia)です。以下は簡潔な筋書きです。

  • 村の若者フランツは、コッペリウスの家のベランダに座る美しい娘コッペリアに恋をする。村人たちはその娘が人形ではないかと疑う。
  • スワニルダはフランツが本当に浮気をしているのか確かめるため、友人たちとともにコッペリウスの家に忍び込む。そこでコッペリアが生きた人間ではなく、人形であることを発見する。
  • 博士コッペリウスは、さまざまな機械や魔術めいた仕掛けを使って人形に命を与えようとし、フランツの「生命力」を利用しようとする。スワニルダは機転を利かせてフランツを救い、最後は二人が仲直りして幸せに暮らす(大団円)というコミカルで心温まる結末になります。

制作と初演の背景

バレエの台本と振付は制作に時間がかかり、入念な準備の末に1870年に初演されました。主演のスワニルダには、長いリハーサル期間を経て16歳のジュゼッピナ・ボッツァッキが抜擢されました。なお初演時には当時の演出上の都合でトラヴィスティ(女性が男性役を演じる)で踊られた例などもあり、フランツ役にユージェニー・フィオクレなどの名が挙がることがあります。コッペリアは初演時に大きな成功を収め、その後ヨーロッパ各地、ロシア、さらには世界中の劇場で上演され続けています。

音楽と振付の特徴

レオ・デリベスの音楽は、軽やかで旋律的、かつ場面ごとに色彩豊かな楽想を持ち、バレエ音楽としての評価が高いです。特にマズルカやワルツ、スワニルダのヴァリエーション(ソロ)、人形を思わせる機械的でチャーミングなダンスなど、聴きどころ・踊りどころが多く含まれています。振付は当初のサン=レオン版に加え、ロシアでの上演を通してマリウス・プティパらが手を加えた改訂版が広まり、現在の多くのプロダクションはその影響を受けています。

見どころ

  • コミカルな演技と細やかなパントマイム:登場人物の勘違いやすれ違いを、ダンスと表情・身振りで見せる点が魅力です。特にスワニルダの機転と演技力が作品の笑いと感動を生み出します。
  • 人形と人間の対比:コッペリア(人形)を如何に「人形らしく」踊らせるか、またそれに対して生き生きとした人物を如何に見せるかが振付・演出の腕の見せどころです。
  • 音楽の多彩さ:軽快なマズルカや華やかなヴァリエーション、群舞の盛り上がりなど、聴いて楽しい場面が続きます。バレエ音楽の名曲として単独で演奏されることも多いです。
  • 舞台美術と衣裳:人形の家や村祭りの場面といった舞台装置、色彩豊かな衣裳が視覚的にも楽しませます。特に人形の細部を再現した衣裳や小道具は舞台演出の重要な要素です。

評価と受容

コッペリアは、ドラマ性よりも喜劇性と技術的な見せ場を重視する「コミックバレエ」の代表作として、多くのバレエ団に取り上げられてきました。デリベスの音楽はその後のバレエ音楽に影響を与え、プティパをはじめとする振付家たちによる改訂・上演を通じて今日まで伝えられています。初心者にも親しみやすく、家族で楽しめる作品としても人気が高いです。

上演によって演出や曲順、場面の細部は変わることがありますが、基本的な物語とコミカルで温かい雰囲気はどのプロダクションでも共通しています。初めて観る人には、スワニルダとフランツのやり取り、コッペリウスの奇妙な実験、そしてデリベスの美しいメロディを楽しむことをおすすめします。