モテットとは?教会礼拝の無伴奏合唱曲 — 定義・歴史・代表作と作曲家

モテット|無伴奏合唱の定義・歴史・代表作・作曲家をわかりやすく解説。中世からバッハ・モーツァルト・ブルックナーまで名曲と聖歌隊の魅力を紹介。

著者: Leandro Alegsa

モテットという言葉は、一般に宗教的なテキストを歌う声楽作品を指し、特に教会礼拝や宗教的行事で歌われる合唱曲を意味します。元来はラテン語の聖歌文や聖書詩句を用いることが多く、必ずしも楽器を一切使わないわけではありませんが、無伴奏(ア・カペラ)で歌われることが伝統的に重視されてきました。本文中の表現にならい、合唱隊が歌う教会礼拝のための音楽、という理解が基本です(例:隊が歌う教会礼拝のための音楽)。聖公会の礼拝で英語の宗教テキストを用いた合唱曲は、しばしば賛歌(anthem)と呼ばれます。

定義と特徴

モテットは次のような特徴を持ちます。多声音(ポリフォニー)であること、宗教的・礼拝的なテキストを扱うこと、声の重なりによる豊かなハーモニーとテクスチュアを重視することです。テキストは伝統的にラテン語が中心ですが、時代や地域によってはその国語(例:ドイツ語英語)が用いられます。器楽伴奏が付く場合もあれば、無伴奏で歌われることもあります。

歴史的展開

モテットは中世から現代に至るまで長い歴史を持ち、時代ごとに形態や作風が変化してきました。

  • 中世(13–14世紀):リズムや対位法が複雑になった時期で、声部間の独立性やイソリズム(一定のリズム・パターン)の技法が発展しました。テノールに既存旋律を置き、上声部が複雑な独立線を描く例も多くあります。代表的作曲家の一人に、ギョーム・ド・マショー(Guillaume de Machaut, 1300–1377)が挙げられます。
  • ルネサンス(15–16世紀):ポリフォニーが成熟し、声部間の均衡とテキストの明瞭さを両立させる作曲が行われました。複数の独立旋律が同時進行することで生まれる豊かな和声感が特徴です。ルネサンス期の傑出した作曲家には、ジョヴァンニ・ダ・パレストリーナ(1525-1594)などがいますが、ほかにもヨシュアン・デ・プレ(Josquin des Prez)らフランコ・フレミッシュ学派の作曲家が多くのモテットを残しています。
  • バロック(17世紀):宗教音楽の表現がより感情的・劇的になり、独唱と合唱、器楽の使用が増えました。ドイツ語圏ではハインリヒ・シューツ(1585–1672)が重要で、多声合唱と器楽を組み合わせた作品("Geistliche Chormusik" など)を書いています。ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685-1750)はドイツ語テキストによる数編のモテットを残しており、これらは編成や伴奏の扱いについて議論が残る作品群です(無伴奏と器楽伴奏の両面が考えられてきました)。
  • 古典派(18世紀末–19世紀初):形式や様式感が変化する中で、宗教合唱曲はより様式化された短い作品になることがありました。最も有名なモテットの一つに、モーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コーパス」(Ave verum corpus, K.618)があります。
  • ロマン派(19世紀)以降:宗教的感情や和声の拡張を反映したモテットが作られました。例えば、アントン・ブルックナー(1824–1896)が写実的で荘厳なモテットをいくつか残しており、現在でも礼拝やコンサートでよく歌われます("Locus iste" など)。

代表作と作曲家(例)

以下はモテットの代表例と作曲家です(時代順・抜粋)。現代でも盛んに演奏される作品を中心に挙げます。

  • ギョーム・ド・マショー:14世紀のモテット群(中世の典型例)
  • ジョヴァンニ・ダ・パレストリーナ(:ルネサンス期の宗教合唱の典型、例:Sicut cervusなど)
  • ハインリヒ・シューツ:17世紀の宗教合唱(短いモテットやコラール的作品)
  • ヨハン・セバスティアン・バッハ(:伝統的に6曲前後のモテットが伝えられており、編成に関する研究が続いています(例:BWV 225など)
  • モーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コーパス」:古典派の名曲
  • アントン・ブルックナー:19世紀ロマン派のモテット(例:Locus isteAve Maria
  • 近現代:マルティン・デュリュフレ(Duruflé)のUbi caritas、フランシス・プーランク(Poulenc)のモテット群、モーリス・ラヴェルやシャルル・トマらの小品なども現代の合唱レパートリーに入っています。

演奏と実践

モテットは教会礼拝の中でテキストの意味を伝える役割を持ちますが、コンサートのレパートリーとしても人気があります。演奏上の留意点は次の通りです。

  • テキストの明瞭さ:宗教的な意味を伝えるため、言葉の聴き取りやすさが重要です(ラテン語発音の地域差に注意)。
  • 編成:無伴奏(合唱のみ)で歌うことが多いが、オルガンや通奏低音、器楽による強調が加わる場合もあります。
  • 歴史的考証:ルネサンス作品などは「一声部一人(OVPP)」で演奏する実践もあり、録音や演奏方針によって印象が大きく異なります。
  • 音色と表現:和声の流れや対位法の線が聴き取れるよう、各声部のバランスを整えることが求められます。

現代におけるモテット

20世紀以降もモテットの伝統は続き、宗教的テキストを用いる作曲家が短い合唱曲をモテットとして書いています。教会での礼拝用としてだけでなく、合唱団の演奏会用に作られる新作モテットも多く、古典から現代作曲まで幅広いレパートリーが存在します。

おすすめの入門的な聴きもの(短いリスト)

  • モーツァルト:Ave verum corpus(K.618)
  • バッハ:モテット(BWV 225など)
  • パレストリーナ:代表的なモテット群(例:Sicut cervus
  • ブルックナー:Locus isteAve Maria
  • デュリュフレ/プーランク:20世紀の宗教合唱曲(近現代のモテット例)

モテットは、時代によって形や目的が変化しつつも、テキストと声音の美しさを通して宗教的・音楽的な表現を伝えてきた重要なジャンルです。聴き比べることで、各時代の和声感、対位法、表現の違いがよくわかります。

質問と回答

Q:モテットとは何ですか?


A: モテットとは、教会での礼拝のために、楽器を使わずに聖歌隊によって歌われる楽曲のことです。歌詞は通常ラテン語ですが、英国国教会のように英語で書かれたものはアンセムと呼ばれます。

Q: モテットはいつから作られるようになったのですか?


A:中世の頃からモテットは書かれています。

Q:中世のモテットはどのような構成になっていたのですか?


A:中世のモテットは、非常に複雑なリズムを持つことが多く、テノールが民謡のような曲を担当し、その上に2声で非常に複雑な伴奏を付けていました。

Q: モテットを書いた中世の作曲家の中で最も有名な人物は誰ですか?


A:ギョーム・ド・マショー(1300-1377)は、モテットを書いた最も有名な中世の作曲家の一人です。

Q: ルネサンス期のモテットはどのような構成になっていたのですか?


A: ルネサンスのモテットは通常ポリフォニックで、ソプラノ、アルト、テノール、バスといった異なる声部が同時にメロディーの異なる部分を歌うため、とても美しいが、聴くにはかなり複雑です。

Q: モテットを書いたバロック時代の作曲家の中で最も有名な人物は誰ですか?


A: ハインリッヒ・シュッツ(1585-1672)は、バロック時代の最も有名な作曲家の一人で、彼は「Cantiones Sacrae(聖なる歌)」と呼ぶモテットを書きました。

Q: 古典派でアヴェ・ヴェルム・コルプスを作曲したのは誰ですか?



A: モーツァルトが古典派時代に作曲したものです。


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