数学では、ハーモニック級数(調和級数)は発散する無限級数である。つまり

n=1 1/n = 1 + 1/2 + 1/3 + 1/4 + 1/5 + ⋯

{\displaystyle \sum _{n=1}^{\infty }{\frac {1}{n}}=1+{\frac {1}{2}}+{\frac {1}{3}}+{\frac {1}{4}}+{\frac {1}{5}}+\cdots }

定義と基本的な意味

ハーモニック級数とは、自然数 n に対して各項が 1/n となる無限級数です。発散とは、項をいくら足しても和がある有限の値に近づかず、無限に大きくなっていくことを意味します。したがってハーモニック級数は「和が有限の値に収束しない」級数です。

発散の直感

各項 1/n は n が大きくなるほど小さくなりますが、減り方が十分速くないため合計が増え続けます。項が 0 に近づいても(lim n→∞ 1/n = 0)、それだけでは収束を保証しません。ハーモニック級数は「項は小さくなるが、合計はゆっくりと増え続ける」典型例です。

簡単でわかりやすい証明(群分け法)

グループごとに項をまとめて下界を与える方法で発散を示します。次のように項を括ります:

  • 1
  • 1/2
  • 1/3 + 1/4 ≥ 2×(1/4) = 1/2
  • 1/5 + 1/6 + 1/7 + 1/8 ≥ 4×(1/8) = 1/2
  • 次の 8 項もそれぞれ ≥ 1/16 を 8 個、合計 ≥ 1/2

このように、項を 1、1、(1/3+1/4)、(1/5〜1/8)、… と 2^k 個ずつのグループに分けると、各グループの和は少なくとも 1/2 になります。つまり無限に多くの 1/2 が足されることになり、総和は無限大になります。これでハーモニック級数は発散することが分かります。

積分判定による証明

関数 f(x)=1/x(x≥1)は正かつ単調減少なので、積分判定(比較による判定)を使えます。調べる積分は

1 (1/x) dx = limT→∞ [ln x]1T = limT→∞ ln T = ∞。

積分が発散するので、級数 ∑ 1/n も発散します。

発散の速さ(対数的な増加)と調和数

部分和 Hn = ∑k=1n 1/k は「調和数」と呼ばれます。大きな n に対して

Hn ≃ ln n + γ (γ はオイラー=マスケローニ定数 約 0.57721…)

つまり調和級数は発散するが、その増加は非常に緩やかで対数的(log n)です。例えば n を 10 倍にしても Hn の増加は定数量(ln 10)程度です。

関連する結果と注意点

  • p-級数:一般化された p-級数 ∑ 1/n^p は、p>1 のとき収束し、p≤1 のとき発散します。ハーモニック級数は p=1 の境界ケースで発散します。
  • 交互調和級数:∑ (-1)^{n+1} (1/n) は収束し、その和は ln 2 になります。符号が交互になると条件収束する例です。
  • ハーモニック級数のゆっくりした発散のため、実際の計算では大きな n が必要になります(例えば H10^6 は約 14 程度)。

名称の由来(音楽との関係)

名前は 音楽における倍音 (harmonics) の概念に由来します。弦や空気柱の振動では、基本波長に対して 1/2、1/3、1/4、… といった比で倍音が現れます。各倍音の周波数や波長の関係が「調和(harmonic)」の語源です。最初の項(基音)を除いて、系列の各項は両側の項の調和平均に関係するため「調和級数」と呼ばれます。波長についての説明は 波長は、 を参照してください。

まとめ

ハーモニック級数は一見すると各項が小さくなっているため収束しそうに見えますが、群分け法や積分判定などにより明確に発散します。発散の速さは対数的に遅く、数学・物理・数値計算法のさまざまな場面で重要な性質を持つ級数です。